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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
6章.学院編Ⅳ・2年次

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6-12.第四層への準備



 2年次の春季・夏季は、第四層への準備も進めていた。


 というのも、参考にはなる『ダンジョン最速理論』において、レベル9から第四層を推し、『これで(3年で)Lv12には届く』と締めくくっているからだ。


 学院パーティの中でも、レベル12を目指す騎士科連中が目標とするのが第四層。


 ベンジャミン兄さんの例のように、第三層でも時間をかければレベル12には届く。

 しかし、建前とはいえパーティ主催のジュスティーヌが3年卒のエリートを諦めていない以上、旧14号パーティが第四層を目指さないわけにはいかない。



   ☆



 アクヤ・ダンジョン第四層の通称は『ゴブリンの巣穴』。


 第一層と同じ洞窟タイプであり、推定だが15km四方くらいに洞窟網が広がっている。

 第一層からつながる大断崖も、墜落死体の発見より明らかになってはいる。


 なお、巣穴というが生活臭はない。

 第四層の主力が、ダンジョンの魔物としてのゴブリン戦士たちであることが名称の由来。


 魔物らしく対話は成立せず、地上種のゴブリンを捕獲して連れて行ったケースでも問答無用で殺しに来たとされる。


 ただし、地上種でも属する族が違えば殺し合い上等なのがゴブリン。傍証にとどまる。

 専門の学者でもなければ、地上種とダンジョンの魔物とは似て非なるモノとさえ知っていれば十分だ。



   ☆



 2年次の春季、寮の自室にて三人の検討会が始まった。


 まずは問題点からと、セバスが2点を挙げる。


「移動時間と、十分に休憩できる拠点がない。これが第四層チャレンジ最大の問題になると思います」


 地上から第一層最奥拠点を経て第三層拠点まで、道なり25km。

 今や第一層は駆け抜けられるが、第二層では会敵率も高く、第三層側拠点までで1日がかりの移動とみておくのが無難となる。


 第三層内の拠点間が道なり6km。ここも最低4時間はかかる。


 そのうえで第四層に入ることになる。


 例えば、日程の2日目を朝4時第三層拠点出発、第三層内の移動&休憩で5時間、第四層で5時間狩りし、休憩のち移動で19時頃に第三層拠点に戻るとする。

 時間配分、狩りのほとんどが第三層でのものとわかる。


「移動時間はどうしようもないし、遺跡拠点じゃテントはって寝るのは無理だ」


 第四層側も狭い。一応の拠点化しているとはいえ安全とも言い難い。


「交戦を避けて突っ走るなら1時間くらいで戻れないか?」

「俺たちだとトレイン事故起こしそう」


 魔物の数が集まりすぎて処理できない、他のパーティに擦り付けてしまう。どっちもアウト。


 前者はその場で、後者は時間差で人生BANが待っている。


 あったかい飯食ってテントはって熟睡など、恵まれた野営であることは理解できる。

 土塁にもたれかかって仮眠している先輩探索者の姿も目撃している。


 だが転生三人組は、無理が続かないことも知っているのだ。


「俺たちが無理できるのは2~3日が限界か?」

「遺跡拠点で仮眠、第四層出撃サイクルを2~3日が、4泊5日日程での限界でもあるな」

「当初から限界を攻める必要もないでしょうけどね」


 彼らは、効率の為なら人間性は捨てるかもしれない。

 だが、人間の限界は超えられない。



   ☆



 週末の無の曜日。

 転生三人組にとっては後輩対応や買い出し、装備の手入れなど、休日らしいさまざまな予定が消化される日である。


 この日はファンガス農園詣での帰りに、第四層とつながる大断崖の見学に訪れていた。


「ここをショートカットに使えれば、移動時間の問題はほぼ解決なんだが、どうよ」

「どうよと言われても、俺の死因知ってるだろ」


 かつて第四層でニュービーの墜落死体が発見され、高位の風魔術士が飛んで第一層とつながっていることを確認したという。


 であれば、歴代の探索者たちがチャレンジしないわけもなく、現在も有効な手段がないことが失敗を物語る。


「数百メートルを命綱頼りの崖下りなんて、やってられんわなあ」

「無理。絶対無理。断固拒否」


 ヨッシーの顔が恐怖で歪む。


 時間とおカネをかけて準備すれば、行き(下り)はなんとかなるかもしれない。


 だが帰り(登り)は?

 ロープなり鎖なりを切られたら終わり。他の探索者、そこまで信頼できますか?


 片道だけでも違うだろと、パラシュートのようなものを持ち込んだ、多分、転生方面の先輩もいたという。


 だが、断崖の中途半端な狭さに、パラシュート先輩は崖の途中で引っかかってひどいことになったらしい。

 生還はしたから失敗談として残っているのだけれど。


 結局、確実性、安全性、費用対効果から、探索者界隈では通常ルートしか選択肢がない。


 では、風魔術の【飛行フライ】をメンバー分も使えるなら?


 残念、【飛行フライ】は術者自身が対象です。


 そも大魔術階梯です。

 初等、中等、高等ときての大魔術階梯。使えるなら第四層なんてとうの昔に卒業してます。


「そういや【浮遊レビテーション】ないんだな」


 ヨッシーのいう【浮遊レビテーション】は、落下速度を軽減するタイプ。

 ゲームシステムによっては落とし穴に落ちない浮遊タイプもあるけど、踏ん張りがきかないと思うんだけどなあ。


 調べられた魔導書には、それっぽいものはないねとセバス。


「んじゃ、開発できね? 【浮遊レビテーション】でもいいけど、戻ってくるにも、パーティ全体にかかる【飛行フライ】っぽいもの」

「できりゃー苦労はないですけどね。最低でも大魔法階梯って、それ僕にどうしろと」


 でも、なんとかなるとしたらその方向性だろうとは結論した。



   ☆



 数日、飛行系魔法を軽い負担で実現できないかを考えていたセバスが両手を挙げた。


「風魔法【送風ウィンド改】で僕一人なら、浮かすことはできました」


 体勢を崩す用の風速20m/sでは無理だったので、風速40m/sで試し一瞬だけ浮くことはできた。

 では、これを連続的に維持し続けるのに必要なMPはどのくらいか。


「MP60突っ込んで12秒」

「はいしゅーりょー」


 【飛行フライ】が大魔術階梯なのは伊達じゃあない。


「ていうか、どうあっても風圧でわちゃくちゃになる姿しか想像イメージできない」


 魔法・魔術はイメージが重要。

 それゆえに、イメージが邪魔になるケースもある。


「まっとうな魔法教育を受けてきたエリート魔法少女は空を飛べないのに、日朝にちあさのTV教育で育ったなんちゃって魔法少女は『飛べて当たり前』って思ってるから飛べる、みたいな?」

「そうね、信じる心が奇跡(魔法)を生むってヤツですね」


 目的は大断崖を利用した第四層へのショートカット。

 手段、方法論で、生身ではなく翼の揚力で飛ぶ飛行機やグライダーとなると、今度は大断崖が狭すぎる。


「いっそ、『タ〇コプター』みたいなモン作って、これが魔法の焦点具だと思い込めば飛べるんじゃね?」

「『タケ〇プター』って反重力を発生させてるんだっけか?」

「待って、下手に理屈をつけないで」


 重力に反発して浮く反重力、いや重力を遮断すれば、そういやエスパーなお嬢さんも空を飛んでいたなとサイキック。


 思考の発散と収束。


 反重力と重力遮断は、移動のための推力が別口で必要じゃねとなり、サイキック飛行術が第一候補に浮上した。


「無属性にあったはず」

「でた、セバス・オリジナル呪文書だ!」


 専用のルーズリーフバインダーをめくるセバスにヨッシーがツッコムが、彼とても前世では黒い表紙のノートにオリジナル詠唱まで書き込んでいた剛の者である。

 しかも、ローマ字的母音子音組み合わせなオリジナル文字で。



   ☆



 無属性魔術の初等魔術階梯にある【見えざる手インビンジブル・ハンド】を参考に、無属性魔法【念動サイキック】の開発が始まった。


「男たちが言った。『ダメだ、こんなんじゃ勝てない』」

「どっかのプロジェクト番組っぽく言うの反則だろ」


 ゲラゲラ笑う声を背景に、セバスは【見えざる手インビンジブル・ハンド】の要件を調べ、自分なりに解釈してイメージを固めていく。


 【見えざる手インビンジブル・ハンド】には、50kg程度までのモノを動かせる力がある。

 荷物込みの人ということで安全係数も掛けて150kgを浮かせるところから。


 これは重しを相手にMP量を調整し感覚を掴む。


 次に効果時間の拡大。

 稼働させなければ30分程度持続というのはソノママに、稼働させた場合の5分程度を10分、15分と延ばしていく。


 最大負荷は設定した150kgを超えられないが、稼働時間は実際の負荷次第で延びることも確認した。


 自分の体を使った人体実験も、階段や二階の窓など、低いところから徐々に試していく。


「飛ぶというよりかは、掴み上げて動かす感じ」


 動作の応用が利きそうなので、『手』はソノママ。

 設定したパラメータ毎につっこむMP量を変えると、最大負荷や効果時間、手の大きさや数、右か左かなどが変化する。


 2年次の春季・夏季をかけて、無属性魔法【念動手サイキック・ハンド】の開発は一応終了した。




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