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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
3章.学院編Ⅰ・学院パーティ編成

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3-02.実験!スライムハント



 夏季第十一週、風の曜日。


 前世では枕が変わると眠れないくらい神経質だったセバスだが、引越し疲れもあってかすんなり眠りに落ちて気がつけば朝であった。


「おう、水場で顔洗ったらメシな」


 すでに起きていたラッドの指示で、ぐずるヨッシーも寝藁から引っ張り出して部屋を出る。


 日の出から時間が経っていたためか、寮生の入れ替え時期で絶対数が減っているためか、食堂は混雑もなく、のんびりと粥を啜ることができた。

 食事が進むうちに目も覚め、今日も一日頑張るぞいと抱負を述べる。


 本日は様子見の遠出狩りを予定だが、入寮に際して装備も更新したので時間をかけて準備をする。


 部屋扉に南京錠的な外鍵をかけて、男子寮と食堂のある中央棟をつなぐ廊下の名札掛けをチェック。

 まだ自分たちの名札はできていないようなので、部屋番号の下に『ダンジョン』の札を掛けておく。


 門のところで、同じく昨日から入寮したオルガたちと遭遇した。


「探索科在籍オルガ、通ります!」

「同じくアズクル、通ります!」

「同じくグラム、通ります!」


 門衛も、律儀に許可を発している。


 外で買い物をしてきたのか、ボクシングのサンドバッグめいた麻袋をひっかけ意気揚々と門をくぐるオルガたち。


「よう。買い物か?」

「おうよ。なにかと要りようでな。ところで、食堂の隅の家具、持ってっていいって本当か?」

「ああ、欲しいものがあれば回収していいらしい。反対に、前の住人の遺物で要らないもんは食堂に運んどけと」


 よっしゃとこぶしを握るアズクル。どうやらお目当てがあるらしい。


 転生三人組のような事前相談のない飛び込み入寮だったが、空きのあるうちの早い者勝ちということで、オルガたちも三人一組で部屋を割り当てられている。


「ヨルグたちは狩りか。まあ、カネはなんぼあってもいいからな」

「ちがいない」


 特徴のないのが特徴なグラム君はいつものセリフが板についている。


「ところで、学章掲示すればあいさつ程度でよくて、いちいち名乗る必要はないですよ?」

「ああ、いやさ、なんかこう、認められたっつうか、俺はここに入れる入っていい存在なんだぞっていうか?」


 照れくさそうに顔をそむけたオルガに、養護院の誰それを卒業し、新たに得た自分たちの立場を噛みしめる儀式のようなものなのかとセバスも一応納得した。


 社会的に認知されている組織の一員、自尊心満たされて、承認欲求満たされて、自信も湧くしやる気もでちゃう。

 人間きっと、そんなもの。



   ☆



 アクヤ・ダンジョンの第一層でスカベンジスライムを狩ることができれば、単純に獲物が増えるメリットがある。


 転生三人組は、一匹のスカベンジスライムを地面のくぼみに押しやった。


「じゃあいきます。【保温】」


 セバスは宣言通り、くぼみの底面に、お肉も焼けるあっつあつの魔法的ホットプレートを設置のイメージで魔法を発動させる。


 あとはスライムが逃げ出さないように、都度ふちから追い落とす。


 待つこと5分弱。ついにスライムはもやとなって消滅した。


「うんうん。こういうのでいいんだよ、こういうので」

「いや、うん。ダメ元でしたが、成功してよかった」

「結果よければすべてよし!」


 後方指導者顔で腕組みをするヨッシーと、くぼみから魔石を回収し現場猫ポーズを決めるラッド。


「【生活魔法】は応用が命だもんな。温度あげればもっとはやく倒せるか?」

「感覚ではMP2つっこんでコレ。MP3だと回数が激減するので、できればコレでいきたいです」


 魔法の効果は消費魔力とリニアな比例しないぽいとはいえ、MP1だと60~80℃くらい。

 温くはないが水を沸騰させられない程度の温度なことは今朝、実験済みだ。


 じゃあMP3だと何℃くらいになるのか。

 あるいはMP2のまま温度を上げた場合、効果時間はどのくらい減るのか。


 チューニングを詰めるための試行錯誤には回数が必要で、MPの制約が厳しい現状では慎重にならざるを得ない。


 たまたま成功してしまったために、もうこれでいいんじゃねという空気になったのはやむを得ないことだろう。


 MP余力を残し、1日あたり4~5匹のスライムを狩りの獲物に加算できるようになったが、数の上では誤差に過ぎないのも残念な事実。

 ついでに言うと、火属性と相性のいい、MP消費の少なくて済むセバスでもこの程度だというのが、低レベル魔法使い/魔術士の現実でもある。


 ただ、魔石が同時に2個以上出るときがあった。


 細かくでこぼこの地面に、十分な明るさがあるとは言えない松明たいまつ

 誰かが見落とした魔石をルート(Loot)していたものと推測される。


「魔石は消化されないんだな」

「これもひとつのトリビアってヤツなんだろう」


 土砂の類を『掃除』しないことは知られていたが、してみると魔石も土砂の類なのか。

 学問的な興味はあるが、自分で先行研究を調べる気まではないセバスは忘れることにした。


 狩れる魔物が増えたというアドバンテージと、【生活魔法】の成功例という満足感がこの件で得たものとなる。


 なお、2匹に1個程の割合でゴムっぽい質感の『ゼリーボール』をドロップするのだが、使い道がほぼないらしく、買取は粒銅1枚。ラッドの【通信販売】でも10ポイント。


「買取に出さないで記念品にしている子もいるのよ」


 窓口でも、そこはかとなく買取拒否感を伝えられる始末であった。


 受付のお姉さんの、この子たちもムキになって叩いて叩いて叩いて、ニュービーを卒業してきたのね的な目線に記念品にしますと引き取り、セバスにパス。


 セバスはセバスで、1日あたり2個ほど増える『ゼリーボール』の処分に困り、とりあえずベッドに投棄。


 藁に埋もれた『ゼリーボール』のゴム的なクッション性能に快眠を覚えるまでには、まだしばしの時間が必要であった。



   ☆



 新学期に備え寮住まいに移行した夏季第十一週、続く第十二週は、ざっくり小銅貨167枚の収入があった。

 ただし入寮に際して、筆記用具はじめの学業用品に身の回りの雑貨や装備の更新など出費も多く、貯蓄残高は191枚。


 かなり出費がかさんだが、装備の良し悪しは命にかかわるだけに、できるときにしておくべきだと判断。


 具体的には、狩り用の厚手の服の上下に、学院で着る用にセバス同様の貫頭衣に腰帯、下着も数セット。

 足元には短ブーツ。手元には革手袋。

 革帽子は手が届かず、三人で色をそろえたスカーフを頭に巻く。

 革袋や麻袋、丈夫な紐などの雑貨類に軟膏タイプの傷薬、とにかく消耗する松明。

 初期投資イニシャルコストが厳しいが、運転資金ランニングコストは多少マシになるランタンも、部屋の照明兼用で1つ購入。


 そして、ナイフ。


「自分のナイフ……いい」

「ああ、いい……」


 男の子だからというわけではなく、わりと生活必需品なのです。

 自分のナイフを持つことが、一人前への第一歩的な意味合いもある。


 かくして三人が【祝福の儀】を受けて以降の夏季を通してみれば、当初目標である一人頭小銅貨288枚を大幅に上回る成果を上げることができた。


 もとより学費関係は親が負担のセバスに、当面の学費・寮費が親持ちになったラッド。

 すべてを探索者活動で稼ぎださないといけないのはヨッシーのみだが、この先もやっていけるとの見通しを持つには十分な結果である。




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