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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
6章.学院編Ⅳ・2年次

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6-10.お客様対応



 春分祭週で【祝福の儀】を受け、養護院で二人が探索科を志した。


 ジョゼフとカールの二卵性双生児で、加護ギフトは戦闘スキルではないそうだ。

 なぜ探索者にと問うたところ、「男には、野心がある」とのこと。


「オルガたちとの相性がよさそう」

「むしろ似かより過ぎててケンカしないか?」


 ラッドの返答に、それもありそうだとヨッシー。


「マルク工房コミュニティの方は?」

「春季生まれでいるかどうかだな」


 秋・冬での志願者はいなかった。養護院ともども、確定するのは夏至祭週以降となる。


 とりあえず昨年のオルレアたちと同様、ジョゼフたちの探索者登録と、簡単なレクチャーと見学会を行う。


 ポーター依頼で多数にまぎれること、たまにおごらされることでつながりを作ること、対人は逃げるが勝ちなどなど。

 入学までに半年あるため、焦らずにお金をため、身体を慣らすことを第一にするように言い含めた。


 生意気な小僧の気配はあるが、転生三人組の指示には素直に従っている。


「私たちに、学院探索科という道を拓いてくれた恩人ですからね」

「僕たちこれでも恩義くらいは感じているのさ」


 無理せずがんばれと励まし、3回ほど狩りにも付き添った。

 うち1回はファンガス農園詣で。三人の都合と、こういうところもあるよの社会勉強だ。



   ☆



 装備更新により浮いた小楯は現1年次の後輩たちに譲った。

 ヨッシーが両腕装備だったため、ちょうど4枚になる。


 酷使に耐えてきた革のブーツはボロボロすぎて限界ということで、素直に処分。

 鉄甲付き革のロングブーツに履き替えた。


 全身各所に鉄のパーツがじわっと増え、稼いだおカネが勢いよく溶けていく。

 なお、またしてもとげとげ鉄球(モーニングスター)はお見送り。修理優先、防具優先ゆえに已む無しなのだ。


 小楯を抱えてほくほく顔のアドルフとフィアフを帰し、おまけでオルガたちももう寝ろと部屋から追い出して、転生三人組は応接スペースにどっかと腰を落とした。


「オルガたちも週一で来るのがなあ」

「一応、あっちのパーティの話だとか耳にした噂だとか持ってきてるからなあ」


 ラッドはすっかり冷めてしまったホットミルクをあおった。

 ヨッシーの言うように、貴重な情報なので無下にもできない。


「餌付けしちゃった責任ですよね」


 毎回毎回隠しきれるものではないなからね。

 欠食児童は鼻が利くのが相場だ。黙らせるにはその口を封じるしかない。


「あいつら、わりと好き嫌いないからなあ」

「牛乳も最初は嫌がってたけど、砂糖入りホットミルクならおかわり要求してきますし」


 さいわい、何を食わそうが他所で言いふらすような事はしない。

 自分たちの取り分が減るのを嫌がっているだけかもしれないが、そこは信用できるのだ。


「そういえば、夜食べると太るってエビデンスがあるらしいです」


 食欲を増すホルモンが増え、抑制するホルモンが減るとか、消費エネルギー量や深部体温が低下とか。

 要するに、寝ている間は消費エネルギーが少なくて、余分は体脂肪として蓄積されるから太る。


「これを養殖に取り入れて、夜に餌をやったら脂ののりがよくなったとか」

「じゃあ、太らせるだけなら、差し入れと称して夜にちょこちょこ食わせるのが効果的?」


 じっと、誰かのお腹を見る。

 夜がどうこうではなく、一回一回の食事量が多いせいで、あんこ体型なヨッシー。たぷたぷぅ。


 なお現在の三人の環境では難しいけれど、朝食時にたんぱく質を取れば筋肉が付きやすいそうです。



   ☆



 『出る杭は打たれる』。

 今世だと『高木、多くの風に吹かれる』という言い回しがあるが、目立つ者に風当たりが強くなるのは人間の習性かもしれない。


 ダンジョン進行速度が、年次内だけでなく歴代の記録でもトップクラスの旧14号パーティへの妬み僻みが存在する。


 対策として、『お客様』を同行させて、ノウハウの拡散に協力していますよアピールを行うこととなった。


 ヨッシーの【個人倉庫】への収納を、偽の魔法鞄マジックバッグの効果として物資運搬をごまかす。

 ラッドの【通信販売】は、見せるとしてもゴミの処分のみ。

 セバスの【生活魔法】は、言わなければ相応の魔術士とでも思われるだろう。


 第六週の狩りには、クリスの紹介で家政科のウィスタリアを『お客様』として迎え入れた。

 なおこの週は、ジュスティーヌとマリエルが不参加の7人パーティ。


「今回はわたくしのわがままにお付き合いいただき、まことに感謝に堪えません。ジュスティーヌ様は不参加とのことですが、ユイ様を護衛対象に精一杯尽くさせていただきます」

「バトルメイド、実在していたのか!」


 見事なカーテシーを披露され、ヨッシーが思わず漏らしてしまうが、穏やかに訂正された。


「いえ、ほどほどに護衛の任も果たせる侍女……を目標にしている者でございます」

「貴人の側付きには、そういう人もいるわよね」


 魔術の加護ギフトを授かったためメイド訓練をしていないが、ヴィオラもそういうポジションを目指す道があったはずだと感慨深げである。


 ウィスタリアもクリスと同様に短剣を主武器にする。


「騎士や従士の方であれば帯剣もできましょうが」

「近侍とはいっても執事・従僕や侍女だと、大っぴらに武装するわけにもいかないんだよ」


 袖の中とか太ももとか、目につかない場所に暗器めいた収納になるのもそれが理由。


 移動日である初日に第二層・草原部から森林部で様子見。

 合格ラインと判定し翌日からは第三層へ。


 基本ポジションがユイの護衛であり、ユイ自身も弱くはないので狩り自体は特に問題なく進行。


 むしろユイがウィスタリアをかばうケースも見られた。

 個々人がその場その場で判断を迫られる第三層では、『お客様』ゆえに仕方ないだろう。


 そのウィスタリアは第三層でレベルが上がり、世に言う霊格酔い症状に端正な顔をしかめていた。


 第三層では第二層よりも一度に流れ込む霊格量が増え、それが諸症状を引き起こすらしい。

 もちろん第二層でも、レベル1者を連れて行ってパワーレベリングを行えば起こり得る。


 最悪、死ぬ。

 肉体はともかく、霊体が弾けてしまっては蘇生の奇跡も意味がない。


 急激なパワーレベリングが忌避される理由であり、パーティメンバーのレベル差が開くことが歓迎されないことにもつながる。


「わたくしには、少々早すぎた狩場のようでございます。今回の体験を、ありがたく今後に生かしたく思います」



   ☆



 第十一週、第十二週では、以前組んだことのある二人に声をかけた。


 官吏科のゴートとドゥーレンで、それぞれクリスにヴィオラ、そしてユイが不参加であり、ポジションはユイの護衛か、セバスの護衛で割り振った。


 霊格酔い症状については事前に注意。


「ご迷惑をおかけしてしまうかもしれませんな。いかんせんわたくし、レベルが低い」

「俺がダメな時は拠点に放置してくれてかまわん。なに、死にやせんならもうけものだ」


 癖なのだろう。

 ゴートは髪をオールバックになでつけ、ドゥーレンはもしゃっとしたもみあげをつまむ。


 実際に二人とも、第三層で活動できたのは2日間だけで、日程ど真ん中の3日目は拠点で荷物番をして過ごした。


 ヨッシーの【個人倉庫】の偽装は引き続き成功。


「さすがにジュスティーヌ様。助かりますな」

「魔法鞄はカネだけで手に入るモノではないからな。正直、うらやましいさ」


 お値段、最低でも庶民年収のうん十年分と知ってしまったユイは悲鳴を上げた。


「でもねえ、容量次第、効果次第で上は果て無き青天井なのよ」

「あーうー」


 だいたい、ダンジョン産の魔道具は、基本的にお高いのだ。

 いや、人の手で再現できたものでも、結局、材料費や加工賃で安くはならない。


「あたしも魔力の焦点具欲しいけど、手がでないわ」


 魔力操作の補助輪サポーター、あるいは増幅器ブースター


 命の根幹に関わる体内と体外との間の見えない壁。

 この壁を越えて魔力を操るのが魔術の基本だが、いわば抜け穴・蛇口めいた機能を果たすのが補助輪サポーターとしての魔力の焦点具。


 増幅器ブースターとしての焦点具は、一時的に魔力をためる機能、あるいは、特定の魔術に特化した補助機能を持つもの。

 【火矢ファイアアロー】などのアロー系であれば、照準機能や連射機能が人気。


 安定の指輪型。

 根強い人気の杖タイプ。

 握って使うペンダント・聖印なんかもちょぼちょぼ。


「あうあう」


 これまたお値段を聞いてしまったユイは目をまわしている。



   ☆



 そんなこんなの春季では、転生三人組はレベルが8に上がった。

 他のメンバーはレベル8のママ据え置き。


 一応、レベル調整も『お客様』を入れる目的のうちであったので、そんなものでしょう状態。


 スキル面では、ジュスティーヌ、ヴィオラ、マリエルが錬気術Lv.1表示になり、ユイは棒杖術がLv.2に上がった。


 転生三人組は、弓術と剣術が【自己認識ステータス】に表示されるようになった。




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