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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
6章.学院編Ⅳ・2年次

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6-01.学院生2年次のはじまり



 ラッド、ヨッシー、セバスの三人は、異世界からの転生者である。


 事情ワケあって、レベル100達成を目指し、ダンジョンで魔物と戦う探索者稼業に身を投じた。


 知識や技術、ツテ・コネを求めて入った学院。

 そこで集まったパーティメンバーに、現在開示可能な情報として事情の一部を明かした。


 その際の、『神託みたいなもの』というワードがメンバーたちに強い衝撃を与える。


 表沙汰にできない秘密を共有することになった彼ら彼女らの結束は固い。



   ☆



 収穫祭を特有の祭事にもつ秋分祭週。


 秋の実りを受けた豊富な品数に、またしても屋台制覇の野望はならず。

 三人はせめての意地で、後輩たちに「好きなものを食え」と、ええかっこしいをしゃれこんだ。


 さて、学院の年度は秋季より始まる。


 新学期のはじまりの日、新2年次以上の者たちは、新入生を誘導、監視、護衛するために動員された。


「落ち着きなくちょろちょろと、サルかよ!」

「いっそ首輪付けて引きまわした方がはやくね?」


 2年次の諸氏、昨年の自分たちを棚上げして言いたい放題である。


 ま、新入生たちも団体行動だの最低限の礼儀だの、文字通りに叩き込まれて覚えていくだろう。


 1年間の教育()の成果は、現在の2年次が証明している。



   ☆



 2年次に入ると、学院パーティ編成は行われなくなる。


 これにより1年次には門前払いだった光と闇の曜日の講座が受けられるようになり、週30コマ・フル授業体制となる。


 するとどうなるか。

 そう、嬉し悩まし履修計画のお時間だ。


「光と闇の曜日の講座ってさ、2年次以降向けだから、応用や特殊な領域が目立つな」


 光と闇が合わさり最強に見えると呟くヨッシーを横に、ラッドとセバスが唸る。


「なんで同じコマに重なるかな」

「興味のないのしかやってないコマもあるのに」


 講師や教室の都合もあるので、仕方ないってヤツなのだ。


 転生三人組は午後の武術訓練の時間を2コマに戻した。

 天才ならぬ彼らにとって1日5コマの受講はきついことと、事情によってはサボれる自由時間の確保が目的である。


 ラッドの【通信販売】ポイントのために、季に2回はファンガス農園を訪れたい。


 授業のある通常週の無の曜日(休日)からあてる予定だが、いともたやすく潰れるのが予定でもある。

 どこかで数時間を確保できれば、走って往復・弾丸キノコツアーを開催できる。


 武術訓練のコマと、息抜き・休息用の空きを、予定外を受け止めるバッファとして予定した。


「いや本当に、クリスやマリエルはすごいよ。週30コマって、頭大丈夫?」

「言い方! 違う意味に聞こえるわよ」


 睨まれてしまった。


「もちろん大丈夫じゃない。かなり無理しているが、自分で言い出したことだ」

「今回からちょっとへらす~」


 意地を言ったクリスと、弱気なマリエルのどっちが正解というものではない。


「……僕も、週24コマにする」


 無理は続かないからね。

 週24コマでも2年次の1年間を完遂できれば、クリスとマリエルは数字上は卒院必須単位がそろうことになる。


 現状、旧14号パーティは第二層にシフトし、第三層も視野に入れている。


 学院パーティ編成用のダンジョン活動(ダン活)が不要になった今、通常週で1泊2日の狩りを積み重ねるよりも、休業週にドカンといくべきとの意見が採択済みだ。


「ティナ、通常週での狩りを捨てるんだから、授業をきちんとこなさないと」

「あぅ~」


 特に、騎士科3年卒エリート狙いを捨てていないジュスティーヌは講座単位を目一杯取る方針。


 ヴィオラに叱られてまるまるジュスティーヌの対面でユイが腕を組んだ。


「しばらく狩りに出ないと、鈍っちゃわないか心配です」

「そうそう、錆ついちゃいますよ」

「ティナぁ」


 離れていた仕事や作業に復帰した時に、勘が鈍っていたり、感覚を取り戻すまでに時間がかかるのはある話。


「そも、きちんと日々の訓練をしていても錆つくようなら3年卒なんて……」

「あぅ~」


 正論パンチでジュスティーヌは沈んだ。


 転生三人組は、滞留年限まで粘る方針は諦めて5年ないし4年卒を目論むが、なぜかクリスたちは不満顔。


「セブたちだって3年で卒院できるだろ」

「どうだろう。レベルが上がるかどうか次第ですから」

「ああ……まあ、そうよねえ」


 レベルを上げるのに通常の倍の霊格量(経験値)が必要なことはメンバーに開示済み。


 それに、学べるときに学べるだけ学んどけ、寮費も安いんだしという事情は変わっていない。


「むしろクリスたちが4年卒に切り替えるのも……」

「ないわー。それはないわー」


 ポーション製作は、薬剤科で一通りの知識と資格を得たら、あとは実践の積み重ね。

 跡継ぎ候補として実家の工房アトリエが待っているマリエルには、あえて学院で滞留する理由がない。


 家政科のクリスにしても、3年卒と4年卒では周囲の評価が違う。

 3年卒を狙うのは当然だ。



   ☆



 新年度の2日目に探索科寮の食堂の片隅にて、転生三人組は後輩たちと相対していた。


「りしゅうって、どうすればいいの?」


 探索科は最低3年で霊格レベルを10に上げ、自科から240単位、他科から40単位を取得。

 加えてなにかしらの武術を【Lv.2/未熟者ノービス】以上にする必要がある。


 このうち武術は、ダンジョンでレベルを上げる間に実戦で修練を積むのでまず大丈夫。


 メモ用紙に週間時間割の表を書いて見せる。

 横軸に、光から始まり火・水・風・土・闇そして休日の無の曜日。縦軸に午前3コマ・午後3コマの授業枠。


「1年次は光の曜日と闇の曜日の午前を学院パーティ編成で使います」

「午後もなんだかんだで潰れると思っていい。どのみち講座は受けられない」

「火の曜日から土の曜日までの午前3コマ・午後2コマが授業の時間な。午後の3コマ目は武術の訓練しかやってない」


 図・表で示されればわかりやすい。

 獣耳の人ではないアドルフ君を除き、後輩たちの耳や尻尾がさわさわ揺れた。


「武術はとりあえず午後の3コマ目で、【自己認識ステータス】に表示されるまで棒杖術やっとけばいいだろう」

「そのあとは、棒杖術を続けるもよし、第二層に向けて盾術もよし、定番の剣術もよし。お好みだな」

「うん!」


 4週間、履修登録した講座で時間割を繰り返す。


「例えば火の曜日の午前1コマに『探索者のためのダンジョンの歩き方』を入れたなら、4週間、火の曜日の午前1コマはその講座な」


 『探索者のための』シリーズには『ダンジョンの歩き方』はじめ、『ダンジョンの危険』や『トイレのしかた』、『遺留品の扱い』など全12講座がある。

 どれも常識的な内容なので、授業に慣れる意味でも早いうちに取るようにオススメ。


「他科せんたくって?」

「探索科以外でやってる講座を取ること」

「おすすめは?」


 わかる範囲で答える。出し惜しみするようなものではないし。


「家政科の作法系列で『礼節』、『礼法基本』と『テーブルマナー』。家事関連で『裁縫』、『調理』、『栄養』、『お茶くみ』です」

「礼法関係は、探索者としてうまくいけば必要になる」

「家事関連は日常生活に必要だから」


 今は寮で食事を作ってくれるけど、卒院したらどうするのか。

 養護院や実家で家事のお手伝いはしていたはずだが、体系的知識を得ながら単位も取れるし損はない。


「『裁縫』は本気でオススメ。コウモリに引っかかれてほころんだところ、都度都度繕っておけば長持ちします」

「大事!」


「話聞くより手を動かして縫物してる時間のほうが長い。気軽な講座だったな」

「タオルのパッチワーク、半分くらい授業中にやりましたもんねえ」


 ハンドタオル、常用に2枚、パッチワーク用に6枚くらい、ツケで後輩たちに渡せないかとヨッシー。


「タダではあげられないが、それくらいは支援してもいいだろ?」

「うーん……おカネだとあれだから、またキノコとの『交換』の前払いってあたりでどうだ?」

「いいの!?」


 部屋からとってくるていでラッドが購入して戻ってくる。

 ついでに大事な話。


「このタオルとか下着とか、大事なもの高価なものは共用の干場じゃなくて自分の部屋に干すんだぞ」

「ラッドのやつ、干しといた下着を盗られて大変だったんだ」

「「うわー」」


 学院パーティについては、余計なトラブルを避けるなら、4人まとめて名前札をくくって編成箱に入れるよう教える。


「出会いの機会ではあるんだが」

「クソみたいなヤツと一緒になってクソなトラブルにあってクソな思いをするくらいなら、ですね」

「「「うわー」」」


 メンバーが固まっていれば、履修計画でどこをパーティ活動にあてるか決め打ちもできる。


「編成発表の光の曜日と反省会の闇の曜日、それぞれの裏を活動にあてとけば無駄がないだろ」

「あとは週半ばの水か風の曜日の午後だな」


 当初の転生三人組はチューニングが甘く、休日の無の曜日に狩りを割り込ませる無理もした。

 後輩たちに伝えながら、こういうのがノウハウなんだなと実感する。


 しばらくはまともに狩りにならなくて、稼げなくて不安になるかもだけど、休みの週で取り返せる。

 資金繰りが危ないようなら無の曜日に手伝うから、無理はするな云々。


「あのオルガたちも、なんとかなったんだから」

「そっか。オルガたちでもなんとかなったのか」


 すごい説得力です、オルガ組。




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