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『死んだ俺だけが、世界崩壊前に戻れる』  作者: Y.M
第1章

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「断片予知・発動」

――世界が、白く弾けた。


 音が消える。


 感覚が消える。


 ただ一瞬だけ、“自分が壊れた”という確信だけが残る。


 そして。


「……っ!!」


 ユウは息を吸い込んだ。


 床に膝をつく。


 さっきまでの痛みはない。


 だが、全身に冷や汗が張り付いている。


「戻って……る」


 時間は数秒前。


 仮面の存在が一歩踏み出す直前。


 “死者帰還・断片予知”。


 その効果。


 死ぬ直前の未来を、強制的に見せる能力。


「ユウ!」


 レナの声。


 まだ全員生きている。


 だが――


(次は死ぬ)


 確定だった。


 あのままなら、九条も、朝倉も、神崎も全部巻き込まれる。


 仮面の存在は“遊んでいる”。


 そういうレベルじゃない。


 観察している。


 実験している。


「どうした天城!」


 朝倉が腕を振り払う。


 床から伸びる腕を叩き潰しながら叫ぶ。


「顔色やばいぞ!」


「……聞け」


 ユウは低く言った。


 全員が一瞬動きを止める。


「次の瞬間、俺は一回死ぬ」


「は?」


 神崎が固まる。


「何言って……」


「いいから聞け!!」


 ユウは叫んだ。


 自分でも驚くほど強い声だった。


「仮面のやつが来る。一瞬で終わる。全員バラバラに殺される」


 空気が凍る。


 九条だけが、静かに目を細めた。


「……見えたのか」


「未来の断片だ」


 その言葉で、九条は理解したように頷く。


「なら対処できる」


 即答だった。


 ブレない。


 それが逆に怖いくらいだった。


「どうするんだよ!」


 朝倉が叫ぶ。


 その瞬間。


 仮面の存在が、ゆっくりと手を持ち上げた。


「そろそろ時間ですね」


 空気が変わる。


 重力が増したような圧力。


 ユウの視界が再び歪む。


(来る)


 確信。


 だが今度は――


「今だ」


 九条が呟いた。


 パンッ!!


 銃声。


 だが狙いは仮面ではない。


 床。


 爆ぜる。


 その衝撃で“空間の軸”がズレる。


「えっ」


 神崎が目を見開く。


 九条が叫ぶ。


「ユウ! 今見えた“死ぬ位置”から一歩右だ!!」


 ユウは反射で動いた。


 次の瞬間。


 仮面の手が空を切る。


「……ほう」


 初めて、仮面の声が少し変わった。


 興味。


 それだった。


「見えましたか」


 仮面が小さく笑う。


 ユウは息を切らしながら睨み返す。


「……あんた、何なんだよ」


「私は“管理者の試験官”です」


 静かな声。


「あなたたちは“被検体”」


 その言葉に、朝倉が怒鳴る。


「ふざけんな!!」


 突っ込もうとした瞬間。


 仮面の指が軽く動いた。


 ――空間が、折れた。


「っ!?」


 朝倉の身体が吹き飛ぶ。


 壁に叩きつけられる。


「朝倉!!」


 レナが叫ぶ。


 神崎が震える。


「解析……無理です……これ……レベルが違いすぎる……!」


 九条が一歩前に出る。


「ユウ」


 短く言った。


「“核”を見ろ」


「核……?」


「こいつは何かを“媒介”してる。完全体じゃない」


 ユウは歯を食いしばる。


 視界を集中させる。


 未来視の断片が再び走る。


 仮面の背後。


 空間の奥に、“心臓みたいな光”。


(あれか……!)


「そこだ!!」


 ユウが叫ぶ。


 九条が即座に動いた。


 パンッ!!


 銃弾が空間を裂くように飛ぶ。


 だが仮面が手を上げた。


 弾が止まる。


 空中で。


「……残念です」


 仮面がゆっくり言う。


「まだ“合格”ではありません」


 その瞬間。


 ダンジョン全体が鳴いた。


 ゴォォォォ……!!


 世界が“再構築”されるように揺れる。


 ユウの視界が再び白く染まる。


 そして最後に聞こえたのは。


 仮面の声だった。


「次はもう少し“楽しませてくださいね”」

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