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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
4章.学院編Ⅱ・半固定14号パーティ

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4-03.半固定14号パーティ



 2泊3日の狩りを終えた翌日、闇の曜日。


 疲労を抜くための休養日だが、洗濯や消耗品の買い出し、ブーツの手入れなど細々とやることは多い。


 事務棟の売店に買い出しついでに、まずは探索者組合支部で個人口座から来季分の学費・寮費納入手続きを済ませる。

 ヨッシーだけでなく、親が出すセバスとラッドも、払っておけば安心だね精神。


 探索者組合だけでなく、大手の同業者組合ギルドはだいたいどこも組合員向けの預金や決済といった銀行機能を持つ。


 本来なら見習い以下の木札級でも、学院支部で個人口座を開けるのは学院生の特権だ。


 支払いを優先したので装備更新は先送り。


 早いうちに革の帽子を手に入れて、スカーフを首に回したい。

 いや、膝当て・肘当てもあれば嬉しいと、欲しいものをあげていけばきりはない。


 でもそれ、今すぐに要りますかと問われると明確なNO。


「下着と普段着を買い足さんとな。訓練後の汗がキツイ」

「着た切り雀ジョートーな社会ですけど、そこまで擬態しなくてもイイヨネ?」


 布地そのものがお高いので衣類のお値段もお察し。

 しかし、前世記憶から清潔の大切さと、なにより不快感をがまんできないのでイイヨということになっている。


 季節的に寒くなるので、学院内の普段着にしている貫頭衣ではなく、狩りのときの長袖のシャツとズボンを調達。


 ところで、近くにいても臭わないという驚きの清潔感をそなえる転生三人組、かかわった女子からの評価は意外と高かったりする。



   ☆



 探索科寮に戻ったところ、食堂でマリエルとクリスが待っていた。


「呼び出しを頼んだら、渡り廊下の名札、外出になってたって」

「帰ってくるのを待たせてもらったよ」


 荷物置いてくると一度自室に寄り、いつものお茶と、ユイに好評だった砕いたシリアルバーを用意する。


「う、苦い……けど上質な甘さ。この黒いのは、薬草煮詰めと蜂蜜のタレかな」

「脂ぎっていない保存食は珍しいわね」


 ダンジョン深く潜る探索者にとって、保存食は友ともいえる存在だ。

 長年の研究、食への情熱、便利さの追求が、さまざまなものを生み出している。


 押し麦やドライフルーツを麦粉と蜂蜜と脂で固めたシリアルも、お値段は張るが売店でも扱っている。


「ごちそうさま。いいね、またわけて欲しいよ」

「蜂蜜使うとお値段がねー。第一層程度だと高級品すぎると思うけど、だからこそ、なのよねえ」


 マリエルとクリスは、納得したように頷きあった。


「セブたちが、本気で深層を目指していることはよくわかった」

「英雄級でしたっけ。掲げる目標が大きいだけではなく、筋道をたてて考えているのね」

「そ、そうですね」


 ただのお茶うけをまさかの深読み。

 ユイが何も言わずパクパクしたので油断していた転生三人組は少々挙動不審になった。


「本気のセブたちからすれば、僕たちは邪道なのかもしれないけれど、少し、話を聞いてほしい」

「お、おうさ」


 いや、チョコレートの原料であるカカオは、不老長寿や疲労回復、滋養強壮を謳うお薬だったそうなので、薬草扱いもウソではないと、上の空であったラッドが承諾してしまう。


 現に、老化の原因でもある活性酸素を除去するポリフェノール、大脳を刺激するテオブロミン、食物繊維、ビタミン、ミネラルと、健康成分盛り盛りではある。

 チョコはおろか原料のカカオでさえ、今世で存在するかどうか知らないけれど。


「本題の前に、第三回の学院パーティ編成箱に名前札を入れる期限が今日だけど、もう済ませちゃった?」

「あ、いや、まだだな」

「固定メンバー希望の子が、持ってくるか待っているところです」


 2泊3日の狩りを経て、ユイにまだその気があれば秋季の後半2回を固定してみる約束。

 マリエルもクリスも顔をしかめた。


 なおユイちゃんは、お昼ごろまで疲労からくる快眠を貪っていた模様。

 同室の先輩方も「休日だしね」とこれをスルー。優しさが光ります。



   ☆



「では僕から。誰かに先を越されたようだけれど、僕もセブたちのパーティに固定メンバーとして入りたい」


 家政科で高級使用人課程のクリスの卒院要件レベルは8。

 しかし、家政科では学院パーティ編成への配慮はせず、講座履修との兼ね合いに無理がでる。


 これは当然の話で、家政科の主流は一般使用人を目指す女の子。

 男子で、しかも執事という高級使用人を目指すクリスのほうが少数派であり、そちらを軸にカリキュラムを組むわけにはいかない事情がある。


 そしてまた、探索科などよりターゲットレベルが低いことが災いし、途中で抜ける腰掛け扱いは御免だと、固定パーティに入りにくい。


 むろん、過去何人も同じ条件をクリアしているので、クリスだってできないわけではないはずだ。


「ここまでは僕の事情で都合。これだけではセブたちに負担、損しかない」


 そこで、と。


「クラン運営に、執事あるいは家令は必要ではないかな」

「……なるほど」


 実際、条件をクリアして卒院しても、執事に至れる保証はない。

 そこそこのお屋敷で複数いる従僕の一人には、いずれはなれるだろう。だが執事は格が違う。


「クラン設立と英雄級探索者を目指す話、冷静に考えればバカげた話だとも思う」

「それなー、具体的にはレベル100を目標にしているぞ」

「えっ、それはフカシすぎじゃない?」


 思わずマリエルが口をはさむが、クリスは手の一振りで黙らせた。


「そのあたりの話は、同じ家政科に行くはずだったセブが急に探索科に進路変更した頃にさんざんした」

「殴られるとは思わなかった」


 いや殴るだろ。正気を失ったとしか思えなかったしとクリスが言えば、ラッドとヨッシーも納得するしかない。


 どれだけ無茶な、誇大妄想な話なのか。

 今更ながら、せめてレベル80になりませんかと転生担当にお願い(クレーム)を入れたいと思わないでもない三人である。


「僕は現実主義者なんだ。たとえ目標に届かなくとも、最初から低い目標しか見ていないよりは高みに行くだろう」

「一般論としてはそうですね」


「勤め先が飛躍するときに、それを支えるスタッフであることは喜ばしいことだと、僕は思う」


 既存のお屋敷で執事になれないのなら?

 そうだね、新興勢力のビッグウェーブにのるのも手だよね。



   ☆



 薬剤科マリエルの話もパーティへの参加希望。

 ただし、交代要員としてプールメンバーに入れないかという申し出だった。


 一般寮は探索科寮と違い、一つの部屋に極力年次をずらした割り振りをする。

 新入生にとっては、学院生活のあれこれを同室の先輩たちに相談できる環境となる。


「固定パーティに入るのは厳しいよねと相談したの」


 すると、発想を変えて、ほどほどにレベル上げできればいいのよねと。

 いいパーティがあるのなら、交代要員枠を掴んでしまえと。


「女の子には、女の子の日があるからね」

「なるほど」


 転生三人組パーティにはまだ固定の女の子メンバーはいないが、それも好都合。

 いないなら、レギュラーになれるということじゃないですか。


 ユイの話は伝わっていなかったので、そう考えられた。


「この先、またクs……カs……ハズレパーティに混ぜられる危険のある運任せは怖い。プールメンバーで固定を希望します」


 そしてマリエルが三人に提供できるメリット。

 いわば運営側にとっても、代打や補欠的な意味合いでシフト組みが楽になる交代要員ポジは大前提として。


「空手形になるけれど、将来的にポーションを供給できる薬剤師とのコネってどう?」

「マリエルもクリス同様、将来性を売りにすると」


 三人は唸り声をあげた。


「どっちも踏み倒しがなあ」

「そこは信用の問題ですしねえ」


 マリエルはともかく、クリスが、例えば3年次途中で要件レベルに届いたので抜けますされるのも困る。


「いっそ10レベル、いや卒院までつきあうなら? レベルなんてナンボあってもいいんだろ?」

「え、いや、……それは、そうなんですが。学科単位が」


 4年がかりは覚悟だろとか最初からあきらめちゃダメでしょとか、互いに決め所のない膠着状態に陥ったところに、寝ぐせのついたままのユイが到着。


「あのー、お試し延長の固定メンバーの件で名前札を預けに来たのですが」


「あー、じゃあクリスとマリエルもとりあえずその条件でどう?」

「ええ、よろしくおねがいします」

「ほぇ~?」


 ユイ嬢、なんだかわからないうちに目の前で話がまとまった。



   ☆



 そろって事務棟に行き、編成室と看板の掲げられた部屋をご訪問。


「えっ、もうメンバー固定!?」


「こちらのマリエル嬢は交代要員としてのプールメンバーです」

「えっと、女の子にはちょっと無理っていう日があるじゃないですか」


 担当官も頷いた。


 お試しの延長で、とりあえず秋季の残り2回の約束だと説明。


「そういうことであれば、今回と次回は名前札をこちらで預かるが、編成枠も1つ残しておく」


 14号パーティを編成から外すのではなく、編成によって追加できる枠が1つの半固定パーティ。

 そういうことになった。




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