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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
5章.学院編Ⅲ・現在開示可能な情報

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5-04.1年次の春季のこと①周辺事情



 春分祭週には実家に顔を出したり祭りを楽しんだり。

 たまの多少の贅沢だと、小銭を握って屋台制覇に挑んで敗北したり。


 学院探索科に、春季からの新入生はいなかった。


 これは定員枠が空かなかったためで、秋季の死亡事案以降、慎重な行動が増えたのかもしれない。


 といっても、例年、春季・夏季の新入生はほぼいない。

 春季は半年遅れになるし、夏季はよほどの事情がないなら秋の新学期を待つからだ。



   ☆



 春季には、予想通りマックス・オルガ組連合が拠点1泊狩りを始めた。


 段取り含め、やり方は14号パーティのものを参考にしている。


 まず、編成がされた週の風の曜日に、メンバー同士のすり合わせと下見を兼ねたアタック。


 朝から夕までの6~8時間目安で、第一層最奥の拠点キャンプ場への往復を行う。

 行きは幹線2時間弱、休憩後、う回路コースで狩りをしながら戻る行程。


 これで問題がなければ、闇の曜日の午後から無の曜日にかけた拠点1泊狩りを挙行。


 うん。14号パーティとほぼ同じ。

 なので行きは一緒だったりする。


 拠点到着後のルート選択などは早い者勝ちだが、「無理はするなよ」と声を掛け合う仲なので「どっち方面?」を聞いてエリア被りを避ける。


 パーティ内でまずオルガたちが、続いてマックスもレベルが上がったそうだ。

 ただ、標準パーティ6人枠の残り2人が決まらないとこぼしている。


「将来に向け魔術士が1人は欲しいのだが、事情はどこのパーティも一緒でね」


 低レベル魔術士は置物とも言われるが、レベルさえあがれば魔術士らしい仕事ができるようになっていく。


 将来価値を見こして魔術士をパーティに囲いこみたいという願うリーダーたち。

 逆に言うと、その程度の見通しも持てない者はリーダーとして脱落していく。


 だが、魔術科1年次20数名を、約30パーティで取り合いゆえに競争は激しい。


「拠点1泊狩りの成功と、すでにレベル2というのが私たちの売り文句なのだが」

「それですり寄ってきたのが例のリスト入りのヤツなんだよなあ」


 人材リストは常に更新中。

 転生三人組とマックス・オルガ組連合の間でのすり合わせも行っているため、掲載者のマイナス方向の評価には一定の信頼がおける。


「自分たちは現メンバーに魔術科がいるせいか、編成での出会いもないぜ」


 ただし、ユイは癒し手(ヒーラー)だし、風と闇のダブル属性魔術士なヴィオラも純粋な攻撃魔術士ではない。


 攻撃に使える魔術はあるが、風属性も闇属性も比較的補助よりが特徴。

 いずれにしても低レベルな現時点ではMP問題で魔術の出番はないものとする。


 編成での新たな出会いを期待できない以上はと、「魔力を使う技があるって、魔力の体外放出できるってことですよね」とジュスティーヌを魔法使いTaiプロジェクトに誘ったり。

 「ポーション製作に魔力を使うって(以下同じ)」とマリエルを口説いたり。


 当該交渉担当のセバスが『すけこまし』と呼ばれているが、残念でもなく当然。



   ☆



 第六週の中休みも、いつものように帰省した。


 ラッドの父親の勤務するマルク工房は、毎回の手土産である手羽先の礼だと、三人に何かと支援をしてくれている。

 しかしこれ以上、大物家具をいただいても困る。


 いかに謝絶するか。

 今回、一時的に物を置くためのテーブルやブーツ立て、ポールハンガーなど、先回りしてアレがほしいなぁと言っておくことで、大物回避に成功。


「こんなモンでいいのか? 何か困ってないか?」

「これまでがおかげ様すぎるっす。困ったときはまた相談させてくださいっす」


 さすがにウッドデッキは結構な無理をしたようだし、マルク親方もそれで収まったという。


 セバスは、実家で『すけこまし』をネタにされお冠。


「てか、なんで知ってるの?」

「そりゃあな、俺のパーティには探索科のヤツもいる。俺の弟だって知ってりゃ、なんとなく気にするものだろ」


 ベンジャミン兄さん曰く、食堂での会話は、気にして注目していればわりと筒抜けなのだ。


 養護院に顔を出したヨッシーは、手羽先の人扱い。


「院長が、春の【祝福の儀】を受けて、探索者になるって言い出したヤツの面倒見てくれないかって」

「読み書き計算はできるんですよね?」


 面倒を見るにもいろいろある。

 オルガたち同様に探索科に放り込めというのであれば、学院に入るための最低限の教養として、読み書き計算が要求される。


「あ、自分とこも1人いる。探索科志望。ただそいつ読み書きできないから、春季中に計算も込みでできるようになったらなって言ってある」


 マルク工房コミュニティに、ラッドにならおうという後輩がいるらしい。


「……夏の【祝福の儀】でも出ますかね」

「でるな」

「でないわけがない」


 ラッドとヨッシーは、それぞれの属していたコミュニティの成功事例、輝ける星だからね。


 脳を焼かれた、とまでは言わないけれど、自分も同じようにやればいい、自分にだってできると考える子はでてくる。

 マルク工房コミュニティなら、親が後押しするまである。


「人材として囲い込みまで考えるなら、僕たちがやるべきは恩を売りつけ……支援ですね」

「本音は身内だけにしろよー」


 単なる探索者なのか、学院探索科を望むのかの確認。

 入学を望むなら、親御さんふくめ説明と準備。


 どっちにしろ探索者組合に登録してのダンジョン活動をサポート。

 学費等もコミコミで生活費、毎季クオルタ銀貨3枚以上を稼ぎだせるよう、狩りの教導。


「この中休み中だと、動けるのは最後の無の曜日だけか」

「第八週と第十週の無の曜日も、なんとか」

「ていうか、季末休業に入っても僕たちが空けられるのは無の曜日だけかも?」


 はっきり休日と設定している日がそこしかないのだ。



   ☆



 中休み最後の日になる第六週の無の曜日、三人はマルク工房と養護院を訪問した。


 先ぶれもなにもないので、工房では親方、養護院では院長かそれに次ぐ立場の人と、簡単にでも話ができればいいなという程度。


 なお、ラッドにしろヨッシーにしろ、セバスにスカウトされたというカバーストーリーがあるため、お話をするのはセバスになる。


「なるほど。ただ学院に入りたい言うても入れるわけやないのは道理や」


 最低限、自分の名前を書けて、暗算で足し算引き算ができる程度の読み書き計算能力が必須。

 マルク親方に、志願者には先日ラッドからも言い含めてあると伝えておく。


「細かいことだと、裏書と言いますか、保証人が必要な場合もあるんですが、これは親方にお願いするしかないかと」

「そりゃあ確かに。オレの目でダメなら論外っちゅうことやな」


 そのうえで、探索者としてのダンジョン活動、できれば学費等を自前で稼げるように。

 どこまでサポートできるかは、僕たちにもまだわからないと言っておく。


「学費以外にもカネは必要だもんなあ。それとは別に探索者っちゅう稼業に慣れとく必要もあるわけか」


 工房コミュニティから学院送りなら、ラッド同様に学費・寮費は親がなんとかするだろう。

 だが、それはそれとして、当人が稼いで悪いということもない。


「はい。ただ、あえて言えば探索者なんてしょせんはゴロツキ、チンピラです」

後ろ盾(バック)のないガキなんぞ、どうなるかやなあ」


 セバスたちのときは、ベン兄さんという学院のエンブレムを背負った存在がアピールしてくれた。

 しかし、現状のセバスたちでは、成人一歩手前だった当時のベン兄さんほどのおどしはきかない。


 学院生アピールはできるが、それでどれだけ後進たちを護れるかは不明である。


「なので、最低でも3人以上で固まって行動してほしいんです」

「そして、最悪の事態も覚悟しておくことっす。これは本人も、家族も」

「俺の出てきた養護院にも同じこと説明に行くんだけど、あっちの希望者とまとまって行動するようにできないかな」


 マルク親方は頭を下げた。


「すまん。こりゃあ大人の考えることだ。おまえ様方に押し付ける話じゃあねえ」


 俺も同行するというので、マルク親方を連れて養護院に行き、院長相手に同じ説明を繰り返す。


「つうわけでよぉ、院長先生。ガキどもの教育と行動組ぃ(グループ)作らせるのは俺らがやるべきことだと思うのよ」

「いやはやまさに」


 武運・悪運拙く、ガキがくたばった時のケツ拭くのも大人の責任だと言われ、やや気色ばんだ院長だったがぐっとこらえで立てなおす。

 本来なら謝礼が必要なところ、縁だからと手伝ってもらえるなんてありがてぇなと言われては頷くしかできない。


 まず要求をしてみて、それから交渉というスタイルの院長だが、ヨッシーたちの厚意に頼っている自覚はある。

 現にオルガたちなど、養護院を出て行ったあとは一度も顔を出していない。


 まあオルガたちは、啖呵切ったから顔を出しにくいのだが、それは彼らの事情。


「だいたい隔週で、無の曜日を都合付けてくださるってんだ」


 前日にメッセンジャーを走らせて三人の確認をとり、翌日の朝、志願者を探索者組合前の広場に集合させる。

 探索者登録とダンジョン体験、ポーター依頼に狩り方なんかを、よろしくお願いしますということで話がまとまった。


 夏の【祝福の儀】の後も視野に入れると、何回かは『面倒を見る』ことになるだろう。


 秋の【祝福の儀】以降?

 うん、まあ、そうね。その時に考えよう。




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