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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
9章.フォローアップ&モラトリアム編

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9-01.フォローアップ研修



 ラッド、ヨッシー、セバスの転生三人組は、ワケあってレベル100を目指し、魔物を狩る探索者パーティを率いている。


 表沙汰にできない秘密を共有する仲間と共に、アクヤ・ダンジョンの第五層に進出。

 さらに、クランハウス(予定)の建設や、後輩4人を新たな道連れにすることにも成功。


 一見、順風満帆。

 だがしかし、婚活リミットを切られたジュスティーヌをはじめ、問題はそこかしこに潜んでいる。



   ☆



 転生三人組から情報開示を受け、アドルフとフィアフは強い衝撃を受けた。


 女神さまへの信仰心篤いご当地民に、『神託みたいなもの』は刺激が強い。


 オルレアとジャルマリス?


 彼女たちは根が現実主義者ですので。

 すぐに先輩女子の皆さんに、ラッドの【通信販売】で得るべきものをレクチャーされていました。


 秘密の共有、共犯関係の実利的側面、恩恵おすそ分け沼に首までどっぷりひたひたは男子組も同じ。


 秋分祭週のはじまるころには信仰リアリティ・ショックから立ち直り、いや開き直った。


「『赤い閃光』……いや光モノはありきたりだな、ここは星で絡めたい」

「じゃあ、『赤い彗星』でどうかな」


「やるなフィアフ。じゃあ『稲妻のフィー』でどうだ」

「名前入りとは、アドルフもやるね」


 二つ名文化圏で、強い、カッコいい、なんか響きがいいモノと要望が重なればこうもなろう。


 職業探索者デビューに向け余念のない二人だが、自称が通るかは別の話。


 『チキン野郎のラッド』とか『デブ・ザ・ヨッシー』とか『すけこましセバス』とか、他人は好き勝手言うものである。



   ☆



 まだクランではないが、クラン予定の面々による秋季の方針会議では活発な議論がなされた。


「急激なレベルアップに、実力不足を感じるのです」

「修練時間を拡大したいわねえ」


 実戦経験は確かに身になる。

 だが、安全な場所での振り返りもまた大事。


 第五層でレベルだけ駆け足であがってしまったとジュスティーヌとヴィオラが言えば、マリエルも応じる。


「今季は後輩君ちゃんたちの慣らしメインでいいんじゃない?」

「俺たちにとってはありがたいですが、先輩方はそれでいいので?」


 自称『赤い彗星』アドルフは、レベル・技量の劣る自分たち4人だけ別パーティにされるのは避けたいと思っていた。

 転生三人組も、後輩たちを早急に引き上げたいと思っている。


「自分たちと、あと一人二人がアドルフたちについて、他のメンバーは修練ってことでどうだ」


 赤髪のアドルフは、片手剣と盾を持つオーソドックススタイルな攻撃的前衛オールラウンダー役割ロールを担当。


 金色狐耳のフィアフは加護ギフトの【隠れ身】をいかした斥候・偵察役。


 白猫耳のオルレアは素早い動きが信条の補助的中衛。


 黒犬耳のジャルマリスはダメージソースになる攻撃的前衛。


 学院時代のパーティでは、魔術士が後衛は当然として、全体を見る指揮官役もまた後衛で、元官吏科さんの担当。


 旧14号パーティは全員が投擲術や弓術を鍛えている最中でもあり、限定的な後衛役をこなせなくもない。


「組合向けは?」

「オークションへの出品、圧をかけられているのであります」

「保留品はあるけど、言い訳のためにも第五層行きも必須か」


 1季12週間のうち、旧来のメインメンバーでの第五層行きを3回。

 これは対アンデッドマイスター、特にゾンビを近寄らせないことに定評のあるユイの都合にあわせる。


 残り9週のうち、6週を後輩たちのフォローアップで第四層メインで考える。


 そのいずれにも転生三人組は参加予定。実に9週の稼働となる。


「つうても自分たちはフォローで主力はアドルフたちだしな」

「地上組だって修練三昧」

「週に2日は休養日ありますし」


 レベルだけなら、第五層行けるようになれば追いつくだろう。

 アドルフとフィアフが主力に昇格すれば、女子組の寿引退への道筋も見えてくる。


 クラン運用に関しても、雇用賃の引き上げなど細々した話をして会議は終了した。



   ☆



 第一週、転生三人組を加えたネオ・アドルフパーティで第四層を目指す。

 この回の付き添いは、魔術士のヴィオラお姉ちゃん。


 アドルフたちは第四層のチラ見経験しかないし、道中で暫定メンバーとの連携を試すため通常ルートで進行。

 大断崖ショートカットは、まだ開示していない。


 ヨッシーはサプライズだと悪い笑みを浮かべ、ロイヤルサルーン(命名:ヨッシー)の点検に余念がなかった。

 ユーザーのご意見を踏まえた新型は鋭意構想中とのこと。


 さて、無属性の小魔術キャントリップ階梯と生活魔法に【空間把握】という呪文がある。

 効果は、術者を中心とした半径2m球内の物体の配置を感知・把握する。

 地中のモグラ(モール)だって見つけられる。


 では、どういう機序で効果を得ているのか。


 参考書物にあった『空間に魔力を広げ』云々から、セバスはまず「領域展開!」的なモノを試したが、範囲リミットをかけないと際限なく吸いだされる魔力に根源的恐怖を感じ、この方向性を棄却。

 球の体積の公式からもわかるように、半径の三乗で『埋める』魔力が必要になるからね。


 次善の案として魔力的なエコー探査、ソナーみたいなものと理解することで成立させ、【改】に拡張している。


「んー、やっぱりつけられてる。4人組、距離が一定過ぎます」


 常用できれば、いかにもゲーム風なレーダー画面めいた索敵能力だ!との期待はあったが、ムリだった。


 セバス曰く「脳みそが焼ける」。

 【改】で広げた探査範囲を、リアルタイムで処理しきれない。


 なので、例えば大断崖ショートカット前に、付近に人がいないことの確認で『ピン(ping)を打つ』などの運用。


 連携確認中のセバスは、基本的に手を出さない後衛なのでMPが余る。

 習熟度稼ぎにちょいちょい『ピン(ping)』してみて、違和感を感じたという経緯になる。


 魔法・魔術では各呪文ごとに、使えるようになるため、そして使いこなすために修練を重ねる。

 学院の魔術科連中が修羅道を自認するのはそういうこと。


 実は、武術における各武技もそう。なんなら基本動作からそう。

 あっちもこっちも修羅道なのだ。


「処すか?」

「仕掛けられてもいないだろ」


 あえて短絡的なことを口走るヨッシーに、軽いツッコミをいれながらラッドが口を濁す。


 きちんと隠蔽している、監視か調査か。

 であれば、『気がついた』ことも立派な情報になってしまうわけで。


「狙いがわかれば、こっちに都合のいい情報を掴んでもらうんですが」


「そのへんどうよ?」

「あたしのとこはわりと表よりの家だったし、今のあたしでも気づけない尾行って相当よねとしか」


 ヴィオラ先生も困り顔。

 ダンジョン内で周囲への警戒を怠りはしない。でも気づかなかった。


「ねえねえ、そういう影とか暗部とかいう組織って、どんなとこあるの?」

「腕のいい尾行者を抱えているようなところだね」


 オルレアの質問をフィアフが補足。


「この街だと……それこそ探索者組合? ティナ絡みで王都からの線は……今になって?」


 第二層を越え、第三層。

 拠点キャンプで休憩中に、周辺警戒がてらに例の4人組もチェックする。


「遠目には、普通の探索者にしか見えないわね」

「【魔力感知センス・マジック改】で反応あるのは、この階層では珍しいけどね」


 尾行者という想定自体が、傍証によるセバスの主張でしかない。

 その推定を疑う必要もないとはいえ、現状では警戒どまりとするしかない。


 当初の予定通り、休憩後は第三層での連携確認を念入りに。


 斥候役をラッドと交互にやるフィアフは楽になったと喜んでいる。


「斥候は運動量がきついもんな」

「無線機はまだ解禁できませんしね」


 第三層は、移動経路は限られていてもフィールド的にはオープン。

 どこから見られているかわからない。


「で、やっぱり?」

「気持ち上位置を取られてます」

「プロねえ」



   ☆



 2日以降は、第三層拠点宿泊の第四層チラチラ狩り。


 尾行者たちは第四層には入らず、3日目の夜には消えた。


「いるけど見つけられない、ではないと思いたい」

「なんとも言えないわ」


 狩り自体は、耐久壁としてヨッシーが構えることで、従前より安定感の増したアドルフたちも落ち着いて対処ができている。


 無線機が解禁されたフィアフは大興奮。

 いつでも本隊と連絡が取れる、つながっていると、孤独感が薄れるのが特に嬉しかったようだ。


 後衛組のセバス、ヴィオラは、いわゆるハラスメント攻撃を主軸の組み立て。

 アドルフたちが主軸で、先輩ズは支援サポートだから。


 ゴブリンズの皆さんには、闇魔術【暗闇ダークネス】だったり【混乱】だったり【精神衝撃マインドショック】だったりの練習台になっていただいた。


「使えば『使える』呪文ではあるのね」


 でも、直接目に見える効果があるわけじゃないのが搦め手。


 俺たちでもイケルじゃんと増長の気配を感じたので、あえて手だしせず、敵と自分たちの本来の実力を味わってもらう。


 特に、前衛の手の届かないところから攻撃してくるゴブアチャ呪術師ゴブシャの怖さをねっとりと。


「体験しないとわからないですからね」

「反省会は帰ってからな」

「「「「はい……」」」」


 5日目の帰りはショートカットお披露目。


 初の飛行体験に、顔面蒼白なアドルフ、耳をぺったりふせてしゃがみこんだオルレアとジャルマリス。フィアフだけはきょろきょろしていた。





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