「門の内側」
暗闇だった。
いや、違う。
“暗闇に見えるほど広い空間”。
門を抜けた瞬間、ユウは息を呑んだ。
「……地下?」
石造りの通路。
湿った空気。
壁には青白い火が灯っている。
どこか中世の遺跡みたいだった。
だが天井は異常に高い。
人間の場所じゃない。
「これが……門の中……」
レナが周囲を見回す。
その声はわずかに震えていた。
ユウも同じだ。
現実感がない。
学校から、突然ダンジョンみたいな場所へ来たのだから当然だった。
すると後ろで、“門”が閉じた。
ゴォォ……。
黒い出口が消える。
「っ!?」
一年の男子が青ざめた。
「か、帰れなくなったんですけど!?」
「攻略すれば開く」
九条は冷静だった。
拳銃を構え、通路の奥を見る。
「それまでは生き残れ」
簡単に言うなよ、とユウは思った。
その時。
スマホが再び光る。
【チュートリアルダンジョン】
【推奨レベル:3〜5】
【最深部へ到達せよ】
「チュートリアル……?」
朝倉が眉をひそめる。
「これで?」
「初心者向けってことだろ」
九条が歩き始めた。
「死ぬ時は死ぬがな」
「縁起でもねぇ……」
朝倉が舌打ちする。
だが、その表情には恐怖より闘志があった。
ユウは少し安心した。
この人、頼りになる。
「お、おれ……神崎ユウトです……」
小柄な一年が小声で言う。
「解析しかできないですけど……頑張ります」
「俺は天城ユウ」
「白峰レナ」
「朝倉レンだ」
簡単な自己紹介。
こんな状況なのに少しだけおかしかった。
すると神崎の目が淡く光る。
「……っ!」
「どうした?」
「この先、反応があります……!」
全員の空気が変わる。
九条が拳銃を構えた。
「数は?」
「三……いや、四です!」
次の瞬間。
通路の奥から、“それ”が現れた。
人型。
だが皮膚が灰色に腐っている。
鎧の残骸を纏い、錆びた剣を引きずっていた。
【《スケルトンソルジャー》】
【脅威度:E】
「アンデッドかよ……!」
朝倉が構える。
だが敵は止まらない。
カタカタと骨を鳴らしながら接近してくる。
「ユウ」
九条が低く言った。
「一体やれ」
「は!?」
「経験が必要だ」
無茶振りだった。
だが。
九条は本気で言っている。
「……くそっ」
ユウは鉄パイプを握り直した。
怖い。
でも前よりは動ける。
レベルが上がったからか。
スケルトンが剣を振るう。
「右!」
レナの未来視。
回避。
剣が石床を砕く。
「今!」
ユウは全力で踏み込んだ。
鉄パイプを横薙ぎに叩き込む。
ガァン!!
スケルトンの頭が吹き飛んだ。
骨が砕け散る。
「……え?」
思ったより脆い。
だが次の瞬間、別の一体が横から迫る。
「危ねぇ!」
朝倉が前へ出た。
スキル《身体硬化》。
腕が灰色に変色する。
剣を“素手で”受け止めた。
「うおおお!!」
そのまま拳でスケルトンを粉砕。
「すげぇ……!」
神崎が目を丸くする。
だが。
九条だけは表情を変えなかった。
「油断するな」
低い声。
その瞬間。
通路の奥から、“重い足音”が響いた。
ズン。
ズン。
ズン。
スケルトンたちが、突然後退する。
まるで“上位存在”を恐れるように。
そして暗闇の中から。
巨大な斧を担いだ、“二メートル級の骸骨”が姿を現した。




