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『死んだ俺だけが、世界崩壊前に戻れる』  作者: Y.M
第1章

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6/18

「巨影」

校庭に現れた“それ”を見た瞬間。


 ユウの本能が叫んだ。


 ――勝てない。


 巨大だった。


 三階建ての校舎と同じくらい。


 黒い肉の塊のような身体に、無数の腕が絡みついている。


 顔らしき部分には、巨大な赤い目が一つ。


 それが、ゆっくりと学校を見下ろしていた。


「な、に……あれ……」


 レナの声が震える。


 ユウも答えられなかった。


 ただ圧倒される。


 存在感だけで息苦しい。


 するとスマホが警告音を鳴らした。


【高脅威個体を確認】


【《ベヒモス幼体》】


【脅威度:B】


【現在の討伐推奨レベル:35以上】


「35……?」


 今の自分たちはLv2。


 差がありすぎる。


 戦うなんて論外だ。


 その時。


 ベヒモス幼体の巨大な目が、“こちら”を向いた。


「っ!!」


 ユウの背筋が凍る。


 見られた。


 怪物が腕を持ち上げる。


 次の瞬間。


 轟音。


 校舎の一角が吹き飛んだ。


「うわぁぁぁぁ!!」


 衝撃波。


 床が崩れる。


 ユウは咄嗟にレナの手を掴み、走った。


「逃げるぞ!!」


 二人は崩れ始めた廊下を全力疾走する。


 後ろで壁が砕ける音。


 悲鳴。


 砂煙。


 地獄だった。


「体育館ってどこ!?」


「一階の奥だ!!」


 だが、そこへ行くまでが遠い。


 階段へ飛び込む。


 ユウは一段飛ばしで駆け下りた。


 身体強化のおかげか、普通じゃない速度で動ける。


 レナも必死についてくる。


 途中。


 泣き崩れている男子生徒が見えた。


「た、助けて……!」


 その足には瓦礫が刺さっている。


 だが。


 奥から犬型の怪物が近づいていた。


「……っ」


 ユウは足を止める。


 助ければ危険。


 見捨てれば助かる可能性が上がる。


 頭では分かっていた。


 だが。


 前回、自分は見捨てられる側だった。


「白峰! 先行け!」


「えっ!?」


 ユウは近くの消火器を掴んだ。


 怪物が飛びかかる。


「うおおお!!」


 横殴り。


 鈍い音。


 犬型が吹き飛ぶ。


 だが一体だけじゃない。


 廊下の奥からさらに二体。


「くそっ……!」


 囲まれる。


 その時。


「右!」


 レナの未来視。


 ユウは反射的にしゃがむ。


 爪が頭上を通過。


「次、左後ろ!」


 回避。


 ユウは男子生徒を引きずりながら後退した。


「立てるか!?」


「む、無理……!」


 その瞬間。


 犬型が飛びかかる。


 間に合わない。


 ユウは歯を食いしばった。


 だが。


 パンッ!!


 銃声。


 犬型の頭が弾け飛ぶ。


「……は?」


 廊下の向こう。


 さっきの黒コートの男が立っていた。


「お前、本当に甘いな」


 男は呆れたように言う。


「そんなことしてたら、すぐ死ぬぞ」


「だったら見捨てろってのかよ!」


「状況による」


 男は冷静だった。


 そして犬型をさらに撃ち抜く。


「だが――」


 最後の一体を撃破し、男は続けた。


「そういう馬鹿は、嫌いじゃない」


 ユウは息を切らしたまま男を見る。


「……あんた」


「話は後だ。ベヒモスが動く」


 その瞬間。


 校舎全体が再び揺れた。


 巨大な咆哮。


 窓の外。


 ベヒモス幼体が、こちらへ向かって腕を振り上げていた。


「走れ」


 男の赤い目が鋭く光る。


「今度こそ、本当に死ぬぞ」

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