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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
5章.学院編Ⅲ・現在開示可能な情報

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5-02.現在開示可能な情報



 第十二週の前半で狩り。


 週の後半、風の曜日に一般寮の相談・会議用の個室に14号パーティのメンバーが集まった。


 予約制であり、どこで誰に見られ、聞かれているかわからない食堂とちがって、『ここだけの話』をできる場だ。

 同様の個室はカフェテラスにもあるが、そちらは予約以外にも利用料が必要となる。


「今日は私のほうで部屋とお茶うけを用意いたしました」


 ジュスティーヌが仕切り、ヴィオラが配膳する。

 雑味のないハーブティーに、素朴なクッキー。


 今世基準だと、ずいぶんいいもの出してくれたなってなもんである。

 証拠に、ユイちゃんハムハムしている。


「やっぱ個室はいいなあ。食堂だとどうしても周りが気になる」

「探索科寮にもあればいいのに」

「女子は自室に呼べませんからねえ」


 男子寮は女子禁制。女子寮は男子禁制。

 探索科寮も一般寮も変わらない鉄の掟である。


 10分ほどティータイムを楽しんだところで、ジュスティーヌがカップを置いて切り出した。



   ☆



「ラッドさん、ヨッシーさん、セバスさん、率直におうかがいします。

 ユイさん、そしてクリスさんマリエルさんもレベル3になりましたが、みなさんはレベル2なのですね?」


 ド直球である。

 クリスとマリエルは、三人の予想通りこの第十二週の狩りでレベルアップ。


「……そうだな」


「えっと、それっておかしいよね? だってわたしたちより早くからダンジョンに潜っていて、その、狩りだってわたしたちよりも多くこなしているはずだよね」

「僕たちが早いのではなく、セブたちが遅い。そう推測している」


 やはり、気が付くよなあと転生三人組は納得顔。


「あんたたちに、なにかワケがあるってことなのよね」

「お話、いただけないことなのでしょうか」


 レベルアップの差に気が付かれることは予想していた。

 よって対策も考えてはいた。


 三人は最終確認の目くばせを交わし、ラッドが代表で口を開いた。


「どこまで、話していいものか……」


 このメンバーは、信用できるかできないか。

 このメンバーを、信頼するのかしないのか。


 今現在、三人の中で最も危険な立場にあると自覚しているラッドは逡巡で口ごもる。


「神殿で誓約でも立ててこようか。長くはない付き合いだけど、僕はセブたちの悪いようにはしないさ」


 地獄への道は善意で舗装されている、とも言いますけどね。


「いまさら離れられないのぉ。身体が、身体がレベルアップを求めているのぉ」


「こいつ、目標に達した瞬間に裏切りそうなこと言ってるぞ」

「そんなー」


 ラッドとクリスのシリアス空気を、マリエルがぶち壊してくださいました。


「何か、秘密があるんですね。私、気になります」

「ねえティナ、ここは嘘でも信じてくださいって言う場面よ。もちろんあたしなら信用しないけど」


 ジュスティーヌとヴィオラの関係性は、だいぶ軟化している模様。


 それはそれとして、自分から自分は信用できないと言っちゃう人を信用するとそれは信用できないことを信用するということになるのでしょうか。


 そんな哲学的言葉遊びとは関係ないユイちゃんは、ユイちゃんしています。


「あ、えっと、うーん。秘密なら守りますから、言っちゃっても大丈夫なんじゃないかなあって思います」



   ☆



「……みんなのことを信用し信頼する。今の段階で話せること、現在開示可能な情報を伝える」


 ラッドが決断を下したので、ヨッシー、セバスが引き継ぐ。


「えーと、俺たち【祝福の儀】で、一種の神託みたいなもの……というか、あれって神託扱いでいいのか?」

「神託そのものじゃないし、よくて『神託みたいなもの』でしょう?」


 三人とユイちゃん以外のほほが引き攣る。ユイちゃんは目を大きく見開く驚き顔。


「嘘じゃあないよな?」

「嘘ではないですね」


 神域的な異界の『白い部屋』に、この世界の管理者の配下を名乗る『まばゆい人影』から『神託オラクルシステムのちょっとした応用』でび出されて告げられたことだから。

 神託みたいなもので嘘はない。


「それって、嘘ではないにしても真実じゃないってことじゃない」

「どう表現したものかってなあ。それに、現在開示可能な情報って言ってるだろ。全部は無理なの」

「あ、はい」


 自分たち三人は、【祝福の儀】で、望んだ加護ギフトを得た。

 望みがかなえられた対価として、霊格が徴収されている。


 どちらも事実だ。

 望みの中身が加護ギフトの融通だけじゃないことを言っていないだけ。


「神託……みたいなもの、それって女神様……みたいなものとの交信ってことで……」

「いや、そんなの、ちょっと、信じがたいというか」


 神託、女神様からお言葉を直接授かるということの意味あい、重要性を知っていると、冗談でも口にできることではない。


 マリエルの理性は理解を拒んでいる。



   ☆



「でも、望んだギフトがハズレな【生活魔法】って……冗談だよね?」

「僕は、【生活魔法】をハズレだとは思っていない」


 納得いかないとクリス。


「いやいやだって、【生活魔法】だよ? 日常でちょっと便利なだけのハズレ加護ギフト!」

「ねえあんた、【生活魔法】使いが何できるのよ」


 セバスはわざとらしく肩をすくめ、ヤレヤレと言いながら立ち上がった。


「【光魔法かっこいいポーズ】」

「うおっまぶしっ」


 題して『躍動する埴輪』と名付けられた(命名:ヨッシー)かっこいいポーズをとるセバスの全身がまばゆく輝く光に包まれている。


 突然の、そして神聖ささえ感じられるかもしれない光の波動を浴びて、クリスはマリエルはヴィオラは浄化されてしまう。


 消費MP驚異の1。

 かっこいいポーズをたもつ限り、謎の光が輝き続ける超ハイパフォーマンス光源……にもなりうる可能性を秘めた恐るべき魔法だ。


 実用性は考えてはいけない。

 試してみたら一発で成功し、ラッドとヨッシーにゲラゲラ笑われた、セバス必殺の宴会芸である。


「お、おおおお!」


 ジュスティーヌ、ワクテカ状態。

 自身も『躍動する埴輪』(命名:ヨッシー)ポーズを取ってしまうくらい感動なされている。


「魔法は、イメージ! イメージは、無限大!」

「「無限! 無限!」」

「「「あ、はい」」」


 熱い説得により、【生活魔法】がハズレなどではないことをご理解いただけたようで何よりです。


 勢いで流しただけ?

 各人が納得しているかどうかは知りません。


 というか、加護ギフトにハズレなんてないんですよ。

 女神様からの恩恵ギフトをハズレだなんて、不信心にもほどがあるって、それ界隈ではよく言われてることなんで。


 なおユイちゃんは驚いていない。


「だってセバスさん、7属性全部使えるんですよ。

 わたしだって魔術科の魔術士です。それがどれだけ異常なことなのか、今はわかります」


 しかも、光魔術士であるユイの【照光ライト】同等以上の、光魔法【小光プチ・ライト】(応用版)を使う姿も見ている。

 【生活魔法】がハズレ加護ギフトのわけないじゃない、と。


「あたし『ダブル』なのにぃ」


 ヴィオラは風属性と闇属性の2系統の魔術を扱える。

 その才能に与えられる称号が『ダブル』。自負心だって相応にあっただろう。


 で、目の前に7属性使いがいます。

 いうなら『セプタプル』でしょうか。魔術じゃないよ魔法だよで言語を変えて『セプテット』でもいいかな?


 ヴィオラはテーブルに顎とほほを乗せて溶けてしまった。


 なお、この【光魔法かっこいいポーズ】を発動させるかっこいいポーズの研究にいそしむセバスのせいで、ラッドやヨッシーにも謎のポージング現象が伝播したことは余談である。


 さらに余談だが、この経験が元になり、発動句ではなく発動モーションという、なんちゃって無詠唱技を編み出すに至るのだから世の中わからないものである。



   ☆



「つまり、ラッドさんの【通信販売】も、ヨッシーさんの【個人倉庫】も、ハズレじゃないということですよね?」

「いや、そんなの、ちょっと、信じがたいというか」


 マリエルの理性は理解を拒むことで自己(アイデンティティ)防衛をはかっている。


 しかし、ユイちゃんは、おバカの子ではないのです。

 常識にとらわれて思考停止しているマリエルとは違うのです。


 斜め上に行く転生三人組に慣れて、そういう人たちなのだと受け入れてしまえば、一つひとつのことには思考停止に陥ることなく対応できる子なのです。


 クリスもまた、事実は事実として受け入れなければと、努めて冷静であろうとしている。


「……ハズレ加護ギフトではないから、英雄級を、レベル100を目指すのだと?」

「大雑把に言えばそういうこと」


 因果の順番的にはそうと言えなくもない。

 加護ギフトを含めたいろいろな願いをかなえてもらった対価を払うために、レベル100を達成しないといけないのだから。




【光魔法かっこいいポーズ】

 衛藤ヒロユキ氏の『魔法陣グルグル』に出てくる光魔法。かっこいい。


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― 新着の感想 ―
かっこいいポーズは浮かぶ事しかできない(その場で)けど、修行段階で使えた光魔法の空中浮遊なら、自由自在に移動出来たから、ある意味劣化したな(とアニメ見た時思ってた(ただし、進化系パーティ技の爺幻想(ジ…
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