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『死んだ俺だけが、世界崩壊前に戻れる』  作者: Y.M
第1章

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「二周目のダンジョン」

黒い門を抜けた瞬間、空気が変わる。


 冷たい。


 重い。


 そして――前回よりも“鮮明”だった。


「……やっぱり違う」


 ユウは小さく呟いた。


 同じダンジョン。


 同じ石壁。


 同じ青白い火。


 なのに、すべてが少しだけ“歪んで見える”。


 まるで、世界がこちらを観察しているような感覚だった。


「おい天城」


 朝倉が低い声で言う。


「さっきの話、本気なんだろうな」


「ああ」


 ユウは即答する。


「仮面のやつが来る。今のままじゃ勝てない」


 レナが不安そうに周囲を見る。


「じゃあ……どうするの?」


 ユウは一度目を閉じた。


 思い出すのは、前回の“死”。


 仮面の一撃。


 九条の銃すら止められた現象。


 空間そのものを折る力。


(正面からは無理)


 答えは出ている。


 その時、神崎が小さく声を上げた。


「……反応、あります」


「どこだ」


 九条が即座に構える。


「さっきと同じ方向……でも、数が増えてます」


 ユウは息を吐いた。


(やっぱりな)


 前回と同じルートではダメだ。


 仮面は“学習する”。


 ならこちらも変えるしかない。


「九条さん」


「なんだ」


「ルート、変えます」


 九条は一瞬だけ沈黙した。


 そして短く言う。


「理由は?」


「前はそのルートで“詰んだ”」


 それだけで十分だった。


 九条は頷く。


「採用」


「え、いいんですか!?」


 神崎が驚く。


「こいつの判断は正確だ」


 九条は淡々と答える。


「少なくとも“死んだ結果”を持っている」


 朝倉が舌打ちする。


「便利すぎだろそれ」


 だが文句を言っている余裕はない。


 通路の奥から音が近づいてくる。


 カタカタカタ……。


 スケルトン。


 だが前回とは違う。


 数が多い。


「五体……いや、七体!」


 神崎が叫ぶ。


「来るぞ!」


 九条が先に撃つ。


 パンッ!


 一体目が崩れる。


 だが次の瞬間。


 ユウの視界に“未来の断片”が流れ込む。


(右三歩、斜め後ろから刺される)


「朝倉! 右!!」


「おう!!」


 朝倉が即座に回避。


 スケルトンの剣が空を切る。


「今だ!」


 ユウは踏み込む。


 前回よりも迷いがない。


 身体が覚えている。


 死の記憶。


 ガァン!!


 一本の骨が砕ける。


「……動きが違う」


 レナが呟いた。


 ユウ自身も感じていた。


 同じ敵なのに、“見える”。


 未来が少しだけ長くなっている。


(これが進化か……)


 戦いながら理解する。


 死に戻りはただのリセットじゃない。


 繰り返すほど、情報が“蓄積”していく。


「右奥、次来る!」


 レナの声。


 ユウは即座に対応。


 斜めに回避しながら一撃。


 スケルトンが崩れる。


「やれる……!」


 朝倉が叫ぶ。


 だがその瞬間。


 神崎が青ざめた。


「ま、待ってください……!」


「どうした!」


「この先……前回と違う反応が……!」


 ユウの背筋が冷える。


「何がいる」


 神崎は震える指で示した。


「これ……“仮面の人間”じゃないです」


「……は?」


 その瞬間。


 通路の奥が“開いた”。


 前回いなかった存在。


 黒いローブ。


 白い仮面。


 そして――複数。


 五体。


 仮面が、並んで立っていた。


 その中央の一体が、ゆっくりと手を叩く。


「やはり」


 あの声だった。


「再挑戦ですか」


 ユウの呼吸が止まる。


(増えてる……?)


 前回は一体だった。


 今回は五体。


 “学習しているのはこっちだけじゃない”。


 仮面の一体が、静かに言う。


「では今回は――」


 空間が軋む。


「難易度を上げましょう」


 ダンジョン全体が、再び“歪み始めた”。

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