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退屈の殺し方  作者: 夜凪
第一章 来訪
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脅威

「じゃあ、行こうか。」


そう言うと、ノクサは入口に向かった。

連はその後についていきながら、あたりを見回す。


店頭に並んでいるものの中には、連が知っている物もあった。


「……なんでシャーペンが目玉商品?」


「きっと何かしらの力を持ってるんだろうね。」


「いつ追いつかれるかわからないしさ。とりあえず入ろうよ。」


 


「ヴェールシアに入るのは初めてで?」


「いいや、勝手は分かってる。」


「そうでごぜぇやすか。次は二十日後ですので、気を付けてくだせぇ。」


「分かった。ありがとう。」


門番と会話を交わしていたノクサは、振り向いて言った。


「さ、入ろう。」


ヴェールシアには、リミナリアと違い入口から入ったはずなのに、

空気が違うように感じた。

連は目の前の景色を見て、呆気に取られる。


「見たことある光景かい?」


見たことがあるどころか――

そこにあったのは、カラーリングのおかしいスカイツリーだった。


「何だ……これ。」


「言ったでしょ? 地形が同じって。」


「そろそろ説明しようか。」


「ヴェールシアはね、地球と同じ地形をしている。それは分かっただろう?」


「ああ。」


「それは、ここにある物も同じなんだ。」


「地球でベッドがある場所には、この世界でも同じ場所にある。」


「まあ、ないものもあるんだけどね。」


「同じものがあるって言っても、色は違うし、ほとんどが使い物にならない。」


「使い物にならないものは、資材やアンティーク。そうやって利用されるんだ。」


「さらに言えばね、ここは三十日周期でリセットされる。」


「どんなに地面をえぐっても、建物を壊しても、三十日経てば元通り。」


「気をつけなきゃいけないのは、リセットの瞬間にヴェールシアに居ないこと。」


「入口付近はかなりの魔力を注がれて安定してるけど、他はそうじゃないからね。」


ノクサは淡々と続ける。


「……聖女と呼ばれていたのも、ここから戻ってこなかった。」


「聖女って?」


「聖女ルシア。攻めも守りも兼ね備えた、王国の最強戦力だった人だよ。」


少し間を置いて、ノクサは続けた。


「あと気をつけるのは、原生生物だね。」


「普通は弱いんだけど、アイテムを喰ってると強くなってたりする。」


「私の知ってる中で一番やばかったのは――

 口から銃弾を放つ、犬型の原生生物かな。」


「いつもは本気を出さなくても負けないから出さないんだけど、

 あれは本気を出さなきゃだった。」


「頭もいいし、頑丈でね。五秒くらいは耐えてたよ。」


ノクサは、スカイツリーを見上げて軽く言った。


「……まあ、そこのスカイツリーとやらに登ってみようか。」


「聖女とノクサだったらどっちが強いんだ?」


「長期戦になるか、奥の手を切れば私が勝つだろうね。」


「ブレスレットは付けておいてね。」


「結局これは何なんだよ。」


「お守りだって言ってるでしょ。」


「無駄話は終わり、ほら、行くよ。」




中は酷い有様だった。

「凄いねこれ。」


「何だこれ……」

それは、壁に深く刻まれた爪痕だった。

熊など比較にならない。

爪痕の高さは、ゆうに連の身長を超えていた。


「中々強そうだね。」


「絶対遭遇したくないな。」


「無理じゃないかな……」

ノクサが小さく呟いたのを連は聞き取れなかった。


「上に行かない?」


「下はもうアイテム残ってないと思うんだよね。」


「いいけどどうやって登るんだ?」


「どれがいいかな……」

少し考え込んで言った。


「天井ぶち抜いて行く?」

完全に本気だった。


「他の選択肢は?」


「階段か外壁。」


「階段ってあるのか?」


「無いの?」


「見たことないんだけど。」


「外壁にする?」


「……そうする。」

ノクサは窓ガラスを割って外に出た。


「そこそこの高さで中に入ろう。」

連はガラスを避けながら頷いた。


「分かった。」



「まだそこなの?」


「なんでそんな早いんだよ……」

ノクサは振り返りもせず、外壁を登り続けていた。


「こんなとこでいいかな。」

中腹まで行ったところで中に入った。


「なんでお前……息切れもしてないんだよ……」


「この程度じゃねぇ。」

連が息を整えている間にノクサは周囲を見回していった。


「こんな何にもないなんて、相当強いのかな?」


「……ひっ……う、うぅ……」


「泣き声?」

周囲を見回していたノクサが言った。


「こんなとこに人なんているのか?」


「居ないことはないと思うけど声からして子供だし、違うと思う。」


「見に行って来る。」


「原生生物には気をつけて。」


泣き声の正体はすぐに見つかった。


「大丈夫?」


「ご……ごめんなさい……わた、私のせいで……」

連が聞き返す前にドゴォン、と音を立ててナニカが落ちてきた。

ナニカは蒸気を噴き上げながら、ゆっくりと振り向く。


それは、象のように巨大な体躯を持ち、

鋭い牙と爪を備えた――虎のような原生生物だった。


「な……」

理解が追いつく前に、爪が振り下ろされる。

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