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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
2章.ニュービー探索者編

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2-09.マッシュルーム・フィーバー



 夏季の第八週、週末の無の曜日。

 セバス含めての狩りを少々早めに切り上げ清算をすませ、いつもの木陰にどっかりと腰をおろす。


「自分たちはこれからどうするよ」


 オルガたち養護院キッズとの連合パーティの崩壊を受け、とりあえず今週は暫定方針で乗り切った。

 この先をどうするか、ラッドが問いかける。


「俺たちもオルガたち同様に、荷運びやめて遠出狩りにシフトでいいんでない?」


 荷運び体力錬成に成功したのはオルガたちだけではないのだ。

 固い稼ぎではあるが上振れもしない荷運びから、夢が広がリングの狩りにシフトするのも手だとヨッシーが指摘する。


 学費は納めたので、学院探索科に在籍して学びながら探索者活動をするというルートは確定。


 夏季残りの4週間を、安全をとるか、少々のリスクを飲み込んで稼ぎをとるか。

 寮費に生活費に余裕にと、グラムの口癖ではないが『お金はいくらあっても困らない』現実が後者を選ばせた。


 寮費の納期限までの追い込みとなる第九週・第十週の計画を練る。


 まず、週の前半に二人で遠出狩り。


 週半ばの風の曜日を休養日にし、後半の土と闇の曜日をセバス含めて三人で一泊狩り。

 学業分は問題ないので、棒杖術の修得に影響が出ない範囲での幼年科自主休業だ。


 週末の無の曜日は休養日だが状況に応じて臨機応変に。


「自分たちがやるべきは、『高度に柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処』ってやつだ」


 悪く言えば『いきあたりばったり』と評されるが、できるのであれば最高級な方針なのは間違いない。



   ☆



 さて、と膝を詰め、ラッドは三人の真ん中に小袋を置いた。


 中には本日の狩りを早めに切り上げた原因、いわゆるレアドロップである『香りのよいキノコ』が収められている。

 名前からわかる通り、ファンガスのドロップ品になる。


 魔物によってドロップ品とドロップ率はいろいろ検証されており、ドロップしにくいものをレアと称するが、組合の買取値はものによる。

 お値段はね、供給量とか効果とか需要とか、いろいろ影響するのだ。


 推定ドロップ率5%だってレアっちゃレアだけど、数を狩ったケイブバットからは、過去それなりの数の『被膜』を入手している。


 『被膜』の買取値は粒銅1枚。

 ついでにラッドの【通信販売】だと20ポイント。貨幣よりも変換率はいいが、オルガたちへの分配もあり、確認だけしてキャンセル。


 そして本日の『香りのよいキノコ』。

 いつものようにキャンセル前提で『入金/買取』を試したラッドは目をむいて硬直した。


「いちじゅうひゃくせんまん……まん!?

「待て、落ち着け。組合の買取値をチェックだ」


 粒銅1枚4ポイント、小銅貨1枚10ポイントと、渋々なポイント査定を知っているだけにセバスとヨッシーはラッドを押しとどめた。


 もしかしたら、こちらの金銭価値でもとんでもない評価な、マジもんのスーパーレアなのかもしれない。

 そんな期待を、まあ、ちょっとは抱きつつ組合窓口に。


「あら珍しい。香りがよいって、一部の食通には人気あるのよね。小銅貨1枚になるけど、どうする?」

「き、記念にみんなで食べてみようかなって」

「そうね、それもいいかもね」


 探索者が、自分たちが卸すものの価値を知っておいて損はない。

 こと嗜好品などは特に個々人で価値観の乖離が生じるものであり、なぜその値になるのか一応とはいえ納得しておいてもらえると納品・買取もスムーズに進む。


 所詮はキノコ。

 ドロップ率でいえばレアだが、ちょいちょい納品される、その程度の品。


 それが小銅貨1枚にも(・・)なる、そう納得するもよし。


 お味や香りが気に入った?

 未来の食通様の誕生は販売先の確保につながる。組合にとって損はない。


 学習材料として順当だろうと、受付のお姉さまは判断した。



   ☆



 転生三人組は、組合の買取窓口の顔にして純真な探索者を惑わし誘導する者、お姉さまの想定の斜め上を行く。


 いや、お姉さまは別に悪人じゃないよ。

 (組合にとって)適切な方向に、(経験の浅い)探索者君たちをそれとなく(教え)導くのはお姉さまの職務だから。


「本当に、本当にポイントにしちまっていいんだな?」

「むしろポイントにしないでどうするの」


 ヨッシーが摘まみ上げて匂いを嗅ぐ。


「香りが強いと言われればそうだけど、でも、ただのキノコの匂いだよなあ?」

「別段、好みの匂いでもないし、ただのキノコですもんねえ」


 肉厚で開ききっていないふっくらした傘部分が特徴か?


「みるからにチン〇」

「それ以上いけない!」


 下ネタに流れかけた隣でラッドがものすごい形相で空中をタップした。


「行けっ『入金/買取』……ふ、ふおおおおおおおおおお! 保有ポイント……4万2036.31!」

「「フォオオオオ!」」


 『香りのよいキノコ』、4万2000ポイント。

 小銅貨に逆換算すれば4200枚に相当するポイントです。


「きたぜチョコ! カーニバルだ、フェスティバルだ!」

「シリアルバー(チョコ味)だっての!」


 現在のラッドの【通信販売】で購入できる4種は全部200ポイント。

 サンプルでの全種仕入れはもちろんだが、まずは全員にシリアルバー(チョコ味)だ。しかも2本ずつ!


 ハムスターの如くにかじりつきほほ袋を膨らませるヨッシー。


「ヨッシー、ご感想をゴリラ語でお願い」

「ウホッ、ウホホウホッホッウホッウウホーホ」


「完全に理解不能だわ」

「ウホッ!(おい!)」


 バカやりつつも、記憶よりも苦味を強く感じるおこちゃま舌に、表面上の興奮を収めることに成功する。


「うーん、大人のビターテイスト」

「コーヒーが欲しくなりますね」

「それな」


 改めて4品を並べる。


「Aサヒ食品のシリアルバーに、〇コープ・H木田店の味の手羽先、S事業センターの食卓塩、業務用スーパーで買ってた天然水」


 うんうんと、ラッドは納得している。


「自分の愛用品で固めるとは、やりますねぇ女神様」

「有能」


 品目のチョイス&仕入れは女神様配下の担当です。

 女神様はこんな些事に関わられるほどお暇ではないので。


「チョコバー(本物)も食いてぇなあ」

「そこはギフトの成長で種類が増えるのに期待だな」


 かねて検証・検討したように、ヨッシー曰くの転生業界の常識であれば、取引の累積額が成長のキーだと思われる。


 これまでは、購入のためのポイントが貯まらず泣いていたのだ。


 だが今は違う!

 ギュっと、三人はこぶしを握りしめた。


 キノコ様のおかげで、シリアルバー(チョコ味)が210本も購入できるポイントが手に入ったのだ。


「ただ、水も塩もなあ。PETボトルもガラス瓶もまずいでしょ」

「へんな味もくさみもないお水、美味しいけど、まずいかあ……」


 最悪、ガラス瓶はお高いだけだが、軽くて薄くて透明なPETボトルなどという見たこともない素材、あかんよねと。


 なお、飲み終えた後のPETボトルやシリアルバーのプラ包装は『入金/買取』でポイントにリサイクル可能なことが判明。

 ガラス瓶も同様と推測できたが、中身の塩を捨てるのに抵抗があり、とりあえず端切れで巻いてセバスのバッグに入れておく。


「手羽先はともかく、シリアルバーだってちょっと見られたくないモノではある」

「当座は購入、即消費ですね。あと考えるべきは……」


 うつむいたセバスは、悪い笑顔を浮かべていた。




 香りのよいキノコ …… 現代日本における松茸的なサムシング

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