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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
8章.はたらく職業探索者編

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8-12.ひきずりこむ探索者



 夏季の第十週、後輩第一陣のアドルフたちが無事卒院。


 マルク工房コミュニティと養護院への凱旋・お礼参りに誘われたが、お土産だけ持たせた。


 だって、三人組は爵位持ちにして手羽先の人。

 主役より目立ってしまうのはいかんでしょ。


 退寮と引っ越しでは、マルク工房からアドルフの父親やラッドの兄貴などが荷車をもって繰り出した。


 寮室から三人組が残した家具類も撤収、かつてオルガたちがくつろいでいた円形の応接セットはクランハウス2階の大部屋に。

 ウッドデッキはダイニングの外に移設。晴れた日は優雅なティータイムなど、いかがでしょう?


 クランとして、改めて卒院おめでとうと歓迎会では、ダイニングテーブルの上に洋菓子・和菓子、パーティっぽいサラダに揚げ物、パスタ類などなどを並べた。


「たーんとお食べ。ダメそうなものは避けていいからな」

「「「わぁ……わぁ……」」」


 ジュスティーヌまで目をキラキラさせて言語能力を失っているが、コラテラルダメージだろう。

 ヴィオラはすっかり諦めている。



   ☆



 アドルフたちは無理にレベル12を目指す必要がなく、学科単位や武術系も相応で修了。

 十分に優秀だが、一歩引いて目立たないという彼らの方針には沿っている。


 拠点での荷物番は、官吏科さんのツテで同じ官吏科生を都度助っ人召喚で対処したそうだ。


「改めて、先輩たちがどれだけスゴイのか実感させられました」


 転生三人組基準で普通にやっていれば3年で卒院できるのは、オルガたちを見ればわかる通り。

 探索科の過半数が4年卒以上になるのは、基本的な教養の差なんだろうなと三人は判断している。


 先を見越し、計画を立て、実行する。


 特に前2つはわりかし高等技能だ。

 もちろん、前2つを三人組に丸投げしたオルガたちにしても、ほとんど単位を落とさなかったのは褒めるべきである。


 今年度の代表は騎士科4年卒の優秀さんパーティ。

 一代従士爵おひとり様となっております。


 年次的には転生三人組と同期だから、名前を聞けば、むっつりスケベな彼ね、程度には知っている。


「むっつりスケベって」


 情報源はオルガ。

 娼館でバッタリ、互いに気まずい待合室だったという。


 わりとどうでもいい情報だが、バカにできない情報でもある。


 まあ、騎士科卒の優秀なむっつりさんは地元にお帰りになられるはずなので、転生三人組としては解散するパーティメンバーの去就の方が気になる。

 ただ年次も違うアドルフたちは、そこまでは知らないとのことだった。


 アドルフたちのパーティにいた官吏科さんは無事に役場に就職。

 魔術科さんは、衛視隊はきつそうだと、探索者になるそうだ。


 話をした衛視隊のリラいわく。

 なんだかふわふわしていて芯がない感じ。


 同じく衛視隊で事務方のゴートはもっと辛口。

 下手に学院パーティ環境がよかったせいで、何も考えていないようですなと。


 アドルフ経由で去就を相談されたのだが、当人が何を目指すのかはっきりしない。


「英雄級を目指すような気概は?」

「「ないない」」


 オルレア、ジャルマリスそろっての否定に、じゃあウチでは無理だねと言うしかない先輩たちであった。



   ☆



 しかしまた、探索者業界では貴重な魔術士様ではある。

 マックスに、衛視隊組の評価込みで紹介した。


 なんだか人材として微妙な気もするが、判断するのは当人たちだと、そこは割り切り。


「あっちも、メンバー集めは苦悩してる感じだしなあ」

「ベン兄さんも言ってたけど、一般通過探索者とは話が合わないぽい」


 拠って立つ基礎が違うからねえ。

 地頭という意味ではなく、教育による差、考えかたの違い。


 会話がズレるのはストレス源になる。

 例えば趣味の話題のようなものに限定すればそうでもないが、長い時間を共に過ごす相手としてわざわざ選びたいかというと、まあ、お互いにイヤだ。


 ついでにマックスたちには、第五層で入手する魔法の武具の融通についても話をしておいた。


「どんなモノが手に入るかは運次第です」

「で、マックスもオルガたちも、どんなものなら欲しい?」

「!」


 魔法の武具の入手ルートの一つ、オークションに買い手として参加できるのは、探索者であれば銀級以上。

 口座残高チェックで、基準以下だとダメだけど。


 マックスたちは青銅級なので参加できない。


「魔法の武器の一本でもあれば、第五層で自力で……とは、思っていた」


 あえて弱音を吐き出して見せるのもマックスの魅力。イケメンの弱り目って、イイヨネ。


「その時はハズレ引いても泣かない心も持っていけ」

「ハズレってのなら安くしてくれるのか?」


 グラム君食いつくが、ヨッシーばっさり。


「柄が高速振動するいばらの鞭とか、いるかぁ?」

「それは……ちょっと……」


 だがオークションでの落札価格は金貨12枚余り。


 誰が何に価値を見いだすのかは、本当に、千差万別なのである。



   ☆



 アドルフたちの口座移動などの手続きに付き合いついでに、学院の売店でランタン油などを補充。


 後輩たちは鉄札級なので、探索者組合本部での手続きは1階の受付。

 待機列から離れ壁の掲示板を眺めていたら、担当職員の汗拭きおじさんが小走りでやってきた。


 ご一緒にと順番待ちしていたアドルフたちも2階の受付ブースに案内され、そっちで手続きを進める。


「今季、魔法の武具など17点ものご出品、ありがとうございます。おかげさまでオークションも盛況でございました」

「自分たちでは使えないモノだったからな」


「もちろん、探索者にとって武具は財産、いえ、己の体の延長といっても過言ではないもの。ご自身たちでお使いのモノを確保なさるのは当然でございますとも」


 それはそう。

 我がを優先するのは当然の権利だ。


「うちは優秀な光魔術士に恵まれたのが大きい」

「それもまたご縁のたまものでございますなあ」


 そろそろよいしょがきつくなってきた。


「それで、今日はなんの話なんだ?」

「あ、はい。銀級への昇格のご案内でございます」


 青銅級の次が銀級。

 最大のメリットは、先述したオークションへの参加権となる。


「俺たち、まだ第六層に踏み込んだことすらないぜ」

「内規では、第五層以降での活動実績となっているのでございます」


 転生三人組にとっての銀級のメリットは、クラン設立申請が通りやすくなることか。


 現在は焦らず、ジュスティーヌまわりの動向を見ているところ。


 設立発起人がすぐに居なくなりましたはちょっとかわいそうだし、アドルフたちを加えても人数的には2パーティ分でしかないし。


 銀級昇格については、旧14号パーティのメンバー全員で改めてということにした。



   ☆



「そういえば、自分たちの買った土地、あれの木戸通り沿いってまだ売りに出てるのか?」

「え、あ、はい。少々お待ちください」


 物件を探してもらったのが昨年の秋季。

 すでに一年近くが経とうとしている。


 汗拭きおじさんいわく、探索者組合管轄では隣接並びで4カ所まで、向かい側の商業組合管轄は確認に人を走らせたとのことだった。


「じゃあ、南の並び、自分たち三人で1つずつ買っていいか?」

「はいぃ、もちろんでございます!」


 一応、現状確認ということで現場まで出向き、内見などすませる。

 クランハウスに戻るアドルフたちとはここでわかれた。


 再び組合で書類作成と代金引落手続き中に、商業組合の人もおっとり刀で駆けつけてきて、またしても現場確認。

 こっちから振った急な話だったし、それくらいはしょうがない。


「いやぁ、お手数おかけします」

「ていうか、売れてなかったんだ」


 そう簡単に売れないのよ。

 買える人が限られ、そういう人だって利便性の高いところを狙うもの。


 ともあれ木戸通り沿いの隣接地を追加購入した。


 廃屋化しつつある長屋の撤去は、マルク親方たちに頼めば廃材と一緒に引き受けてくれるだろう。


 そも、アクヤの街のような都市の抱える問題の中でも、水と燃料はとびきりの難問だ。

 農村だといわゆる里山の萌芽更新で薪炭を確保するが、都市部ではほぼ全量を外からの輸入に頼る。


 親方衆、ウッキウキの二つ返事で愛用の仕事道具(獲物)を手に廃屋解体にやってきた。

 ストレス発散と焚きつけの確保、お金は取らないけれど美味しい仕事らしいです。



   ☆



 使用人たちが帰った後のクランハウスで、現在開示可能な情報をぶつけられたアドルフとフィアフはうめいた。


「『神託みたいなもの』……」

「だから英雄級、だからレベル100……」


 ぶち上げたお題目であって、英雄級はともかく、本気でレベル100とは思っていなかったよね。

 でもね、そこの転生三人組は本気なんだ。最初はなっから。


「そうそう、こうなるのよ!」

「だよねー」

「でありますなあ」


 マリエルたちは微笑ましいものでも見るかのよう。


 オルレアとジャルマリスはふむーんどまり。


「わかった」

「秘密!」


 性格の差かな。

 最後まで付き合うんだよな圧力を感じる男子組と、適当なタイミングでお嫁さん!な女子組の差かもしれない。


「ま、自分たちに付き合うだけの見返りはあると思うぞ」

「俺たちと一緒に、英雄級になろうな」

「僕たちと地獄に行こうという話じゃないですし」


 これまでさんざん手羽先やお菓子を味わってきた後輩たちが、【通信販売】の恩恵沼から抜け出せるはずもなく。


 すでに首まで沼にひきずりこまれていたことに気づくまで、そう時間はかからなかったのである。





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