「再起動」
白。
何もない空間。
音もない。
痛みもない。
ただ、“意識だけ”が漂っている。
「……っ」
ユウは息を吸った。
肺が動く感覚。
視界が戻る。
――体育館の前。
門の入口。
まだ、入る前の状態。
「……戻ってる」
数秒前どころじゃない。
完全に“開始直前”だ。
ユウの手が震える。
(今のは……死んだ?)
違う。
“消された”。
それに近い感覚だった。
「ユウ?」
横から声。
レナがいる。
朝倉も。
神崎も。
九条も。
全員、生きている。
まだ何も始まっていない。
だが――ユウだけが知っている。
この先で起きることを。
仮面の存在。
即死。
全滅。
「……天城」
九条が静かに言った。
「何を見た」
ユウは唾を飲み込む。
言うかどうか迷った。
だが、もう隠せない。
「一回……全滅した」
空気が止まる。
「は?」
朝倉が眉をひそめる。
「何言ってんだ」
「仮面のやつに一瞬でやられた」
ユウは続けた。
「九条さんも、レナも、神崎も、俺も死んだ」
沈黙。
神崎が青ざめる。
「それって……未来視じゃなくて……」
「違う」
ユウは首を振る。
「“実際に起きた”」
レナの顔が強張る。
「じゃあ今は……?」
ユウはゆっくり拳を握った。
「やり直しだ」
九条が目を細める。
「死者帰還の進化……か」
「それだけじゃない」
ユウは息を吐く。
さっき見た“再起動”。
あれはただの未来予知じゃない。
時間そのものの巻き戻し。
そして今、ユウの中で何かが変わっていた。
【死者帰還・断片予知】
→ 新機能解放
【セーブポイント記録】
「……セーブ?」
思わず声が出る。
スマホに新しい文字。
【門突入前地点を固定しました】
【以降、任意で再ロード可能】
「おいおい……」
朝倉が引きつった笑いを漏らす。
「ゲームかよこれ」
だが九条は違った。
真剣な目。
「かなりまずいな」
「何がですか」
神崎が震える声で聞く。
「こいつの能力が“本物の時間干渉”に近づいている」
九条はユウを見る。
「お前、そのうち“世界そのものをやり直せる”ぞ」
冗談みたいな言葉。
だが誰も笑わない。
レナが静かに言った。
「じゃあ……どうするの?」
ユウは門を見た。
黒い入口。
その奥にいる仮面の存在。
一度は全滅した。
だが今は違う。
やり直せる。
なら。
「今度は――勝つ」
その言葉と同時に。
ユウたちは、再び“門の中へ”足を踏み入れた。




