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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
8章.はたらく職業探索者編

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8-04.家探しをする探索者



 第五週はダンジョンへ。


『こちらR1、R1』

「はいこちらHQ、R1どうぞ」


『NVまでクリア、GO』

「HQ、NVへGO了解」


 ランクアップしたラッドの【通信販売】では、近場のホームセンターの品も手に入る。


 今回導入したのはハンディ無線機に骨伝導マイクとイヤホン。

 今世にお出しする品は厳選が転生三人組の鉄則なのだけれど、コレだけはとラッドが強く主張した。


「通話の魔道具ということで、ひとつ」

「え、これ魔道具じゃないの!?」


 ええ、魔力とは無関係のテクノロジーの産物です。

 あわせてバッテリー用のソーラー充電器もこっそり運用中。


 洞窟内の電波事情は良好とは言えないが、通路部を経てお隣の小部屋空洞までは、ほぼ問題ない。


 リアルタイムの情報伝達で、魔物集団への備え・心構えが最適化され、偵察班もいちいち報告に戻らなくてよくなり、移動時間の短縮や疲労軽減にも役立っている。


「ハズレスキルの【以心伝心】てのが、こんな感じなのかな」

「すごい便利じゃないですか。なのにハズレなんですか?」


 加護ギフトにハズレはないと何度(略)。


 【以心伝心】はいわゆるテレパシーなのだけど、送受信者が限定されているから使い勝手が悪いといわれればそうね。


 実は後輩第二陣のジョゼフとカールが授かった加護ギフトがこの【以心伝心】なのだけど、二人とも黙して語らないため知る者がいない。

 切り札は伏せるものが腹黒双子のポリシーだ。


 この狩りでユイとクリスがレベル14に上がり、各自の口座に金貨1枚余り加算。



   ☆



 第六週の頭は家探しの進捗確認日なので、組合本部に顔を出した。


 一代従士な転生三人組のそれぞれに土地持ちになり、かつ、隣接地でまとまっているところを要望。

 将来のクラン運用を見越した難しい注文との自覚はあったのだが、候補物件があるという。


 アクヤの街を南北に分けた南地区の西よりが、学院やダンジョン・探索者関連の街区になっている。


 学院と探索者組合に面した広場が一帯エリアの中心となり、そこから街門へと伸びる大通りがメインの繁華街だ。


 案内されたのは、繁華街から離れ、北地区の間近、東西南北の街路に囲まれた典型的な区割りの住宅街。

 南側の街路から並び三軒の庭付き一軒家を示される。


「従士様には不足かもしれませんが、こちらの物件には裏がありまして、はい」


 裏と言っても文字通りの裏側。


 裏手通りになる北側街路ではなく、街区の中心を東西に走る木戸通りから回った裏側には、なんとも貧相な長屋が並んでいた。


「こちら側もまとめますと、面積的には妥当な範囲になられるかと」

「なるほどなあ」


 紹介された土地は、1区画が表裏合わせて間口8mの奥行48m。

 奥行に比して間口が狭いのは、街路に面した間口当たりで税を取っていたころの名残だとか。


 実のところ、従士爵持ちがどのくらいの広さの土地や家に住めば妥当なのか、転生三人組にはわからない。

 クリスとウィスタリアにしても、ほどほどのグレードの集合住宅ないし庭のある一軒家で十分ぽいとしか。


 気持ち裕福な庶民層と同程度?


 所詮は準貴族、しかも一代限りの爵位。

 貴族界隈における序列最下層の従士なんてそんなもの。


 だがしかし、組合職員さん、手札の中から最高を投げておけば言い訳も諦めもつくと、組合幹部級向けの住宅地をご案内しています。


「コチラの街区、南側はわたくしども探索者組合で職員宿舎等に、北側は商業組合でと分け合っていたところでございまして」


 それぞれに、南北の街路側には一軒家、裏の木戸通りには低グレード長屋の二段階構成。

 探索者組合だと長屋には伝令小僧メッセンジャーボーイなどの下っ端を住まわせる。


「ただ商業組合さんの場合、丁稚などは住み込みですし、ご家庭を持つ方はそれなりの地位というわけで、コチラの長屋は少々持て余しておられるようです」


 商業組合としても、エリアの数的主流な探索者向けに試行錯誤はしている。


 宿屋営業は、定められた街区のみ、かつ、免状が必要になるため、こちらの街区にあるのはあくまで貸家。

 内部を細かく区切った、いわゆるうな床長屋であっても、面積的には宿より優位であるとし、長期滞在するなら、いっそ根付くなら、とっかかりの住まいとしてお手頃という売り込み。


 しかし探索者向けの下宿よりも高い賃料、繁華街からの微妙な距離感、木戸が閉じられると入れない出られないという不便性。


 流行るはずもなく、不人気物件となっている。


「もし従士様がお望みであれば、木戸通りをはさんだあちら側のお買い上げ交渉も可能であることが、こちらの物件のウリでございます」

「なるほどなあ」



   ☆



 おカネの話は組合の一室にて。


「実際、おいくらなんですか?」

「はい。表裏まとめられますと、おひとり様の区画に金貨を9枚。表だけであれば6枚となっております」

「むうう」


 確か口座には金貨7枚相当はあったはずとソロバンをはじきだした転生三人組だが、すわ値引き交渉かと職員のおじさんは身構える。


「けして、けっして組合が利をむさぼっているというわけではなく、入手価額であることをどうかご了承願いたく存じます」

「ああ、うん」


 部外秘の帳簿まで持ち出してきて説明する『旧14号パーティ』の担当になってしまったおじさん。

 しきりに額の汗をふきふきしているのがどうにも気になってハンドタオルを差し出した。


「これどうぞ」

「おや、やわらかい肌触りにスッと汗を吸う、よいハンカチですな」

「まあ、カネだけじゃ手に入るかどうかって品だそうだしな」


 嘘は言ってないよ。周囲の評判を言っただけだし。

 職員のおじさん、なぜかますます酷い汗をかきはじめました。


「ええ、ええ。それとない心付け、しかも使用済みとなれば返すこともできない。ハメこみ、お見事ですあります」

「いや、そういうつもりは……」


 お仕事モードのウィスタリアがおすまし顔で茶々を入れるが、身内の冗談のノリに巻き込まれた職員さんはなぜか泣き出しそうだ。


 そういうふうに、見える!

 当人が何を言おうが、見えている事実がすべてなのだ!


 爵位持ちの手練手管、怖いですねぇ。

 まあ、どちらかと言えば商人系の手口ですけど。


「それはともかく。木戸を挟んだ向かい側は、おいくらくらいの目星ですか?」

「あ、はい。ええと、あちらも長屋部分は簿価で金貨3枚程度のはずですので、更地にせずに現状渡しの場合にはそのあたりでお考えいただければと」

「ひっくるめると、一人分で金貨12枚か」


 商業組合管轄地は話がまとまってからとなるが、基本的な支払い方法は、手付で押さえて一定期間内に残額一括。


 青銅級なので探索者組合からの融資も受けられる。

 この場合は融資額に対する分割返済が可能。


 気になる利率はなんと季5%、年にしても20%の低金利。ご当地基準では破格と言ってもいいだろう。



   ☆



 顔色の良くない担当職員さんに一時席を外してもらって、相談タイムをとる。


「『隣の土地は買え』原則もあります。街中でまとまった土地はなかなかないでしょうし、ここは買うで」

「「異議なし」」


 どうせ従士爵のメンツのために、どこかに土地建物を買うしかないのだ。

 立地に思い入れはないが、その分割り切って足場だと思えばいい。前世における一生モノの買い物とは感覚が違う。


 問題はカネ。


「貸そうか? 残高は僕と似たようなものだよね」

「皆様とクリスとわたくしとでは微妙に足りないかと。ユイ様、マリエル様にもご協力を仰ぐべきでありましょうか」


 クリスとウィスタリアはお仕事モードで同行しているが、ユイとマリエルは不在。

 組合にではなく身内の借金で事を済ますつもりであれば、拝み倒すなりなんなりしなくてはいけない。


「笑顔で貸してくれそうな気もする。特にマリエルの親が」

「セバス、イケニエ。オレ、ワカル」

「とりあえず待って」


 名義上は転生三人組が個別に土地を持つことになるが、クラン含みだと一体運用が視野に入る。

 そのときに、いわば賃料としてクランからの割り戻しを得る形になる。


 クランに支出するのも自分たちであることは、この際忘れよう。


 これが最初からクラン名義でいいのであれば、全員でカネを出し合って購入すれば済むのだが。

 残念ながら、法人格という考え方がないので、あくまで個人間の貸し借りでやりくりするしかない。


「……最後の手段でお願い」

「自分たちが、今季中に支払額に届かないときは頼むわ」


 狩り1回で金貨1枚と、なんとかの皮算用は立てられるのだ。


 この日は探索者組合管轄分への手付として金貨6枚の支払いと受取証の発行。

 引き落とし対象の口座が本部ではなく学院の支部相手になるので、手続きに若干時間がかかった。


「口座もなあ、本部に移さないといけないんだろうが」

「そのあたりはジュスティーヌ様たちが戻られてからになりましょうか」


 現在のアクヤの街の土地保有税は、年額で簿価の1000分の5。

 簿価が金貨12枚なら正銀貨1枚でおつりが出る。


 こちらも支払いと引き渡しの後で、組合口座から引き落とし手続き申請の書類を作り、最寄りの役場に届け出ることになる。


「ジュスティーヌ様のお宅も、近くで探してもらえればよろしいかと思うのであります」

「は、はいー」


 果たして騎士様のご自宅が、従士様と同じでいいのか。


 すでに手持ち最高の札を切ってしまったおじさんの、額の汗は止まらない。





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