5-06.1年次の春季のこと③三人の事情
ところで、転生三人組は三人とも春季の生まれなので、季中に全員11歳になる。
実はジュスティーヌとユイも同じく春季の生まれで11歳になる。
「お誕生会を、するべきです!」
社交の一環にもなるようなお誕生会を開く文化的風習は、貴族や富裕層のもの。
庶民のご家庭では、お祝いの言葉と料理が一品増えれば上等だ。
「いや、マリエルやクリス、ヴィオラのこと祝ってないのに自分たちだけ祝えってのはちょっと」
「あう~」
ラッドの良識的返答にジュスティーヌがあまりにも無念で切ないですオーラを放っていたので、一般寮の相談室を確保できたならば、全員分をまとめて祝うことにする。
しかし、ただでさえ相談室は予約が詰まっている。
そのうえに、メンバー全員の予定が空く日時が限られる。
全員おめでとうの会が開かれたのは春季も第五週、闇の曜日の午後になった。
第10回の学院パーティ編成の報告・反省会の後、中休み前というタイミングだ。
「わぁ、わぁ……」
ジュスティーヌの前には山盛りの手羽先。
テーブル上には全員で共通の盛り皿もあるけれど、あえて盛り皿の一つをジュスティーヌの前に置いたのはラッドなりの気遣いか?
砕いたシリアルバーに肉まんもセッティング。
肉まんは、蒸しパンとこま切れ肉と野菜の炒め物の組み合わせなので、今世もどこかで存在するものだと言い張れる。
しかし、セットで購入されてしまう餡まんは自室に隠してきた。
西洋人は甘い豆に拒絶感があるらしいとヨッシーが言えば、ここを西洋と同一視していいのかとラッドが問い、なんにしても砂糖マシマシはあかんやろとセバス。
現に餡子は今世で見たことがない。果物のジャムだって、砂糖を使ったものは超高級品。
定番パーティ料理のポテチは自重。
ありうる料理なのだけれど、材料が単純ゆえにごまかしがきかず、値段の目安もつけやすい。
どうあがいても気軽に食せるお値段にはならないと判断。
油がねー。質がよすぎるからねー。
そしてコーラ。
「なに、これ」
「また珍妙なものを」
「うわぁ、大丈夫なの、コレ」
「この黒さ、そして泡立ち。マクシミリアンさんが邂逅したという奇跡のポーション、『呼ばわる者』と推測します。なるほど、出所はみなさんでしたか」
「ほぇ~」
戸惑いか、あるいははっきり嫌悪感を示す者もいる前で、転生三人組はコップを掲げた。
「えー、ではみなさん。1年分のお誕生日おめでとうございます!」
「あ、そういう会でしたね」
コーラとシリアルを交互に見ていたユイがユイちゃんするが、三人はもう止まらない。
「「「プロージット」」」
謎の掛け声とともに一気に飲み干し、乾杯しろよと態度で示す。ゲップ付き。
「くっ、かんぱい」
「かんぱーい」
「見た目はかなり異質です。
黒という、ある種の嫌悪感、恐怖心を抱かせる色。そこに湧きたつ小さな泡。
しかし、泡が弾けるとともに立つ香りは不思議と気分を爽やかにいざなうかのよう。
口に含めば発泡が口内を刺激し、薬液の苦味も、ふんだんに用いられていると思われる砂糖の甘みも、すべてを包み込み、洗い流す。
飲み干せば、喉には快の感覚が残るのみ。
呼ばわる者……確かにこれは勝利を呼ぶ声。活力を導く誘い水。
素晴らしい水薬です」
「ちょっとティナ!」
「はっ」
ゲップ。(美少女)
なおジュスティーヌは砕いたシリアルバーでも何か語り「蜂蜜にしては鼻に抜けるクセがありません。蜜花の品種をアカシアかクローバーに限定した高級品かメイプルシロップがベースでしょうか……」かけたが、警戒待機していたヴィオラのインターセプトで事なきを得た。
☆
第六週から第十週にかけての、三人の加護に関する話をまとめておく。
まず、ラッドの【通信販売】が累積50万ポイントでRank.2にアップした。
追加された品は12種。すべて1000ポイントで購入できる。
「反省を踏まえ、悩ましいものに関してはサンプル購入も行わない」
購入しなかったものは以下の通り。
・胡椒(100g缶)
・ラー油(150gPET)
・不織布マスク(箱入り50枚)
・BOXティッシュ(400枚200組5箱セット)
・リンスINシャンプー(480mlポンプ)
・歯磨き粉(フッ素1450ppmチューブ)
「自分で料理するなら、胡椒もラー油も欲しいんだがな」
「胡椒はね……砂糖とどっちがマシかなぁ」
ティッシュは鼻紙に欲しいのだが、庶民はハンカチ、ひどいと袖口で対応している。
明らかに持て余すという判断。
シャンプーと歯磨き粉は容器の問題なので、適当な壺や小箱か合わせ皿・貝殻を手に入れてから購入、中身を移し替える予定。
お試しで購入したものは以下の通り。
・炭酸水(1リットルPET)
・オレンジジュース(800mlPET)
・チョコレート(ミルクチョコレート26枚・120g)
・クッキー(量販店で398円で売ってそうな丸いクッキー缶)
・ルーズリーフ(A6・罫線/方眼/無地/ポケット/厚紙混合セット)
・ルーズリーフバインダー(A6・革)
「コーラに加えてオレンジジュース。そしてついにきたぞチョコレート!」
「クッキーは、今世だとすごいぜいたく品なのはわかるのに、記憶のせいで安い味としか思えないのがお辛い」
お酒を楽しむ歳ではないので、サンプル購入の炭酸水はオレンジジュースを割るのに使った。
クッキーは、最悪オルガたちの口に放り込めばいいだろう。
「ルーズリーフはいいですね。これまでのメモ帳の上位互換です」
☆
ヨッシーの【個人倉庫】もLv.2、容量は各辺50cmの立方体。12万5000立方cmとなった。
「タイミング的に霊格レベルが3になったのと連動だと思う」
もう連動とみなしてよさそうという空気。
「増え方がえぐいな。前が1リットルから125リットルって、風呂桶半分かよ」
「1辺の長さだと、最初5cmが10cm、そして50cmですから、次は100cm?」
とりあえずミカン箱(10kg)くらいの木箱を用意した。
非常用として、水とシリアルバー(チョコ味)、ポテチとチョコレート、ついでに不良在庫の砂糖瓶もまとめて詰めて収納しておく。
「自分と同じく、入れ物単位で扱えるのはいいな」
「そんかし、箱の中のコレみたいなピックアップはできないし、そもそも何を入れたのか覚えてないと取り出せない」
多分、石ころとか土くれとか、忘れたまま放置されているはずだという。
「メモを……下手に残して見られたら困るな」
具体的には砂糖とかね。
「だから、箱単位、コンテナ化はすげぇアリだと思うってばよ」
むしろ容量が拡大するほどに、コンテナ化しないと扱いきれなくなるだろうと三人の意見も一致した。
☆
セバス先生の魔法使いTaiプロジェクトは迷走中。
「どすこい的な発勁ぶっぱなせるようになりました。表示も【錬気術Lv.2】に」
「○動拳や○めはめ波への道は遠いぜ」
「ギャ○ック砲やド○オーラみたいにぶっぱなしたい」
射程は素敵だからね。わかります。
セバスの【魔力感知】によれば、全員の発勁は無属性魔力の塊。
「無属性魔法【力弾】のでかいやつとみるべきなのかなあ?」
以前に、ヨッシーは無と闇、ラッドは無に風がちょっと混じる感じで、それが適性属性だろうと推測していた。
「ヨッシーは闇属性で、ラッドは風属性で、同じように発勁を放てるようになれば、これは魔法だと言い切れるかな」
「その属性ってのがよくわからんのよな」
「一般通過魔法使いへの方向性を見失った感はある」
どうして感はあるものの、効果は出ているのでこれはこれでヨシ!しておく。
パーティに魔術士あるいは魔法使いを増やしたいがゆえのセバスの行動については、意図は理解するとしながらもバッサリ。
「ユイに教えるだけじゃなく、ジュスティーヌとマリエルにも粉かけて、それでヴィオラに怒られるって」
「『すけこまし』評価は、残念でもなく当然!」
「せやけど工藤……」
「俺は工藤じゃないし」
「4股とはやりますねぇ」
「粉はともかく股はかけてねぇ!」
パーティの全員に寝起きの瞑想魔力操作を勧めてみる。
「半年くらいで【錬気術Lv.1】が【自己認識】に表示されたから、無駄にはならんぞ」
「最初はピクッとしか動かなかったものが、いまは結構ぐいんぐいん」
「いや、僕はその魔力認識そのものができないので……」
野生の魔法使いを目指し謎のスキルを得たラッドとヨッシーのセールストークだが、残念ながらクリスは論外。
「ふぅん。ま、気が向いたらやってみるわ」
「気にかけますが、私、朝に弱くて」
「わたしもー」
「魔力操作なのに【錬気術】なんですね。そこが不思議です」
ごめんねユイちゃん、深い意味はないんだ。
加護もそうだけど、技能の名称って、担当によってまちまちなの。
波動拳 『ストリートファイター』シリーズ(カプコン)
かめはめ波、ギャリック砲 『ドラゴンボール』(鳥山明氏)
ドルオーラ 『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(堀井雄二氏、三条陸氏、稲田浩司氏)
YAMA波 『初音ミク』他 (Vocaloid)




