5-05.1年次の春季のこと②14号パーティ
春季の学院パーティ編成は第9回から第12回までが行われ、14号パーティにも各回1人が配された。
14号パーティの運営方針はこれまで通りだが、春季は4回とも1泊狩りに反対されなかった。
むしろノウハウを盗んでやるくらいの気概でもってご参加なされたお方が1名。
日程を消化して地上生還時には虚ろな目をしておられた。
しかし、実体験は貴重な財産である。
次の編成回ではパーティメンバー相手に武勇伝を大いに語り、宿泊こそしなかったが実際に最奥拠点まで行ったそうだ。
学院の思惑通りに、ノウハウの拡散は進んでいる。
14号パーティの人数調整は事前の話し合いの通り。
前半は、パーティ内の霊格レベルの均衡化をはかるためユイとクリスが不参加。
後半は、周期的に女の子の日があやしいということでヴィオラとマリエルが交互にぬけ、ユイも引き続き講座と訓練集中とつぶやいて不参加。
いずれもユイが不参加のため、光魔術【照光】による明かりの提供がなくなり、嘆きの声が一部のマリエル嬢から漏れたりもした。
「慣れって怖い。松明やランタンじゃ満足できない身体になってるの」
明るさも、照らす範囲も別物だからね。
転生三人組がメンバーに明かした秘密のなかで、セバスは【生活魔法】はハズレじゃないと力説した。
そのため自重、隠蔽する必要性が薄くなり、セバスもパーティ活動中の魔法解禁となった。
でも、セバスもユイも地道にMPが増えているとはいえ、常に使えるほどでもない。
攻撃に魔力を回さず、治癒分の余力を残したうえで魔法・魔術の明かりを混ぜていた。
その分の照明ロスを声をあげて嘆いたのがマリエルで、声をあげずに不便を感じたのがその他メンバー。
とはいえ、問題というか不満はそのくらい。
14号パーティは春季の活動を無難にこなした。
☆
学院14号パーティとしてのノルマ活動外では、冬季の末にジュスティーヌが提案した第二層への準備を進めた。
確かに安全重視の方針により、今はまだ第一層でパーティ全体の底上げ期間だと結論した。
しかし、第二層への挑戦は遅かれ早かれであり、各自およびパーティとしての対策が必要なことは自明。
まずは装備面。
転生三人組は小楯を購入した。
ベルトで腕に固定するか、固定せず握りを掴んで独立しても扱える。
「役割的には俺とラッドで前衛張るしかないんだが、いきなり大盾は無理だろ」
「ていうか、買えない」
実際に使ってみた感触は良好。
腕に固定して使うと、手の甲あたりまでをカバーする追加装甲になる。しかも動作をあまり邪魔しない。
手で持って扱うには、受け流し・そらす技術を学ぶために盾術に手を伸ばす必要がありそう。
「海軍としては2枚を導入、両腕に装備もいいかなと考える」
「陸軍としては海軍の提案に賛成である」
「しかし内閣には予算がない」
現状の金銭的収入は半人前レベルだからね。余裕はない。
この小楯については、ジュスティーヌ以外も導入か導入を検討。
腕固定なら盾術のような技術が不要で、雑に防御できるのがいい。
ジュスティーヌは両手で剣を扱い、防御にも剣を用いるため片手がふさがるのを嫌った。
「私は素直に籠手を買います」
革の長手袋に追加で硬革を縫い付けて防御力を高めているもの。一部に金属鋲もついている。
殴られるとすごく痛そうな籠手だ。
布一枚でコウモリの引っかきや噛みつきをほぼ無効化できることからわかるように、布や革の1枚でも防御効果はバカにできない。
上着として羽織る袖の短い革のジャケットと、革の腿当てと腰巻も導入。
腿当てはズボンの上から複数のベルトで固定、腿部分の前面を覆う。
肘当て・膝当て・脛当てなどと同様に、部分部分を強化していこうね系の防具である。
腰巻は腰に巻くマント的なもの。
地味な防御効果に加え、地べたに座った時のでこぼこ感やひんやり感を地味に和らげてくれる。
最高級品はマタギも愛用のクマの毛皮だそうな。
防水性能が高いとか。
もちろんお値段もお高い、高嶺の花というヤツだ。
お金に余裕がある子はマントもあつらえた。
これは防具でもあるが、寝具でもある。マットや毛布を持ち運ぶのは本当に手間なので、マントにくるまって仮眠が駆け出し探索者の宿泊スタイル。
「次は胸当てか胴巻きか。あるいは武器が先か」
「自作フレイルも何代目でしたっけ。先端の方を鉄製にするのが次の目標?」
三人はいわゆるモーニングスター。トゲトゲ鉄球と鎖を注文するか悩んでいる。
「だがしかし! カネがねえ」
「それなあ」
探索者稼業あるある。
いくら稼いでも装備に消える自転車操業ステージが続く。
☆
第二層挑戦への準備には、情報面も欠かせない。
ジュスティーヌは騎士科で蓄積されている研究、レベル2からの第二層挑戦の内容を具体的に調べて発表した。
「第二層『ハンティングランド』は、森林が点在する草原マップです」
経験則から導かれた推奨レベルは2から8。
第一層と同じく約10km四方の空間で、森林が点在する草原には偽物の空があり、地上の昼夜と連動している。
薬草が採取できるとか水源があるとかの情報は軽く流す。
採取で小銭は稼げるけれど、学院生、特に騎士科3年卒のエリートを目指すジュスティーヌは、レベルに結びつかない行為に寄り道する余裕がない。
「まずは草原部でのラビットとウルフ。索敵遭遇戦でレベル4まで」
角兎と草原狼。
前者は革の一枚くらいなら貫通してくる突撃が、後者は群れて囲ってくる連携プレイが特徴だそうだ。
他にモグラもいるが、地表で遭遇した時は雑魚。
巣穴にこもられると倒しにくく、さして美味しくもないので半ば放置されている。
「レベル4あたりから森林部に。森林部で問題なく狩れるようでしたらレベル5からでも第三層へ」
主に森林部に出現する魔物は森蜂、吊るし蜘蛛、そして月輪熊の三種。
特に森蜂は群れやすい。
「『なかまをよぶ』っぽいな」
「そういうスキルがあるのかもしれないわね」
なお、ダンジョンの掃除屋さんことスカベンジスライムはそこらへんにいる。
☆
「聞いた感じ、単体で強いヤツではなく、群れる魔物を基準にしているのかな」
「あたしたちはパーティだもの」
メンバー各自が群れの1匹1匹に対処できないようでは、同数以上に群れた魔物に勝てない。
「パーティの連携で、どこまで格上に通用するか」
「まるで歯が立たないということではないから、ロードマップが成立していると考えます」
低層でひいこらやっている時期の1レベルの差はかなり大きい。
継戦能力などの総合力として、レベル2はレベル1のほぼ倍、レベル3だと4倍弱とまで評価されている。
これはMP量を見ても明らかで、レベル1が10に対し、レベル2が20、3で36、4で57、5で80、6で96。
MP残量の把握は文字通りの生命線ゆえに、魔術界隈にはデータが残っている。
伸び率が漸減していくのは何故かなど、定番の議論ネタでもある。
さておき。
格上は、確かに強敵だ。
一般には、霊格レベルが高いほどスキルレベルも高い。単純に強いと判断して間違いはない。
ジャイアントキリングとは、さまざまな条件がかみ合って初めて達成される偉業だからこそ称えられるわけだ。
しかし、スキルには相性もある。
魔物の形状や行動の特徴は、つくべき隙、弱点に化けることもある。
数の力も無視できない。
レベル1ななりたて探索者で棍棒・普段着装備でも、数匹程度なら雑魚扱いできる第一層のコウモリでさえ、数で押し寄せれば人を殺せることは実証済みだ。
「例えばレベル5が6人で、レベル8の1人を囲んでボコれるかって話だな」
「素人考えで恐縮ですが、通用しそうに思えますね」
「これがレベル4が6人で、レベル8の1人を、となると悩みだすんだろ、知ってる」
「パーティの力は、単純な加算じゃないからなあ」
先人たちの越えてきた道だ。勝算はあるのだろう。
これ以上は実際にやってみないとわからないと結論付ける。
「ありがたいことに、当面はこうしたデータに基づき、自分たちを最適化してダンジョンに潜れます」
「それな」
アクヤ・ダンジョンは、最下層の第十層までのデータがある。
まだ取得していないが、各階層の魔物について探索科の単位講座で学ぶことができる。
むろん、深いところほどデータの信憑性や抜け漏れには覚悟が必要だ。
三人の調べた範囲で見つかっていないだけ、あるいは公開されていないか秘匿されているだけで、ある程度までの攻略データもどこかにはあるだろう。
明確なデータではなくとも、伝説・伝承といった参考資料もある。
ただいずれは、予見できない場所や魔物と相対することもあるだろう。
その時までに対策を考えつくか、その時になって初めて対策できるものなのか。わからない。
けどまあ、やるしかない。
レベル100というのはそういう領域だから。




