4-02.二泊三日でGO!
学院は中休みの秋季第六週、火の曜日は狩り計画の打ち合わせ。
もともとヨッシーの学費対策で2泊3日の狩りを計画していた。
そこに固定メンバー希望のユイも参加を表明し、でも不安だと同じ魔術科のヴィオラに泣きつき、その流れでジュスティーヌも引っ張られ。
探索科寮食堂の隅のテーブルに、初回の学院14号パーティのメンツがそろってしまった。
「第一層最奥の拠点ベースに2泊3日の本気の狩りですが、大丈夫ですか?」
参加を拒むものではないと言質を取り、ヴィオラは唇を尖らせた。
「意地悪いわよあんたたち。あたしたちのときは、近場の遠出狩りでお茶濁しして」
怒られるような事でも関係性もないだろとラッド。
「少なくとも第一層に慣れてないメンバーじゃ無理。初回でお出しできる提案じゃないだろ」
「でも、マクシミリアン様のパーティではやったんでしょ」
2回目の学院パーティ編成で組んだマックス、クリス、マリエルのやる気がね。
それぞれの理由を理解し、応えたくなったのもある。つまり、絆されちゃったのだ。
主にマリエルの体力面に不安があったが、カバーできる範囲に収めるつもりだったし実際に収めた。
泣き言は聞かなかったが。
具体的には、高度に柔軟性を維持した臨機応変な日程の変更と狩り密度の調整。
『まだ行けるはもう危ない』
転生三人組にとっては当たり前な教えである。
しかし、実際問題どのあたりにラインがあるのかの判断は、経験を積まないとわからない。
そう、数々のゲームでさんざん失敗して魂に刻んだ、場数を踏みまくった三人ならばこそ、素人三人連れでもケガ無く帰還できたのだ。
自覚していないけど。
なんならマックスたちも、ラッドたち三人抜きで同じことはできないだろう程度にしか理解していないけど。
「1泊2日で500匹近くを狩れるそうで。そのノウハウ、私もほしいなーと思いました」
ジュスティーヌに隠しているわけではないのですよねと問われれば、そうですねと。
だって、学院パーティ編成は毎回総括のための報告発表会・反省会があるのだから、情報は共有されるものだと思っている。
駆け引き交渉の練習の場と認識し、個々の得た情報をネタに使う貴族の系譜のほうが、転生三人組にとっては理解の枠外なのだ。
これがどす黒い大人社会想定ならば十分に理解し、自分たちも駆け引きしなきゃなあの範疇に入ってくるのだが、まだ10歳のおこちゃまモードゆえの甘さであろう。
「どうせ遅かれ早かれ同じ結論に達するだろうからな」
数を狩るにはダンジョンの奥深くに行くしかない。
そして、奥地で狩るには拠点キャンプ場での休憩、宿泊が必須。
「なるほど。ですが、自力で気づくまで、実行できるようになるまで、どのくらいの時間がかかるのでしょう?」
各種ゲームでの狩りノウハウを流用している転生三人組は気づいていないが、狩猟圧だとかオペレーションリサーチめいたエリア狩り検証だとか、10歳児が考えることではない。
もっと言えば『推論→仮説→検証』な思考方法だって、専門の訓練を受けていないと無理。
「こーいうのも、家伝のノウハウなのよねえ」
「セバスチャンさんが、お兄様たちのお話をよく理解しものにしているのでしょうね」
「ほぇ~」
先達はあらまほしきことなり。
便利な弾除け兄貴の存在が勝手にカバーストーリーになっているようだ。
☆
水の曜日の昼前からダンジョンに入った。
転生三人組は、すでにマックスたち相手で教導を経験済み。
まして一度組んだ経験のあるジュスティーヌたちであり、すり合わせ行程を飛ばせたのも大きい。
女子たちの理解力や戦力的な問題はなく、指示に素直に従うこともあり順調に推移した。
精神・肉体両面での疲労は蓄積していたようだが、そこは程度の差こそあれ三人も同様。
随時、安全余裕を確認・判断しながらの狩りは、言葉では伝えにくいノウハウ、貴重な経験になるだろう。
「無理。絶対無理。なんなのよこれ、ノウハウの塊じゃないの!」
「索敵順路設定、全体把握、ペース配分、代替案の用意、柔軟な運用、そして危険判断……」
「ほぇ~」
ダンジョン暮らし3日目の土の曜日。
メンバーの疲労状態からガチの索敵狩りをキャンセルし、B案に移行。
そう、ファンガス農園ご訪問ツアーである。
「ああん、なんぞみたことあるよなガキやな。ここらはマッシュ組のシマやぞ」
「どうもどうも、お久しぶりです。例のアレ、そろそろ欲しくなりまして」
飛んできた威嚇に物おじせず、笑顔をはりつけたセバスがスススっと見張り番に近寄る。
「ああ、例のアレなあ。今だと6本までやな」
差し出された手のひらに数えながら貨幣を落としていく。
「おっとっと、小銅貨12枚も落としてしまいました。困ったなあ」
「おいおい、こんなところにキノコが6本も落ちているぞ。ちゃんと拾っとけよ」
「「ハッハッハ」」
気ぃつけて帰れやの言葉を背に、セバスたちはファンガス農園を離れた。
「「「あやしい」」」
「いやー、このあやしさがクセになるといいますか」
公には、見て見ぬふりをされているファンガス農園。
用がなければ近づかない場所でもあるし、なんで見逃されているのか、よーく考えましょうねと釘だけ刺しておく。
☆
「お疲れ様でしたー」
「は、はい~」
事務棟の組合窓口での清算後、疲労感を隠しもしない女子組を一般寮まで送り、自分たちも引き上げる。
探索科寮の男子共用水場でたらいに汲んだ水をセバスがぬるま湯にかえ、汗をぬぐって着替え。洗濯等は明日回し。
「「「かんぱーい」」」
自室に戻ってコーラで祝杯だ。
【通信販売】には今回の狩りでドロップした2本と農園産6本で33万6000ポイントを加算。残高約55万ポイント。
キノコ1本でコーラ84本換算。少々の贅沢気分は問題ない。
むしろ次なるランクアップのために、累積額をどんどん積んでいこうまである。
「ポテチ! ポテチ!」
「しょうがないにゃあ」
2泊3日の拠点ベース狩り。各自の分配、小銅貨97枚。惜しくも100枚に届かず。
「単純に1泊2日を2回やるより効率は上がるか」
「時間で割ると微増どまりっぽいですが、日数で割ると爆上げですね」
時間当たりの効率の微増は、慣れや地道な成長、メンバー数による戦力向上で片付いてしまう。
1泊2日、午後出発で翌日午後戻りだと狩りが2と4+4で10時間、6人で500匹弱。
マックスたちの本気の1泊狩り体験コースがこれ。
マリエルがカウントしていたので戦果としては一番正確。他は魔石数からの逆算・推測となる。
1泊2日、朝出発で翌日午後戻りだと同じく4+2と4+4の14時間、3人で300~400匹。
三人でやっていたころのリザルトがこれ。
2泊3日、朝出発で翌々日午後戻り、4+4と4+4と4+4の24時間、6人で1300匹弱。
今回のデータになる。
2日目を過激にさらに数時間のプラス、3日目のB案ファンガス農園訪問からA案に戻せば索敵密度も上がる。
「結局、狩り時間を伸ばすには拠点での宿泊日数増やすしかないんだな」
「第一層は狩猟圧の関係で、数を狩りたければ奥に行くしかないという事情はありますが、一般化するとそうなるでしょうね」
過去の探索者たちが経験知として残してきたノウハウの再確認。
理由の推測と実証は済んだ。
狩場への行き帰りで消費する時間の比率を下げるには、狩場滞在時間を伸ばすしかない。
そして持ち込むべき荷物がドカンドカンと。
「深く潜れば潜るほど移動時間がかかり、ダンジョン内での狩り時間も増やさざるを得ない。効率上はそうなる」
「自分たち、霊格レベルを上げるのに、適正狩場に行かざるをえんからなあ」
生活のための金策目的のパーティとはそこが違う。
転生三人組は、とにかくもレベルを上げないといけないのだ。
第一層の雑魚を数億数兆狩ったところでレベル100には届かない。多分。
「自分たちはいいんだよ。ポイントさえあれば水も、最低限の食糧も手に入る」
「俺の【個人倉庫】の成長次第で荷物量も増やせるしな」
明かりや熱源はセバスの今後に期待。
加護コミで考えるとむしろ他人が足手まといになるが、それを言い出すとパーティメンバーがどうとかクラン化がどうとか言えなくなる。
第一、戦力的にどうなのよと。
6人パーティが推奨されているのにはちゃんと理由があるよねと。
「転生モノにありがちな、ギフトが有用すぎて下手に知られたくないパターンに入ってるな」
「拉致られてこき使われるなんてゾッとしないぞ」
「それなあ」
考えすぎと言えないのが、今世、この社会での現実である。




