「増える試験官」「本体狙い」 「管理者の正体」「死者の王」「選ばれた死」
仮面が五体。
その事実だけで、空気が“別物”になった。
「……増えてるじゃねぇか」
朝倉が歯を食いしばる。
九条は表情を変えないが、銃の構えがわずかに変わった。
「本体は一つだ」
九条が言う。
「だが分体を作れるタイプか、あるいは――」
「共有してる」
ユウが続けた。
九条が一瞬だけユウを見る。
「気づいたか」
ユウは頷く。
前回の断片予知で見えた。
仮面は“個体”じゃない。
思考が繋がっている。
(だから学習してる)
五体の仮面が、同時に歩き出す。
カツ。
カツ。
カツ。
「歓迎します」
「第二試験です」
「生存確率を再計算します」
「あなたたちは――」
「素材として優秀です」
声が重なる。
神崎が震える。
「無理です……これ……勝てる相手じゃ……」
レナがユウを見る。
「どうするの?」
ユウは一度目を閉じた。
(やることは一つ)
「九条さん」
「なんだ」
「本体、分かる?」
九条は即答しない。
代わりに一発だけ銃を撃つ。
パンッ!
その瞬間。
五体のうち一体だけが、わずかに“遅れた”。
「そこだ」
ユウは息を吸う。
「やるぞ」
「朝倉! 右の二体止めろ!」
「了解!!」
朝倉が突っ込む。
身体硬化。
殴り合い。
火花。
ユウは走る。
未来の断片が流れる。
(左、来る)
避ける。
「レナ!」
「来てる!」
レナの未来視が補助になる。
“戦場が繋がっている”感覚。
九条が淡々と敵を削る。
パンッ!
パンッ!
だが仮面たちは崩れない。
再生ではない。
「共有してる……!」
神崎が叫ぶ。
「ダメージが分散してる!」
ユウは舌打ちする。
(やっぱり本体一体じゃない)
なら――
「同時に潰す!」
ユウが叫ぶ。
九条が目を細める。
「できるのか」
「やるしかない!!」
ユウの視界が歪む。
断片予知発動。
未来が流れる。
“五体が同時に動く瞬間”
その中に、違和感がある。
一体だけ、ほんの一瞬“止まる”。
(あれだ)
「九条さん!!三秒後!!中央!!」
「了解」
九条が銃を構える。
朝倉が叫ぶ。
「俺も行く!」
レナが未来を見る。
「今!」
世界が重なる。
三秒。
一秒。
ゼロ。
パンッ!!
銃声。
同時に。
ユウと朝倉が突っ込む。
五体の仮面が――
一瞬だけ“揃った”。
その瞬間。
九条が撃った。
中心の仮面が、初めて“揺れた”。
「……っ」
声が漏れる。
五体が同時に崩れる。
黒い粒子。
静寂。
「……やった?」
神崎が呟く。
だがユウは息を切らしたまま言う。
「まだだ」
黒い粒子が集まる。
一点に。
そして――
粒子が形になる。
一体の“仮面”。
しかし今度は違った。
白い仮面に、ひびが入っている。
「……驚きました」
その声は、初めて“揺れた”。
「ここまで到達するとは」
九条が銃を向ける。
「本体か」
仮面は笑う。
「本体という概念は正しくありません」
「私は“門の管理AI”の一部です」
ユウの頭が止まる。
「AI……?」
仮面は続ける。
「あなたたちの世界は、選別段階に入りました」
「弱い文明は消えます」
「強い文明だけが、上に上がる」
朝倉が怒鳴る。
「ふざけんな!!」
仮面は静か。
「これは“自然法則”です」
ユウは歯を食いしばる。
(違う)
これは試験じゃない。
選別でもない。
その時。
断片予知が走る。
“さらに上位の存在”
“この仮面すら端末”
ユウの背中が冷える。
「お前、本体じゃないな」
仮面が止まる。
「……」
九条が気づく。
「上がいる」
沈黙。
仮面はゆっくり言う。
「あなたは、見なくていいものを見ています」
その瞬間。
空間が割れ始める。
「まずい!!」
九条が叫ぶ。
仮面が消えかける。
「“観測”されました」
「ゲームはここまでです」
ユウは叫ぶ。
「待て!!誰が上だ!!」
仮面は最後に一言。
「“最初の死者”です」
世界が崩れた。
ダンジョンが崩壊する。
現実との境界が壊れる。
九条が叫ぶ。
「戻るぞ!!今すぐ門を抜けろ!!」
だがユウは動けない。
断片予知が“止まらない”。
見える。
見える。
見える。
“上位存在”
それは――人間の形をしている。
そして、ユウと同じ能力を持っている。
「……俺?」
レナが叫ぶ。
「ユウ!!」
だが遅い。
空間が反転する。
世界が裏返る。
そして声。
「見つけた」
暗闇の中。
“もう一人のユウ”が立っていた。
「やっと来たね」
ユウは息を呑む。
目の前の存在は、自分と同じ顔。
だが目が違う。
何度も死んだ者の目。
「お前は……何だ」
もう一人のユウは笑う。
「最初に“死者帰還”を完成させた存在」
「そして、この世界の失敗例」
九条が銃を構える。
だが撃てない。
空間そのものが固定されている。
「この世界はループしている」
もう一人のユウは言う。
「お前が気づいたのは“二周目”」
「でも私は“何百回目”だ」
ユウは理解する。
(全部……繰り返してる)
仮面、門、試験、全部。
そのための装置。
「じゃあ……何が目的だ」
もう一人のユウは静かに言う。
「このループを終わらせること」
「ただし条件がある」
「“次の管理者”を決める」
沈黙。
レナが震える。
「やめて……」
もう一人のユウが手を伸ばす。
「選べ」
ユウの視界が揺れる。
断片予知。
未来。
“世界が救われる未来”
“全てが消える未来”
“自分が管理者になる未来”
九条が言う。
「選べ」
朝倉が言う。
「お前に任せる」
レナが言う。
「ユウ……」
ユウは目を閉じる。
そして――




