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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
2章.ニュービー探索者編

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2-08.パーティの分裂



 週の頭の光の曜日は、スケジュール上の休養日かつ打ち合わせの日だ。


 昼過ぎに例の木陰にやってきたラッドは、本来いないはずのセバスがいることに少しだけ警戒心を強くした。


「んでよぉ。院長のハゲがよぉ、探索科行くなら寮に入れってうっせーの」


 親心なんですけどね。

 養護院経営上の判断がないとは言いませんが。


 建前として15歳の成人まで寝泊りしていいといっても、実際に限度いっぱい養護院に寄生する子はほぼいない。

 むしろ、探索者で食うに困るようでは、15歳に至るまでの間にこの世から脱落するだろう。


 してみると、学院の探索科寮は毎季クオルタ銀貨1枚で朝夕の食事もつく格安物件であり、15歳リミット養護院ロックアウトでいきなり出費が増えるよりも、段階的に慣らすのにちょうどいいとの思惑もある。


「独り立ちするんだろとまでイわれちゃよぉ、俺らだって男だ。これまで世話になったなってレイを返してやるさ」


 楽観論だが、慣れて強くなれば加算も見込める、必要なカネは稼げると判断したという。


「でまあ、こっからが本題なんだがよ」


 オルガだけでなく、アズクルとグラムも居住まいをただした。



   ☆



 オルガたちの話はスケジュールの見直しと、それに伴うパーティ解散の申し出だった。


「遠出狩りで荷運び以上に稼げたじゃん。やっぱ探索者は魔物を狩ってこそだ」

「カネはあって困るもんじゃねえ」


 魔物を狩るのが探索者というこだわりのあるアズクルに、なんだかいつも同じ事を言っているような気がするグラム。


「はじめはきつかったけどよ、身体慣れたら週に2日は休みすぎだろ」


 週2の休みは単なる休養日ではなく、買い出しや工作・修繕などの準備や手入れの日でもあるのだが、そういった諸事情を自ら考えて立てたスケジュールではないので理解が薄い。


 週3回、片道は重き荷を負っての往復20km。

 ある意味でいいトレーニングとなり、余力が生まれて考えを広げることができるようになったようだ。


 数回の狩りの結果に目先優先の短絡的思考と責めるのは簡単だが、むしろ、身体の余裕や稼ぎの差を勘案しているところを評価すべきだろう。


「もっと言えばよ、何人で行こうが通路じゃ戦えるのは一人か二人じゃん」

「頭割りってことはよ、頭数減らせば取り分増えるんだよな」

「カネはあって困るもんじゃねえ」


 学費分を貯めた、納めてきた、これで俺らも学院生だ。

 これまでの養護院生活で味わったことのない成功体験、自信がオルガたちの気を大きくしている。


 実際、交代で戦うからパーティとしての『遊び』、余力ありすぎだったのは事実。


 いわば元の形に戻るだけだなと、努めて冷静に転生三人組はオルガたちの分離独立に賛同した。


「しばらく、一緒にやれて助かったぜ」

「お互い、見通しはたったもんな」

「オルガ、アズクル、グラムの益々のご活躍をお祈り申し上げます」


 おうさ、そっちも頑張れよと、用の済んだオルガたちは去っていった。



   ☆



 木陰に残されたカタチになったヨッシーは、雑な短髪をかきながら愚痴とも反省ともつかないこと口にする。


「休み重視もチンピラ対策も。実感しないことにはわからんよなあ」


 気分的にはイラっとしていたセバスだが、つまりそれは手間暇かけて『やった』のに、あっさり見限って去っていったと感じているからだと自己分析。

 ナチュラルな上から目線、押し付けた親切を恩に着せる思考はいかんなと反省はする。感情として割り切れるかとは別に。


「まだ10歳だし、あんなもんでしょ。むしろ一気に大人びるんじゃないのかな、こういう社会だと」

「前世記憶のおかげだからな。自分たちがあれこれ気をまわしてるの」


 ラッドも角刈り頭をなでながら経緯をチェック。


「良くも悪くも感情に素直、直情的だが悪気はない、自分たちとは基盤となる知識の差があるだけで頭が悪いわけでもない」

「……まあ、そうですね」


 数字の確定できる固い稼ぎであると同時に体力錬成目的の荷運びも、休み重視のスケジュールも、意図を細かく説明してはいなかった。

 結果的に体力に自信を持ったオルガたちの離脱につながったわけだが、意図通りの成果をあげたとは言える。


「つまり、説明不足?」

「いうて、口だけで伝わるモンでもないだろ」

「何が何でも仲間にするって関係でもなかったしな」


 人数集めての行動はチンピラ対策でもあったのだが、これも考えすぎ、気をまわしすぎなのか。


 否。断じて否と、兄たち&親情報を得ているセバス。


 探索者など、結局のところ己の腕一本の暴力商売というヤクザな稼業である。

 ダンジョン内で最低限の秩序を成立させているのは、間違っても探索者個々人の倫理観などではない。


 ケツモチのありなし、バックの大小。

 無法者には無法者なりの掟が存在する。


 人数というわかりやすいバリアが半減した点は、胸元にピン止めした学院の仮学章の御威光に期待する。


「あいつら、さっきも仮学章を見せびらかして年下たちの英雄になってたからなあ」

「まあうん、元気でやってくれれば一番ですね」

「こっちはこっちで、対応を決めなきゃならん」


 オルガたちは三人だが、こっちは平日セバス抜き。


「戦闘系の科に編入予定の子は、戦闘スキル習得するのが幼年科の目標なので、あんまり休めないんです」


 【自己認識ステータス】の一般技能の項目にスキル名が表示されることが目標。

 また、加護ギフトとして、例えば剣術を得たような場合でも、慣らしの修練は必要。


 セバスの場合は棒杖術を習っている。

 剣はそれなりにお高いのと、棒杖術の突き・払い・打ちの基本を修めれば、後に槍術や剣術を修める際にも応用が利くため。


「探索科に入った後で、自分たちも習えるんだよな?」

「先にやるか後にやるかの違いなら、セバスは学費稼がなくていい分をそっちで先行しておくべき」


 幼年科での付き合いもある。

 パーティメンバー候補として考えるということではなく、いずれどこかで幼年科で一緒だったよねというツテに化けるかもしれない。


 コネ・ツテを重視する以上、共に過ごした時間の長さは無視できないファクターとなる。


 しかし、ヨッシー、ラッドの2人だけでの狩りは、ダンジョン内に確実に存在するであろう、ろくでもない人間の驚異度が上がる。

 対魔物でも、人数減の分、回転数をあげないと処理しきれなくなる。


「『あやしい人影』からは小回りが利いて逃げやすいともいえるし、頭数減って分配増えるんだし、狩場はちょい手前よりでいいんじゃね」

「これまでと同じくらい奥まで行くとオルガたちと被りそうだしな」


 狩りに行かないという選択肢はなかった。



  ☆



 パーティの分裂ではじまった週だが、すでに請けていた荷運び依頼にはオルガたちも参加。

 ケンカ別れしたわけではないとはいえ、互いに微妙な気まずさはあった。


 狩りは一応順調。

 これまで5人でローテーションしていたところをヨッシー、ラッドの2人でこなすことになり、疲労回復時間がとれなくなったことが懸念材料。


「やぱし、余裕・遊びってのは重要だわ」


 胸元ピン止めの魔除け(仮学章)の効用か、現時点でのダンジョン内における一番厄介な相手とは会敵していない。

 実際にはすれ違ったりしているのかもしれないが、手出しされていないのでノーカウントってことで。


 第八週の概算収支は小銅貨32枚のプラス。

 狩りにおいて疲労しきる前に撤退を判断したため、理論値には届かなかった。


 ともあれ、ラッドも学費を納めて残り貯蓄が28枚。

 細かいことを言えば、ヨッシーとラッドには養護院院長のポケットマネー補完分の差があるが、融通し合う範囲でもあり誤差のうちということで。




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