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『死んだ俺だけが、世界崩壊前に戻れる』  作者: Y.M
第1章

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13/18

 「チュートリアルの嘘」

ゴン。


 杖が床を叩いた音が、通路全体に響く。


 その瞬間、空気が“変質”した。


「……っ!?」


 ユウは息を呑む。


 さっきまでのダンジョンとは違う。


 壁の模様が微妙に動いている。


 石が“生きている”みたいに。


「空間改変系か……」


 九条が低く呟く。


 仮面の存在は、ゆっくりと首を傾けた。


「正解です。さすが覚醒者」


 その声はどこか楽しそうだった。


「ここは“試験場”ですから」


「試験場……?」


 神崎が震えた声で繰り返す。


「そう。門は単なる入口ではありません」


 仮面は軽く手を広げる。


「選別です」


 空気が冷える。


「生き残る者と、素材になる者を分けるための」


 朝倉が歯を食いしばる。


「ふざけんな……!」


 だが仮面は動じない。


「では、試験を続けましょう」


 その瞬間。


 通路の床に、赤い線が走った。


 ビキビキ……。


 地面が割れる。


 そこから――“無数の腕”が伸びてきた。


「っ!?」


 ユウは後ろへ跳ぶ。


 地面から生えてきたのは、人間の腕だった。


 いや、人間“だったもの”。


 骨と肉が混ざり、まだ動いている。


【《失敗体サンプル》】


「なんだよこれ……!」


 朝倉が叫ぶ。


 腕が一斉に伸びてくる。


 レナが叫ぶ。


「右! 左からも来る!」


 ユウは反射的に動いた。


 未来視の断片が頭をよぎる。


(このままじゃ絡め取られる……!)


「九条さん!」


「分かってる」


 九条が連射する。


 パンッ! パンッ!


 だが腕は撃たれてもすぐ再生する。


「再生速度が異常だ」


 九条の声に焦りが混じる。


 仮面は遠くで見ているだけだった。


「安心してください」


 静かな声。


「これは“基礎訓練”です」


「ふざけるな!」


 朝倉が腕を引きちぎる。


 だが次の瞬間、床からさらに腕が増える。


 増殖している。


 無限に。


「……まずい」


 ユウは気づく。


 これは戦闘じゃない。


 時間稼ぎだ。


 そして――


(別の何かが来る)


 未来視の断片が、再び頭を刺す。


 今度はもっと強烈だった。


 九条が“消える”。


 レナが膝から崩れる。


 神崎が叫ぶ前に潰される。


 朝倉が血を吐く。


 そして。


 仮面の存在がユウの前に立つ。


「っ……!」


 ユウは息を止めた。


 断片の中で見た“死の位置”が、今と重なる。


(来る)


 確信。


 仮面の存在が、ゆっくり一歩踏み出した。


「あなたには期待していますよ」


 その声と同時に。


 空間が歪む。


 九条が叫んだ。


「ユウ!!避けろ!!」


 だが遅い。


 視界が跳ねた。


 仮面の手が、ユウの胸元に触れる。


 冷たい。


 その瞬間――


 世界が“割れた”。


 ――そして、ユウは気づく。


 死んでいた。

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