表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
道連れ転生  作者: 凡鳥工房
6章.学院編Ⅳ・2年次

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/157

6-05.マツリ



 2年次から、旧14号パーティはダンジョンアタックを休業週に集中することにした。

 そして1回の狩り日程を4泊5日に延ばしたことで、自由時間が激減している。


 それでも転生三人組は、秋季末の休業の開始とともに各実家や養護院に顔を出し、その日のうちに学院に帰ってきた。


「手羽先さえ貰えれば俺自身は要らないってのがはっきりわかる」


 養護院でのヨッシーは、手羽先の人。

 現金なものだが、自分でもそうするとわかるだけに怒る気もない。


「養護院とは、人材確保的な面でのお付き合い、ビジネス対応にシフトですかね」

「出てから1年以上だしな、年に数回ツラ出せば十分だろ」


 親が学費を出しているラッドとセバスはもうちょっとウェットな関係。

 ラッドのほうは実家だけでなく、マルク工房コミュニティとの絡みもある。


「自分も、今世の親兄弟とはいえ独り立ちしたなら年数回でいいだろな」

「泊まってくるのは止めましたが、季毎に顔見せないとそれはそれで面倒そう」


 セバスの実家、ヴェルム家の男たちは心配性だからね。


「ヨッシーの【個人倉庫】用の木箱、マルク親方の方で適当な時に届けてくれるって」


 コンテナとして運用するのに外寸で高さ40cm、幅40cm、奥行50cmと規格を統一。

 5段くらい積み重ねできるよう頼んである。


 【個人倉庫】への出し入れは手を触れればできるが、取り回しを考えこのサイズに落ち着いた。


 今回の12箱(1ダース)の代金は、マルク親方が負担。

 親方は、『借り』ばかりの関係性は健全ではないと考える工房経営者である。



   ☆



 ラッドとヨッシーの属してきたコミュニティの後輩であり、今後の人材的な意味でもおろそかにできないのが探索科1年次の4人。


 男子組に冬季の履修計画について相談を受けた転生三人組は、ついでだからと女子組も含め、旧14号パーティの計画相談の場に同席させた。


 履修計画そのものは、前季の時間割に調整を入れ、どの講座を取るかだけの話である。

 どれを取るか、自分たち以外の意見も聞いてみろと交流の機会をつくったつもり。


「適切に休みをとることも大事だぞ」

「毎日毎日、訓練かダンジョン、傷だらけの身体、たまっていく疲れ、落ちる集中力」

「ひぃい」


 オルガたちは、本当に便利な反面教師。


 後輩たちは、学院パーティ編成に4人まとめての参加。奇しくも14号パーティだそうだ。


「パーティ名はつけないの?」

「俺たち、『旧14号パーティ』って気に入ってるんだよ」

「それに、オルガたちみたいなのはなあ」


 むしろ、自分のパーティ名に『はがね咆哮ほうこう』なんて許したマックスが、思春期に発症する例の病の罹患者の可能性がある。


 ただし、探索者の感覚としてはおかしなパーティ名ではない。

 二つ名と同様、強そう、カッコいい、優雅な、そういう名乗りが好まれるのだ。


 誰だって『チキン野郎』とか『デブ』とか『すけこまし』とか、名乗りたくも呼ばれたくもないものね。


 なお、業界全体で例の病の罹患者である可能性については考えないものとする。


「我らの主催者様はご意見おありか?」

「やめなさい。ティナに任せたら絶対変な名前になるわよ」

「そんな~」


 女子組には女の子の日問題について、ユイたちから説明してもらう。

 マリエルがやたらと深刻な雰囲気を作って、オルレアとジャルマリスを怯えさせていた。


 男子組のアドルフとフィアフには、そういうものであると受け止めたうえで対処を練る必要性を。

 サボりや怠けとは違う必要な休み。建設的に考えるべし云々。


「学院パーティ編成じゃ稼げないって本当だった」

「秋季は、休みの週に『遠出狩り』してなんとかなったけど、余裕ない」


「じゃあ一度、奥地狩りを経験しとくか?」

「うひょ!」

「あんたたちねえ。英才教育が過ぎるわよ」


 ただし、休みの週はこちらも第三層チャレンジという大仕事を控えている。


 闇の曜日の午後から休日の無の曜日を使う、第一層拠点1泊2日のご提案。

 通常週の、学院パーティ編成での狩りに、『なぜか』『たまたま』『行き先が被った先輩が』『邪魔にならないように途中まで同行する』カタチ。


「いきなり無の曜日まるまるはやめなさいって。仮眠後に軽く狩りしながら帰ってくればいいでしょ」

「じゃあそういうことに」

「うひょーう!」


 一緒に行ってくれるだけじゃ、一回じゃわからないノウハウの塊なんだからねと細々した注意をするヴィオラ。


 同じ獣耳の人が3人もいるためか世話焼きお姉さん化しているが、もとからジュスティーヌというでっかい妹分を抱えたお姉さんだったような気もする。



   ☆



 事件の第一報がもたらされたのは冬至祭週の終わりの日。


 三人が夕食を食べに来た時、探索科寮の食堂は騒然となっていた。


「すでに騎士科にも話をまわしております」

「久々にでかいマツリになるぞ」


 先に食堂に居た人を捕まえて聞いてみたところ、祭週にもダンジョンに繰り出していた1年次がカツアゲをくらったという。


 これが、ただ単にダンジョン内で学院生が行方不明になったという話であれば騒ぎにはならない。

 昨年の1年次で発生していたように、年に数件は起こりうることなのだ。


 小銭持ったガキが無法地帯をうろついて、常に無事でいられるわけもない。


 きちんと始末されてしまったのであれば、憶測レベルでも犯人の目星が付けられないのであれば、こぶしを振り上げることはできない。


 実際に個々のケースでどうして行方不明になったのかは知らないけど。


 ただし今回は、被害者が生還している。


「学章は見せてたんだよな?」

「左腕に特徴的な蛇の入れ墨をしていた?」


 犯人個人を特定する手がかりまで残している。


 学章も、知らなければせいぜいどこかのクランかなと。

 いやまあ、どこであれクランに因縁つけるのは考えなしと言われればそれはそう。


「蛇の入れ墨するような組織、聞いたことあるか?」

「素人でなきゃ、わざと見せてるミスリードの可能性はどうだ?」


 学院がケツモチしている証、学章。

 これをナメられては他の学院生の身の安全も怪しくなる。


 さらに敷衍すれば、学院のバックの王家の御威光をないがしろにする不敬行為とまで強弁きょうべんできてしまう。


 『ナメられたら殺す』。

 暴力集団として実に正しい本懐の在り方といえよう。


 学院生が暴走しているわけではない。


 学院は黙認、なんなら相談も受けるし支援も行う。

 すでに第一週の予定はすべてキャンセルし、学院生たちの自由行動フリータイムを保証している。


 まもなく諸科を横断した対策本部が大講堂に設置された。


「街内にダンジョンに、両面ローラーだ」

「組合には?」

「ゴードック師範から伝えるそうです。有力クランには先輩方のツテをたどる予定」


 ゴードック師範は剣術の指南役の一人。元騎士で、当人も一代騎士爵持ち。

 転生三人組は知らないが、探索者組合の理事のうち三人と学院の同期だったりもする。


「市門に張り付くのは誰だ?」

「各門に2~3年次のパーティ、4つくらいでローテ組み中。先発隊はすでに出しました」


 といった具合で、生徒たちが自発的に組織演習してるんだから、学院としては応援しないとね。


 ちなみに、アクヤの街に所在する探索者のクランやクランっぽいもののうち、人数的な最大手は学院になる。


 探索者登録をしている者は、探索科だけで年次ごとに約100人。

 騎士科、魔術科、官吏科ほかで同じく約100人。

 滞留4年次以降は漸減するのでまとめて100人ずつとすると、その合計は800人となる。


 大半は木札級だが、6人を基本とするパーティ単位で動く戦闘集団が800人。


 10歳ちょいのガキが学章をピン止めしておくだけで、チンピラ・ゴロツキ相手の抑止力になる理由がそこにある。



  ☆



 ダンジョンローラー班により他国から流れてきたゴロツキが揚げられて、数日でマツリは終了した。


 探索者で一獲千金を夢見たが、素行の悪さはなおらず犯行に及んだものとされた。


 本当のところ理由なんてどうでもいい。

 学院は、学院生は、いつでも抜けるつるぎなんだぞって、報復行動で威を示せればそれでいい。


 街の治安を守る衛視・衛兵が私刑を見逃していいのかって?


 ほとんどが学院卒か関係者ですが、何か?


 ていうか、ダンジョンの中に、街の法が及ぶわけないじゃないですか。

 権限の範囲外で取り締まりって、それ越権行為っていうんですよ。いやだなあ。


「自分たち、市門の前で突っ立ってるだけで事態が終わった」

「別に、俺たちが矢面に立つ案件でもないし?」

「こういうこともあるって経験でしたね」


 学院の第一週の予定がすべてキャンセルになった影響もでた。


 一部の学院生は補習・追試を受けられなくて悲鳴を上げた。

 転生三人組も事前の訓練計画がポシャった。


 案件の終わった週の後半も、剣術指南役のゴードック師範ほか実戦派の講師が軒並み事後処理で出てこない。


 マツリの余韻、昂った気を発散するため、武術訓練は学院生たちの乱取り場と化した。

 三人はひたすら防御に専念、盾術を磨かされた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ