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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
6章.学院編Ⅳ・2年次

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6-09.系統外魔術士マリエル



 春分祭週の間に、ユイは針子の母が待つ実家に後輩の獣耳の人たちを連れて行った。


 ブラジャーを作るのに採寸と、あとジュスティーヌやヴィオラ、マリエルも一緒の女子会のつもりだったそうだ。


 そう、転生方面の先輩諸氏の頑張りあってか、今世の女性にはブラジャーが普及している。

 バストを支えるクーパー靭帯を守り、ひいては、形や大きさ、張りを維持する大切な、大切な役割がある。


 こと探索者方面に限っても、揺れを抑えて胸部を保護してくれる重要な防具との位置づけだ。

 その重要性は、男性のちんカップことファールカップと同等とされている。


「フィアフちゃんが男の子だったなんて!」

「こんなにかわいい子が男の子のはずないじゃない!」

「フィアフちゃんとアドルフ君が同室だなんて、いけない、これはいけないわ!」


 ユイが嘆きヴィオラが憤りマリエルが腐臭を発する。


 ていうかユイちゃん、後輩たちの入寮案内したよね?

 え、報酬の手羽先しか覚えていない?

 そっかあ……


 なぜか無表情のジュスティーヌから泣きそうな顔の狐耳のフィアフを保護し、事情を聞き出した転生三人組は、フィアフと、ついでにアドルフを探索科寮の自室に招待した。


「災難だったな」

「何も言うな。食え。とりあえず食え」


 手羽先もシリアルバー(チョコ味)も本物のチョコもポテチも肉まん餡まんもクッキーもオレンジジュース付きでご提供。

 炭酸割もあるぞ。なんならコーラも。


 闇魔法【安息プチ・ケア】も併用し、とりあえずメンタルは回復したようだった。



   ☆



 第一週中には履修指導面談も行われた。


 このままなら3年卒できるなとのたまう講師に、5年でも、6年でも学びたいと申し述べるが手厳しく却下される。


「学べるときに学べるだけ学びたいのです。学院は最高の環境です」

「意欲は買うが、お前が卒院しないと枠が空かない。それは他の学びたい者の邪魔をしているということだ」


 正論は耳に痛い。



   ☆



 『剣術』、『弓術』、『無手格闘術』。

 転生三人組が訓練に時間を割いて一年半、そろそろかなという感覚があった。


 授業のない第一週に集中的に『無手格闘術』に取り組んだところ、無事に【Lv.1/初心者ニュービー】として【自己認識ステータス】に表示された。


 ひとつの区切りとして『無手格闘術』の訓練は打ち止めとするが、『学べるときに学べるだけ学んでおく』方針は武術でも同じ。


 学院の用意しているコースには、『短剣術』、『槍術』、『投擲術』、『長物術(ポールウェポン系)』が残っている。


 しかしヨッシーたっての願いもあり、新たに履修計画に入れるのはお馬さんの世話をする『厩務』にした。


 厩舎には猫も住み着いており、気ままにお暮しあそばされている。


「俺は猫派だってばよ」

「(前世の)僕の家にも猫いましたし」

「自分とこは犬だったんだが、まあ、アニマルセラピーってあるよな」


 馬と猫様のお世話をさせていただいていると、気づかないうちにこわばっていた心が解きほぐされていく。

 三人にとって大切な癒やしの時間となった。



   ☆



 週末、無の曜日には全員おめでとうのお誕生会を昨年に引き続き開催。

 今年は早くから予約を入れておいたため、第一週で開催となった。


 指導面談の話題が振られたジュスティーヌは呻いていたが、別の意味で呻いているのが転生三人組。


「自分たち、このままだとあと1年半で追い出される」

「あんたたちねえ」


 ヴィオラはあきれ顔。


 ともあれ、せっかくの個室。

 純粋なお誕生会としての時間はそこそこに、パーティ関連の話題・議題は数多い。


 ラッドの【通信販売】で入手したいもので意見を出し合ったり、実際にサンプルとして食べて飲んで激論になったり。


 食品は、思った以上に個々人の好みの差が大きいことが判明した。


 また、明確なゴミとして残るものがある場合も問題で、食品の一部や雑貨類のほとんどがNGな理由になる。


「紅茶のティーバッグとやら、便利ですが言い訳ができません」


 紅茶は存在するので茶葉として入手するのはあり。容器は入れ替え前提。

 緑茶はハーブティの一種として、同じく茶葉としてならば。

 梅昆布茶? 好きにすれば?


「プルるんとして美味、ゆえにプリン。滑らかな食感もまた味わいを深めています。私が特に推したいのは頂点に盛られた生クリーム層。これが……」

「ちょっとティナ」

「はうっ」


 ヴィオラ、ぎりぎりインターセプト成功。


 ちなみにプリンも今世に存在する。超高級品らしい。

 異世界チート・ランキングで、マヨネーズに並ぶ人気(ヨッシーの主張)は伊達じゃない。



   ☆



 ジュスティーヌに、ひいては旧14号パーティにかかる嫉妬圧力を軽減するために、第三層に『お客様』を同行させるプランについて。


 ジュスティーヌは使い込まれた感のある小ぶりな革の鞄を掲げた。


「ヨッシーさんの『収納』を、魔法鞄マジック・バッグに偽装するんです」

「あるんだ!?」


 あるよ。


「いえ、これはただの鞄ですが、名付けて『偽・魔法鞄(ザ・フェイク)!』。どうです、いい考えでしょう」


 いわゆる魔法鞄は、ダンジョン産品である。


 内容・性能はピンキリで、容量が見た目以上のモノが人気が高い。

 内部の時間経過が緩やかなもの、反対に加速するものも同様。


 入れたモノが二度と取りだせない魔法鞄も、ナニかしらを完全に処分できるとして需要がある。


 探索科でも資源・買取系統で『特殊品・魔道具』あたりを取れば、人の手では再現できていない代表的な魔道具として例示される。


「魔道具は機工科だとばかり……」

「そっか、ダンジョン産品のチェックも要るのか」



   ☆



 時間的に最後になる話題にはマリエルが手を挙げた。


「わたしの最優先役割(ロール)って、ユイの護衛ガードで基本的に戦闘に非参加じゃない」


 比較論で楽をしている申し訳なさに加え、肝心のユイが不参加の場合の連携にも難が生じている。


 そこで、かねてより魔術ないし魔法を勧めていたセバスの誘いに応じようと思ったという。


 魔法の水薬(ポーション)製作には魔力を使う。

 マリエルは、親の見よう見まねで「できてしまった」ので工房アトリエの後継者候補として学院に入った。


 つまり、魔術士の才能とされる①魔力認識と②魔力の体外放出(魔力操作)ができていることになる。


 実際、ポーション製作は、属性魔術ではない系統外魔術、付与魔術の一種と考えられている。


「属性適性調べるのに、かっかっ下腹部をまさぐるって言うから、みんなの前ではちょっとだけど」

「あの~、おへその下あたりを服の上から触るだけですよ?」


 顔を真っ赤にして叫ぶマリエルだったが、ユイは首を傾げた。

 セバスも、こんな感じとヨッシーのお腹をタプタプして見せる。


「それを、先に、言いなさい!」


 セバスは【魔力感知センス・マジック】で、どの色合いがあるか強いかで魔力属性を判別する。


 ユイの場合は、光属性が強いのは当然として、強いて言えば風属性も扱えなくはないかなという感じ。


 マリエルに瞑想魔力操作をしてもらいながらそのお腹に手を当てたタイミングで、ジュスティーヌがビッっと挙手をした。


「すいませーん。手が滑ったりしないんですか」

「せんわ!」


 ともあれマリエルは無属性最強。光属性もあるかなという感触。


「わたし、無属性かあ。あの【発勁ドス・コイン】も無属性魔法なんだっけ?」

「【力弾フォース】の強力かつ効果限定的なものと推定しています」


 無属性は、小魔術キャントリップ階梯に【魔力感知センス・マジック】と【空間把握】、そして威力はデコピンな【力弾フォース】がある。

 危険性が低いので、修得を試みるにはちょうどいい。


「おへその下、ですね……」

「だよねー、やっぱり、だよねー」


 ついでだからと身を乗り出してきたジュスティーヌだったが、実際になでなでされると顔を赤らめた。

 光と土の属性強し。水属性もギリ。


「なんか手つきがいやらしいわよ」


 ヴィオラは属性魔力の判別をする必要はないはずなのだが。

 予想通りに闇属性、風属性、ぎりぎりで火属性。


 それぞれ納得というか、そうなんだーというあたりで時間も程よく、お開きとなった。


 部屋を出がけにマリエルがセバスの肩を叩いて身を寄せる。


「セバスの家系って魔術士いる?」

「母が土属性の魔術士です」


 セバスのは母エレノーラは家政科卒だが土属性魔術士でもある。


 出入り口で邪魔とばかりにセバスの背を押すユイが、何のことかと首を傾げる。


「魔術の加護ギフト、血筋の影響について『魔術概論』でやったでしょ」


 マリエルは薬剤科だが、家業の魔法の水薬(ポーション)製作において魔力を使うため、魔術科の基本知識系講座を取っている。

 魔術士の才能が血統的にあらわれやすいことは、エビデンスがある。


「家業なのよ」

「そうなんですね?」


 唇を尖らすユイに、マリエルも唇を尖らせて見せた。




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