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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
6章.学院編Ⅳ・2年次

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6-03.【通信販売】一部解禁



 まとまった時間がとれたので、転生三人組は、ラッドの【通信販売】で使うポイントの変換率について検証を行った。


 もちろん、ダンジョン産品の組合買取値とポイントにした場合のリストは随時作成していた。

 今回は改めて、現金化とポイント化のどちらが得か、その基準作りもかねての検証となる。


「今後、『持ち帰れない』が発生するでしょう」

「たとえ俺の【個人倉庫】に突っ込んでも、それを買取に出せないって流れだな」


 人一人が持てる荷の量には限界がある。

 溜めておいてまとめて出したという言い訳も、いずれつじつまが合わなくなるだろう。


 というか、ダンジョン産品を個人的に溜め込むのは推奨されない行為なので、注意を受けると思う。


 探索者からダンジョン産品を買い取って、それぞれの業界・業者に卸す。

 その差額が組合の利益だからね。


 これという根拠はないが、最低貨幣単位の粒銅1枚を100としてポイント変換の場合と組合買取値とを比率化。

 ポイント÷買取値なので、高いほどポイントにした方がいい、低いほど買取に出せということになる。


 基準としての妥当性は、今後も要検証。


 おなじみの『魔石(小)』は小銅貨1枚での買取なので、粒銅6枚換算で600。

 ポイント変換だと100ポイント。


 100÷600=0.17 ※小数点以下第3位で四捨五入


 同様に計算を進めたところ、第一層・第二層のドロップで倍率1.00を超えた品は6点あった。


 一つは言うまでもなく『香りのよいキノコ』で、倍率なんと70.00!


 以下、角兎ホーンラビットの『兎の肉』1.80、『兎の尻尾』1.00。

 草原狼グラスウルフの『狼の尻尾』5.00、『狼耳のヘアバンド』2.50。

 月輪熊クレセントベアの『熊の胆』1.74。


「粒銅の1~2枚だし、『尻尾』や『ヘアバンド』なんかはポイントでいいだろ」


 数を狩ればそれなりにドロップするからね。

 最初の数個は珍しくとも、大したお金にならないとなれば、荷物袋をもっさもさにしてまで持ち帰るのもおっくうになる。


 ただし、現金が大切なのも事実。

 買取が大銅貨2枚の『熊の胆』は1.74倍でも現金化の方向。


「ぶっちゃけ、キノコ様が最強すぎるから、持ち帰るまでもないゴミの選別になってるな」


 ヨッシーの【個人倉庫】をメンバー外に秘する以上、持ち帰って見せる、買取に出す品は選別必須だ。


 でも、ただ捨て置くのではなく、ポイントにできる。

 MPの都合でダンジョン内で変換しきれなくとも、それこそヨッシーの【個人倉庫】に突っ込んで持ち帰り、毎日コツコツ処理すればいい。


「自分もヨッシーも、ギフトの能力を使うたびにMP消費するからな」

「『ポイント化品』コンテナを用意して、狩りも日常も、1日の終わりに整理するって感じでいいだろ」


 第三層以降も、わかる範囲でリスト化作業を進めておく。



   ☆



 第六週の中休み。

 旧14号パーティは、第二層に4泊5日の狩りに出た。


 秋分祭週と第一週も含めて6週間近いブランクは、確かに勘を鈍らせていた。

 各自の訓練および合同での連携確認はしていたが、やはり実戦とは違うということなのだろう。


「いうて、2~3回でアジャストできてりゃ上等だろ」

「うん、まあ。いまさら見えているウサギ相手にビビりはしないしね」


 ダンジョンに入ってから第三層側の拠点まで、途中休憩をはさんで6時間近くかかる。

 第二層だけでも二桁の遭遇戦・迎撃戦をこなせば錆も落ちる。


 拠点キャンプ場の隅っこで寝床と夕飯の支度を済ませ、ドロップした『兎の肉』焼き(塩味)をかじりながら切り出した。


「現在開示可能な情報を伝えたいんだが、大丈夫か?」


「……ええ、ええ。ちょっとだけ身構えてしまいましたよ」

「なんでこんなとこで。いきなりなのよ」


 メンバー全員が個室に集まる機会ってのがあんまりないのよ。

 なら、なるべく人のいない場所が次点に挙がる。


 今日の第三層側拠点には3パーティと預かり屋などが宿泊の準備を整えているが、いずれも距離と遮蔽をとっている。


 旧14号パーティも同じく。

 わざわざ他人の近くにターフやテントを張って煮炊きをするような真似はしない。


「まず、本日のドロップ品のうち『兎の肉』……は今食ってるから除いて、『兎の尻尾』と『狼の尻尾』、『狼耳のヘアバンド』を選り分ける」

「全部、粒銅買取よね。でも、『兎の毛皮』も粒銅よ?」


 それは粒銅3枚かつ200ポイント、倍率0.67。

 現状の基準だと現金化のほうに寄っている。


「自分はこれらを買い取り、加護ギフトスキル【通信販売】で使えるポイントに変換したいと考えている」

「ポイントにすることで、どうなるんです?」


 ラッドは、『兎の尻尾』を2つ取り上げた。


「この2つで200ポイント。手羽先を1つ入手可能になる」


 クワっと、ジュスティーヌの目が見開かれた。

 同時に放たれたオーラに全員が言葉を失い固唾をのむ。


「……道理で、いくら探しても、どこにも、売っていない、わけです」

「あのー、すいません。粒銅の数枚より明らかに手羽先のほうが欲しいです。そのポイント分で手羽先をいただけませんか」


 ユイちゃん挙手の上で発言。


「あ、えーと」

「あっそうか。分配計算がクッソ面倒になるのか……」


 個人買取扱いで金額をプールしたうえで分配清算なら、都度都度で各自の権利関係がスッキリ解決する。


 分配をポイントにも広げて帳尻を合わせるとなると、個々人に帳簿記録が必要となり、実際面倒。


「あたしはそこまで厳密にしなくてもいいと思うけど。手羽先、これまでも結構もらっちゃってたし」

「それもそうねえ」


 寮の食堂で渡していれば欠食児童たちの目線も集めてしまう。

 妬み羨み俺にもよこせとラッドについたあだ名というか陰口が『チキン屋』、転じて『チキン野郎』。


「粒銅程度の品ですとねえ。厳密性に手間をかけるより、大雑把でいいので手羽先ください」

「ティナぁ、最後で台無しよぉ」


 なし崩しに、小銭・端数は役得でいいから手羽先ちょうだいな雰囲気で、とりあえず各自に2本ずつ配布。


 ポイント変換を1回で済ませるべく、一塊に持ち上げたのはわりと妙技だったと自負するも、誰にもほめてもらえないラッドであった。


「荷物を収納できる【個人倉庫】、ドロップ品のポイント化で手羽先を手に入れられる【通信販売】。なるほど、英雄級を目指すのにこれ以上はないギフトだというのも頷ける」

「【生活魔法】もエグイもんね」


 これらの情報が外部に漏れたら身の破滅なのは言うまでもない。


「わかってるわよ。言わないわよ。言えないわよ」

「『神託みたいなもの』を受けてる皆さんを敵にしたら、『神罰みたいなもの』が下るかもしれないじゃないですか……」


 転生三人組は前世日本人の感覚で、宗教的権威や世俗権力者の持つ影響力・強制力への恐怖がベースにある。

 メンバーも同様に世事の面倒ごとを恐れるが、女神様の実在を疑っていないからこそのおそれも強い。


 なんにしても結果的に秘密が守られるのならばヨシ。



   ☆



 秋季では、都合3回の狩りを行った。


 転生三人組はレベル6に上がったが、他のメンバーはレベル6のまま。

 ヨッシーの【個人倉庫】に変化はなし。


 収入はクオルタ銀貨12枚となった。


「停滞を感じています」


 第一層時代からすれば短期に急激なレベルアップをしたのだが、人間慣れるものである。


 推定で倍の霊格量(経験値)が必要になる三人と同じレベルのママというのが、次のレベルへのハードルの高さを物語る。


 例の『ダンジョン最速理論』では、レベル5からでも第三層をすすめていた。

 ちなみにレベル9からは第四層。

 これで三年以内でレベル12に届くという。


「多分、『最速理論』はちょっとキツメの『適正狩場』をつないでいるんだと思う」

「情報も集めたし、冬季は第三層を狙うか」



   ☆



 このほか秋季のパーティメンバーに関するリザルト。


 ジュスティーヌとユイにも女の子の日が到来。

 女子組では温かい歓迎会が開かれたらしい。


 セバスの棒杖術がLv.2表示になった。

 訓練からは外したが、実戦経験で確実に練度は上がっている。


 ラッドの【通信販売】が累積100万ポイントでRank.3にアップ。


「一気にご近所のスーパーなみ……っていうかご近所のスーパーじゃねえか!」


 特有のプライベートブランドな品で判別。


「カレールー! コンソメ!!」

「……あるけど、持て余すだろ?」


 ヨッシーがちょっと高いのが玉にきずとこぼしたが、ヨッシーの死後数十年を生きたラッドとセバスにとってはそうでもない。


「俺の生きてた頃の倍、だと……」

「じんわりインフレで、数字上はそうなる」

「それに、用意してくれる誰かへの手数料もあるだろ」


 【通信販売】のポイントがそのまま日本円評価というわけではないので、あくまで感覚的な話。


 メンバーにもおすそ分けを増やすことも考えている。


「秘密の共犯者という絆をより強固にするべきだと考える」

「【通信販売】由来の『普通には手に入らないもの』を、俺たちだけ享受じゃあマズイもんな」

「仲間内での恨みつらみなんて、崩壊フラグですからね」


 何をおすそ分けの対象にするのかは今後の課題。




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