プロローグ2 月樹・期待とともに
「入学式」
看板には大きくそう書かれていた。
大きな門が僕を威圧するように立っている。
ふう。深呼吸をして気持ちを落ち着けた。
木から漏れた光のカーテンが辺りを明るく照らし出す。
あの日から約8年。
そして僕は今日、中学生になる。
あの日—――そう、あの日からすべては始まった。
吹き荒れる風、荒れ狂う灰色の空。
あの日の竜巻は僕ら家族を離ればなれにした。
当時の三つ子の姉も、妹も、親さえも僕はあの日から一度も見ていない。
施設に入って里親に引き取られここまで生活できたのはいいが、本当はこんな生活、あの日以前のものと比べたら……
でも、里親の山中さんにはよくしてもらってきた。
本当の息子のようにいつも僕のことを呼んでくれて。
でも、本当の家族…せめて、姉と妹だけでもそばにいてくれたら。
隣でお母さんらしき人がカメラを持って走ってきている、ロングヘアの女の子をちらりと見る。
あの竜巻さえなかったら、僕だってあの子みたいに、大好きな家族と一緒にいられたのに。
それより、僕に中学校生活なんて大丈夫かな…
「月樹、どうしたんだ?急に立ち止まって」
「そうよ。あら、もしかして中学校生活が不安なの?月樹はとっても優しいからきっとすぐ友達もできるわよ。大丈夫だから安心しなさい」
山中さんが優しく諭してくれる。
優しい家族。
やっぱりこれでも僕は幸せだ。
ふわりと僕は微笑んだ。
「そうだね。もう大丈夫だよ。ありがとう、山中さん」
あぁ、中学校。
僕はそこでどんな人と出会えるんだろう。
ひらりと桜の花びらが肩に舞い落ちる。
「よし、じゃあ行こう」
「月樹、行くわよ~!ここから先はもう中学校だから!」
「…うん!」
僕は、軽やかに門をくぐった。




