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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
12章.真なる探索者編

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12-06.移動・索敵・展開



 秋分祭週の終わり、今年も転生三人組による1年間の振り返りがラッドの執務室で行われた。


「転生発覚から13年回目の秋、レベルは去年の66から72。順当ではある」

「順当だけど、階層をまたいだ割には爆発力がないな」


 三人の表情には陰りがある。


 13年間の平均だと年5.5レベルのアップ。

 階層をまたいだ直後のジャンプアップ期待大だった昨年1年間で6レベルアップ。


 階層を進んだことで魔物から得られる霊格量(経験値)が増大したのは確かだが、期待したほどの結果ではない。


「第九層の頭打ちというか鈍化、推測通り75から80あたりっぽいですね」


 第九層でレベル80、引っ張って85?

 過去に積み上げた数字からの推測で、さらに先、第十層が85~90かもと予想してしまう。


「鈍化なら時間をかければ上がるんだろうが……」

「その時間が……」


 年平均5.5で、必達目標たるレベル100には後5年。

 鈍化ペースも考慮に入れると8年、10年、15年……。


「身体がなあ。今が全盛期だろうし、30歳までには終わらせたい」

「「それな」」


 曲がりなりにも第十層のデータはある。


 しかし、訪れた人の少なさから、データの質も量も頼りない。

 浮遊島が云々のくだりなど、伝説・伝承物語にしか記載がなく、追認した者がいない。


「第九層次第で早々に第十層移行も視野だが、焦ってもダメなのも事実だ。無理はしないが大前提だろ」

「いよいよとなれば、成長のオーブ投入も辞さない構えであります」

「アレかあ……」


 第八層アイアンゴーレムより産出するスキルオーブには、稀に霊格レベルがあがる『成長のオーブ』が混じる。

 入手分はクラン保留品としているが、使いどころは難しい。



   ☆



 クラン全体での年度方針会議でも、第十層を視野に入れておくことを宣言。


「でも、第十層って海なんだよね」

「すごいでっかい魔物の記述があったはず。もっと頑丈でデカイ船でないとダメじゃないかな」


 否定よりかは前向きなダメだし意見が多かったが、この秋、そしていましばらくに関しては第九層継続が支持された。


「がっつり4週とはいえ1回ダイブでレベル上がったから、まだ第九層を推させてもらう」

「ようやく個々の魔物にも慣れてきたところだしね」


 クラン内最高レベルのクリスの言う通り、まだレベルアップの見込みはあるのだ。

 まして現在は、女子組とのレベルの均衡化を企図中でもある。


 そういうわけで、秋季の狩り方針は引き続き4週ダイブを2回計画。


 魔物の密度の低さが、経験値的な稼ぎの伸び悩みに影響しているのは明白なので、いかに効率よく索敵し、いかに素早く魔物(獲物)のところまで移動し、いかに素早く仕留めるか。

 それが今季のテーマとなった。



   ☆



「んでまあ、生活周りなんだが、『儲けは独占せず、最低3分の1は周囲に分ける』ってもなあ」


 商家の教訓らしい。

 格好つけて婉曲的に言えば『高貴なるものの義務ノブレス・オブリージュ』となるのかもしれない。


 でないと刺されるからね。

 嫉妬か恨みか逆恨みか、はたまた単純に奪えば解決ぅな短絡的思考の結実かは問わないものとする。


 マリエルを除いた各自、組合の口座や手持ち合わせた残高、金貨1000枚は超えている。


「マリエルみたいになにかしらの事業、あるいは後援として出資する方向でしょうか」

「うーん、わたしは覚悟の赤字だけど、出資ならリターンにも厳しい目をもたないと食い物にされるだけだよ?」


 クランハウス周りのメンテナンスにしても孤児院への寄付にしても、あわせてせいぜい年に金貨数十枚。


 事業もパトロンもスポンサードも、ご縁があって話が来るような世界だ。

 世間的な付き合いの薄いひっそり系クラン、知られていないのでタカリが寄ってこないのはいいことなのだが。


 タカリに関しては、一番警戒すべき親族に、「使用人としての分」「うち、攻略級クラン(やくざ稼業)なんだけど」等のぶっとい釘を刺しまくったのも効いているのかもしれない。

 まったく面識のない『生き別れの兄弟』だの『生みの親』だのは、笑顔で拘束して衛視隊に突き出したしね。


 下手に近づくと構成員の手配書が出回るので、犯罪組織的な意味での裏クランからも一目置かれているくらいなのだ。


「じゃあ今年度もお馬さんと箱馬車、ついでに荷馬車の追加ってことで」

「「異議ナーシ」」


 郊外の牧場まきばでUMAとのふれあいや、水辺での釣りリベンジ大会など。

 休日の家族サービスは、ほぼほぼクラン丸ごとのイベントになる。


 子どもたちも育って、膝にのせれば乗車人数に数えないなんて言えなくなってきている。

 追加の箱馬車と替え馬の確保は必須と、冬季内までを目途に、繁殖分こみで持ち馬8頭、箱馬車4台、荷馬車2台体制は承認された。



   ☆



 秋季のダン活特記事項は、第九層内に第二拠点を作成したこと。


 場所は第十層につながるゲートのある峡谷で、壁面に横穴を掘るいつもの秘密基地スタイル。


 いわばマップの最初と最後に拠点を置いたのは、第十層へ進出する際の拠点という意味合いももちろんあるが、第九層内で大部分を占める湖沼群に安心できる設営ポイントがなかったためでもある。


 無人島の別荘的なサムシングに惹かれた転生三人組であっても、水辺近くはジャイアントフロッグ湧きやサハギン上陸の恐れがある。

 湖沼群エリアゆえ、どうしたって近くに水場がある事情はあちこちの陸地部分も同様。


 消去法で残ったのが峡谷の壁面だった。


 幸い、第九層内で移動に専念すれば、車とモーターボート併用で片道1日かからない。

 がっつりの秋、前半は第二拠点の設営をしたわりに狩り効率的には大きな影響は出なかった。


「もともと、索敵・殲滅は1日当たり8時間目安でしたし」

「休憩兼ねて交代で穴掘りする分には大差なしってか」


 むしろマップの最初と最後に拠点を持ったことで、効率的な索敵が可能になった。


「帰りを考えて無視していたエリアに入れます」

「欲を言えば中継拠点もほしいんだがなあ」

「手ごろな立地が見つかればねえ」


 2つの拠点を基点に、おおむねマップ半分のエリアを1日の索敵圏内に収めることができるようになったわけで、移動経路のついでとしてではなく索敵行動として魔物(獲物)を探しに行けるようになったのだ。

 幅20kmという、徒歩には広大なマップだが、湖沼群エリアなら船でふらふらできる範疇に収まる。


「いたぞ、新鮮なカエルだぁ!」

「放てー!!」

「ヒャッハー!!」



   ☆



 湖沼地帯での索敵圏の拡大を受けて、秋季の後半は山岳部での到達圏リーチゾーンを拡大することに注力した。

 平たく言えば、自動車で移動するための道路網を広げた。


 以前、山岳部から扇状地を抜けて手ごろな水辺まで移動する道だけを建設した。

 しかし、氷河から流れ出た川の向こう岸は手つかず。


 従来の経路周辺は移動ついでに狩るものの、それ以外は放置していたわけで、いわゆる再出現リポップ時のランダム性を踏まえると、いずれは手つかずエリアに魔物が溜まる偏りが発生していただろう。


 そこで、氷河や雪原で安全を確認し、通れる場所を増やす。

 本格すぎるオフロードには建設重機を投入し、荒々しいグラベルレベルまで整地する。


「いたぞ、新鮮なクソ野郎だぁ!」

「放てー!!」

「ヒャッハー!!」


 湖沼群エリアでも、移動・展開の迅速化を狙ってゴムボートを増台。


 先行偵察はもちろん、本隊の搭乗した観光釣り船よりもラフな接岸で先行上陸し、もやい綱や渡し板を引き受けることで接岸・上陸・展開フェーズの時間短縮を狙う。


 1回につき数分程度の差ではあるけれど、その数分差がより魔物の近くに上陸展開することを可能とした。


「周回前提なら浮き桟橋でも設置した方がいいか?」

「桟橋つくっても、その周辺に群れられて上陸できませんじゃあ意味ないしなあ」


 結局、固定桟橋は河川交通の出発地点にあたる扇状地のきわと、終着点にあたる第十層への渓谷拠点前の2カ所のみ造作した。


 その他地点での着上陸に関しては、釣り船にマストを立て、両舷に渡し板をはね橋風に配置。

 フェリーなどのRORO船のランプウェイの小型版というか、古代ローマ軍船の鳥の首モチーフのタラップ(コルウス)的なものというか。


 クチバシ部分が地面に食い込んで仮留めの役割を果たすので、船を固定するフェーズを省略した迅速な展開が可能になった。


「のりこめー!」

「ヒャッハー!!」


 クラン『アスタリスク』メンバーが蛮族化している?

 そうね……



   ☆



 秋季の末には転生三人組が1レベル上がって73。

 ほか、参加メンバー各自1~3のレベルアップとなっている。


 ヨッシーの【個人倉庫】、レベル73での追加コマンドは『遠隔搬送』。

 きわめて近くのみだが、なんとブツに触れていなくとも入・出庫が可能となった。


 第八層でのブツの入手も順調。

 容量15倍の魔法鞄マジックバッグは歴代1位タイ、同様に歴代1位の容量となる収納の腕輪も1つ新規取得している。


「やはり無欲こそが勝利のカギか!?」

「うーんこの、煩悩まみれの発言よ」


 オークションには14点出品で金貨365枚。


 結構な額のはずなのだが、組合の汗かきおじさんには「今回は控え目でしたね」などと言われてしまう。

 おじさんの感覚もだいぶ麻痺しているらしい。




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― 新着の感想 ―
英雄的な山や谷はないものの、人生的な山や谷はたっぷりあり、その上で淡々とダンジョン攻略を進めてトップに躍り出る。 読み応えもたっぷりあって大好物です どのようなエンディングを迎えるのか、最後まで楽しみ…
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