「死者帰還・第二形態」
ユウの視界が一瞬だけ揺れた。
「……進化?」
スマホの文字を見つめる。
死者帰還が進化可能。
嫌な予感と期待が同時に込み上げる。
「ユウ、どうした?」
朝倉が呼びかける。
だがユウは答えられなかった。
頭の中に“選択肢”のようなものが浮かんでいた。
【進化先を選択してください】
① 死者帰還:回数強化(死に戻り回数+1)
② 死者帰還:記憶固定(死んでもスキル・経験値保持)
③ 死者帰還:断片予知(死亡直前3秒の未来取得)
「……は?」
思わず声が出る。
チートすぎる選択肢だった。
どれも危険だが、強い。
「何だこれ……」
レナが顔をのぞき込む。
「ユウ、何か見えてるの?」
「お前には見えないのか?」
「うん……何も」
ユウは唾を飲み込んだ。
これは自分だけの能力だ。
そして、選択次第で未来が変わる。
九条が静かに言った。
「進化か」
その言葉だけで、彼が状況を理解していることが分かる。
「選べるなら“記憶固定”だな」
九条は即答した。
「死に戻りの弱点は、経験がリセットされることだ」
「……なるほど」
確かにそうだ。
今までのユウは、死ぬたびに経験は蓄積しても“肉体感覚”が薄かった。
でも記憶固定なら違う。
完全な成長になる。
だが――。
「いや」
ユウは首を振った。
全員が驚く。
「俺は③にする」
「断片予知?」
神崎が目を丸くする。
「死ぬ直前3秒って……それだけじゃ短すぎません?」
「短いからいい」
ユウは自分でも驚くほど冷静だった。
「死ぬ瞬間って、一番情報が濃い」
九条がユウをじっと見る。
そして、わずかに口元を動かした。
「面白い選択だ」
ユウは選択を確定した。
【《死者帰還》が進化します】
【→ 死者帰還・断片予知】
その瞬間。
ユウの視界が“割れた”。
「っ……!!」
頭に激痛。
床が歪む。
そして――一瞬だけ。
見えた。
九条が撃たれて倒れる光景。
レナが叫ぶ姿。
朝倉が血を流して膝をつく姿。
神崎が何かを叫びながら崩れる姿。
そして。
ユウ自身が――胸を貫かれて死ぬ瞬間。
「……っ!!」
現実に戻る。
息が荒い。
「今のは……」
未来の断片。
たった数秒。
だが確かに“死”が見えた。
「ユウ?」
レナが不安そうに見つめる。
ユウはゆっくり拳を握った。
(このまま行ったら……全滅する)
確信だった。
このダンジョンはまだ終わっていない。
むしろ“ここから”が本番。
その時。
通路の奥から、空気が変わった。
冷たい。
重い。
そして――“知性”を感じる気配。
九条が銃を構える。
「来るぞ」
暗闇の奥から、ゆっくりと“何か”が歩いてくる。
人型。
だが明らかに人間ではない。
黒いローブ。
白い仮面。
手には“杖”。
そして、ゆっくりと手を叩いた。
パチ、パチ、パチ。
「よくここまで来ましたね」
男とも女ともつかない声。
神崎が震える。
「……NPC……?」
ユウは息を呑んだ。
今までの敵とは違う。
これは――
「知能持ちだ」
九条が低く言う。
仮面の存在は、ゆっくりと笑うような動きをした。
「歓迎します。初めての“挑戦者たち”」
そして杖を軽く地面に突く。
ゴン。
その瞬間。
ダンジョン全体が“鳴いた”。
「さあ」
仮面の存在が告げる。
「ここからが本当のチュートリアルです」




