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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
12章.真なる探索者編

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12-07.ダン活の滞留と家族関係



 冬季から、ジュスティーヌ、ヴィオラ、ジャルマリス、プリムローズの4人が産休に入る。


 資産的には出産・育児に専念できるはずなのに、一時とはいえ探索者復帰。

 クラン『アスタリスク』が、組合から『真なる探索者』、『ダンジョンに取り憑かれている』と評価されるゆえんでもある。


「置いて行かれるのも、それはそれでイヤなんですよねえ」

「わかるわぁ」


 稼働女子はマリエルとウィスタリアのみの8人体制となるが、特段足を止める理由もないため4週ダイブの2回を継続した。


 続く春季には、ユイとオルレアが復帰。


 春分祭週恒例のお誕生日おめでとうの会では、ジュスティーヌが天に両のこぶしを突き上げた。


「さあ、アンダー23なフレッシュ面々一同、声を合わせてご一緒に、元気にやってきましょー」

「「おー」」


 春はすっかり出産のシーズンだ。


 いっそ12週間全休案もあったのだが、出産を控えた周りで手持ち無沙汰連中にうろつかれても、邪魔にこそなれ何の助けにもなりゃしないと、いわゆる『亭主元気で留守がいい』扱いである。


「足を止めちゃうと、動けなくなるかもって思いもある」

「アドルフは考えすぎだと思うよ」


 過去に倣って2週ダイブの3セット計画で、1回のダイブで10日間を占める第八層が実質的な狩場になる。


「まあ、復帰直後から最前線もね」

「むしろ第八層のゴーレムの方が怖いまであるけど」


 第八層であれ第九層であれ、ダン活を継続していればこそ、獲得する霊格量、いわゆる経験値も蓄積していくはずだ。



   ☆



 復帰女子組とのレベル均衡化政策もあり、早期に第十層へ移行しようという目論見は念頭に置いたまま置き去りにされた冬・春の半年。


 特段のイベントもなく、文字通りの一連の手順(ルーティン)として狩りをこなした。


 転生三人組はレベル74、そして75と季毎に1レベルずつアップでおおむね予想通り。

 継戦組が77か76、春から復帰組のユイとオルレアが69となっている。


 出撃回数の調整もあったとはいえ、継戦組でレベルがほぼそろったことで、いよいよ頭打ちの予兆がみえてきた。

 第九層では、いけてレベル80かと認識が固まりつつある。


 第九層での、移動・索敵のブラッシュアップも目論んだのだが、成果につながったかどうかは判断に迷うところ。

 全体の反省会でもそろって渋い顔になった。


「偵察範囲でエリア分けして、経路どりをできるだけ一筆書きにしたんだが」

「数字としては有意な差が出ていません」


 時間配分で考えると、移動・展開に関しては自動車や船の投入に改造など、突き詰めた感がある。


 安全重視の遠距離戦メインをやめれば戦闘時間は短縮するだろうが、それでケガでもしては本末転倒。


 第九層の魔物は、強いは強い。

 だが、一撃の怖さでいえば、パーティ崩壊の危機を引き起こした第八層のゴーレムたちのほうが怖い。


 クラン『アスタリスク』は、敵攻撃圏外からの一方的な射的や焼き討ちをはじめ、いかに安全に狩りをこなすかに知恵を巡らす連中の巣窟だ。


 だからこそ、作業ルーティンとして狩りをこなせるし、10年以上の探索者生活を経ても五体満足なわけで。


「まず敵を見付けないとってところで、今以上の方法なんてある?」


 結局、索敵効率が数字に直結するのだが、画期的な改善案などそうそうでるものではない。


「狩場独占で数字が頭打ちなら、それが現状の目一杯なんでしょう」

「そうねえ。満足しないって姿勢はともかく、現実的なラインも大事よね」


 ジュスティーヌとヴィオラの締めで反省会は終了。



   ☆



 ジュスティーヌ以下4人が春季生まれの新生児を抱え、手狭とは言わないが、クランハウスもかなりにぎやかになり申した。


 そしてこの夏、交際・結婚からの流れでメンバーのトップを走った先駆者、クリス・ウィスタリア夫妻の第一子が数えて8歳になる。

 ちなみに生まれ年が当年で1歳。誕生日(季節)で加算していく。


 8歳、つまり秋から学院幼年科通い。

 教育の大切さを知るクランメンバーの頭に、学院に行かせないという選択肢はない。


「早いなあ。もうそんな歳か」

「おじちゃんも歳をとったわけだよ……」


 おまえらまだ23歳だろと転生三人組のボケに突っ込みつつも、悩ましいのがセキュリティの問題だ。


 学院内はともかく、通学時を狙っての襲撃、誘拐からのなんとやら。


 クラン『アスタリスク』は一般には無名だが、知る人ぞ知るな存在でもある。

 犯罪組織的な意味の裏クランにも逆恨みされてそうだし、その裏クランに依頼を出す者もいないとは言い切れない。


 考えすぎ、心配しすぎなら、笑い話ですむ。

 転生三人組のいう安全第一とは、最悪想定の上で厄災の芽を摘んでいく思考でもある。


「大人の付き添い……最初はともかく、イヤがられるよなあ」

「子ども心としてはそう」


 地域的にも、クランとしても、コミュニティ規模の小ささから集団登下校にならないのが痛い。


 幼年科にも寮はあるが、それは遠隔地の下級貴族かその臣下向けであり、アクヤの街に住む者用ではない。


「いっそ幼年科とばして10歳の本科からに?」

「それはそれで同世代デビューの機会を奪うわけで、親子関係のこじれや、コミュニケーション障害やら」


 議論の行き詰まりに、母親のウィスタリアは座った目で呟いた。


「最悪、報復さえ約束してもらえればあの子のことは諦めるであります」

「いやいやいや。ガンギマリすぎだって」

「この先も、全員の子どもに起こり得る問題だってば」


 文明の利器も投入し、所在確認のための発信機を常時身につけさせ、人的にもできるだけ見守り体制を整えること。


「結局、できるのはそれくらいか」


 引き続き、マリエルの産んだ子が冬で8歳。

 こちらは、学院に通うのは来年からになる。


「はじめのころは生む時期がバラバラでしたからね」

「春に統一したのって意外と最近なんですよ」


 まあそのへんは、心理的なものはじめ、余裕ができたから計画的になったのかも。


「考えてみればビッグダディなんだよな、俺たち」

「自分は嫁一人だからそうでもない」


 ラッドが逃げようとするが、それでも3人の子持ちだ。

 ただし今世事情的には、これでようやくボーダーラインという意識もある。プリムローズは4人目をいつにするかを計画中。


 幸いにもクランメンバーの子たちに不幸はないが、成人までに半分はいなくなることを見込む社会である以上、多産への抵抗感は薄い。


 なお使用人枠として雇用している各自の親も、今世の社会事情で言えば結構なお歳なのだが、趣味半分の生涯現役で行くつもりらしい。


「家督を譲った息子に養ってもらうのも、同期の話を聞いていると肩身がせまいそうでなあ」

「小遣い銭には十分以上の給金も出ているしな」

「それそれ」


 別に無理くり働けというものではないが、自分の貢献が必要とされる職場があり、自由に使えるおカネを手にできる。

 いわゆる自己実現的な意味合いで満足感があるらしい。


 セバスの一番上の兄で家督を継いだアルバートにしても、ずっと同居だったならともかく、いまさら面倒見ろと言われてもという本音。


「すまない。俺が言うことではないのはわかっているが、父さんと母さんをよろしく頼む」

「こちらも、信用できる人手が必須でしたし」



   ☆



 探索者組合の主催するクラン連絡会では、認可順をベースに、あれやこれやで席次が決まっている。


 マックスたちの『終末の角笛の護り手ガーディアン・オブ・ザ・ギャルホーン』は末席に位置し、クラン『アスタリスク』の席とも近い。


 特に実のない連絡会の後、二次会のノリでの定例会には、幹部候補も連れてくるようになった。

 相互の面通しをして、交流体制を維持していきたいという。


 ただし、クラン『終末の角笛の護り手』の幹部候補、半分くらいはオルガやジョゼフの制裁を受ける。


「え、なんでうちの大将とタメなんすか?」

「言葉に気をつけろ。『アスタリスク』さんのほうが格上だ」


 そんなクラン、聞いたことないらしいですね。


「学院の同期だし、そのころからずっと頼っているからね。本当に、格上とこうして交流できるのは私たちの幸いだよ」

「あんまり持ち上げるなよ。ま、もちつもたれつな」


 マックスたちにしてみれば、配下の団員が恩義ある相手や格上に舐めたマネするような事件は二度と御免という思いがある。

 第八層に手が届きはじめ、幹部候補にも一流クランの驕りが見え隠れするなか、引き締めの必要性もある。


 他クランの幹部相手に、表面上でさえ態度を取り繕えないようでは、幹部候補どまりと評価を下すのも当然なのだ。



   ☆



 ダンジョン籠りの夏には、すっかり基本になった4週ダイブを2回敢行。


 1回出撃の男子組クリス、アドルフ、フィアフはレベル上がらず77のまま。

 転生三人組は76、女子組はユイとオルレアが73、ウィスタリアとマリエルが78となった。


 また、冬からの3シーズンのオークションには、武具類19点、アクセサリ類10点、魔道具類8点、スキルオーブ13点を出品。

 総額で金貨2985枚と、組合の汗かきおじさんもご満悦。


 このほか、収納の腕輪が2つに容量3倍の魔法鞄マジックバッグも追加入手と、総じて順調だったといえるだろう。




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