表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
道連れ転生  作者: 凡鳥工房
11章.欲望ドライブ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

130/157

11-10.順調に停滞



 ラッド、ヨッシー、セバスの転生三人組はラッドの執務室に集まった。


「丸っと10年でレベル63。数字だけみればいいペース」

「直近1年はレベル58から63。悪くはないが、鈍化したな」


 第八層へのショートカットの確認や秘密基地ツヴァイ整備に時間を割いたこと、休暇を取って家族サービスを強化しようキャンペーンなど、鈍化要因はある。

 いずれも必要なことであり、レベルの数字だけを追いかけると判断を誤ることにもなりかねない。


 転生発覚からの十年間に、いろいろな問題だったり課題だったりに出合ってきた。


 直近ではアドルフとリーリアによって、ヤクザ稼業な探索者とカタギな街人との意識の違い、感覚の違いが顕在化した。


「レベル100を達成しないといけないのは自分たちの都合、アドルフとリーリアには悪いことをしたな」

「付き合わせているのは、ほかのメンバーも同じです」


 メンバーは開示された情報で背景事情を理解し、ラッドの【通信販売】による利益も得ている。


 だからメンバーには納得感があり、非メンバーの、普通の女の子のままだったリーリアにはなかったとも言えてしまう。


 そのリーリアも、肌着や粉ミルク等が、このクランだから入手できると理解してから態度が激変したというか。

 理解はともかく対価には納得したのだろうか。


 人の数だけ、思いのすれ違いも増える。


「うちの両親が、使用人意識薄いのもこの類なのかなあ」

「クリスのとこもそうだし、カタギと探索者云々より親意識で面倒みてやってる感じゃね?」


 セバスとクリスの親は、長幼の序を当然とし子に仕えるという感覚がない。

 老いても隠居で子を監督という、役人コミュニティの常識的ライフスタイルの中で生まれ育ってきたためだ。


「自分とこは割と公私の区別つけてる気がするな?」


 ラッドとプリムローズの親は職人コミュニティ生活が長く、クラン幹部を親方衆に置き換えて見ている。

 そのため我が子であっても、上役という意識がある。


 とはいえ、これも探索者という分野違いだからかもしれない。

 同じ職人としてだったら、かなり複雑な感情を抱いたであろうことは想像に難くない。


 転生三人組の感覚や判断が、常に正しいとも状況に適切であるとも限らない。

 譲れない芯の部分はともかく、いろいろな意見を聞きつつ、逐次すり合わせていくしかないだろうと戒めあった。



   ☆



 秋季の年度会議、当面は第八層で活動の方針が承認された。


 第九層、そして第十層は、現在の探索者にとっては半分以上伝説の領域だ。

 手に入るデータも第八層までに比べ、質・量ともに見劣りする。


 まして、現在の探索者の最終目的地であり、知見が蓄積されているはずの第八層でさえ、データにない『セミファイナル』攻撃があった。


 ただね、あれは『攻撃』じゃないんだ。ただの重量軽減シークエンスなんだ。

 データになかったのも、そういう状況になるケースの少なさを考えればしょうがないよね。


「第九層のデータも洗い直していますが、未知の攻撃や現象への覚悟が必要です」

「とにかく広いそうですしねえ」


 ジュスティーヌはじめ、ユイやマリエルも眉根を寄せる。


Wショートカット(例のアレ)で改善したとはいえ、一度潜れば何週間かかるか」


 無意識に視線が集まったアドルフも渋い顔。

 リーリア様および義母様からご理解を得たとはいえ、長期の留守はまずかろうという空気がある。


「これからも出産、子育ては続くしな」

「そうそれ」


 夏季に引き続き秋季でも出撃予定のプリムローズだが、あくまで一時的な復帰。二人目三人目を産む気満々だ。

 平均すれば半分弱の子は10歳にたどりつけない世相を背景に、四人五人の出産は当たり前意識である。


「それに、魔法鞄マジック・バッグがなかなか手に入らないんですよね」


 実際の物資運搬はヨッシーの【個人倉庫】頼りだが、非常用やダミーとして是非とも揃えたいものである。


 現在までに入手できたものは4点。

 容量1.2倍のものはないよりはましという感じで、2倍が2点、5倍が1点。


「最初の5倍が大当たりだった、で終わらせたくないな」

「欲を言えば、全員に大容量が欲しいんだよ」


 アドルフとフィアフの発言に皆が同意する。


 ただ、ストーンゴーレムから得られるレアもん、魔法の武具と魔法鞄マジックバッグを含む魔道具とは、体感で6:4といったところ。

 しかも魔道具には、身につけるアクセサリ類も含めての話になる。


 もちろん、アクセサリ類が悪いわけではない。


 消費MP軽減の指輪を握って離さず、時ににやけているヴィオラがたびたび目撃されるように大当たりもある。

 魔法鞄マジックバッグほどの汎用性はないが、武具の収納に特化した収納の腕輪も嬉しい品だ。


 その収納の腕輪は現在6点。

 ポールウェポンのような長物や予備の盾を個人単位で所持できるので、前衛や斥候組に優先貸与している。



   ☆



 今年度のクラン公共事業は前庭部分の手入れで、別枠でお馬さん関連の話題。


 持ち馬はすでに1頭いるが、普段は牧場まきば預けで、たまに子どもたちを連れて遊びに行く。

 牧場ピクニックの一家団欒では、ここぞとばかりに乳幼児たちに突撃され、悲鳴をあげるセバスも風物詩だ。


「子どもが多いと大変だな」

「幸せの重さってヤツだろ」

「タスケテ……」


 ジュスティーヌがもう1頭買いと箱馬車の注文を主張。

 1頭はクランの厩舎にとどめることと、子どもたちの移動の安全を確保したいという。


「荷馬車、幌をはっても隙間から身を乗り出してしまうので」

「あー、子ども小さいうちはそうだよなあ」


 大人が箱乗りして落ちようがバカの一言で済むが、己の子どもとなればそうもいかない。

 しかもおおむね3歳以上は、目を離せない危険な自走爆弾と化すのだ。


 また、ジュスティーヌと転生三人組は仮にも騎士爵家や従士爵家の当主。

 華美は求めないが、それなりの押し出しのある『箱』も必要になる。


「欲を言えば2頭立てなんですよ」

「一代とはいえ騎士爵家、見栄よねえ」


 2頭立てくらいなら実用性十分だが、伯爵級は6頭立てでございますなんてのは見栄以外の何があるのか。

 替え馬にしても並走させれば済む話だし。


 見栄ついでに、馬主同士の付き合いもあるのだそうだ。


 ひと財産である馬を持てる、維持できるというのは、それだけの社会的地位ステータスの証明だしね。


 そういう界隈では繁殖の話題もあるそうで、優秀な牡馬はもちろん、牝馬の数と質がすなわち発言力となるらしい。

 マウント合戦に参加したくはないが、最低限話題に混ざれる程度の陣容を揃えたい。


「牝馬を押さえて、繁殖にも期待ということで」

「異議ナーシ」


 年間のクラン経費も一人頭金貨6枚の徴収に増額となった。



   ☆



 秋季の狩りは、2週潜って1週休み、これを4セット。

 ただし、アドルフほか出撃数の抑制を継続する。


「俺たち以外の男子組が半分休みってことで、レベル調整にもなっちゃったな」

「ちょうどいいっちゃいいだろ」


 転生三人組はレベル65に、男子組は67になった。

 ジャルマリスとウィスタリアが66、プリムローズは62となっている。


 期待のドロップでは、残念ながら魔法鞄マジックバッグは手に入らず。


 代わりというか、収納の腕輪は総数9点に増え、収納数量に差はあるが、出撃メンバー全員に持たせられるようになった。


 また、オークションへは武具類10点、魔道具類8点、そしてスキルオーブ4点を出品。


 自分たちに不要、かつ放出しても影響の低いもののため、レアリティでいえば、ノーマル(N)ハイノーマル(HN)ノーマルレア(NR)レア(R)といったあたり。

 呼び名はいろいろあるだろうけど、その程度の品ということで。


 そのため総額で金貨345枚にしかならなかった。

 金銭感覚はもうドボドボなのだ。


 ちなみに、探索者組合の転生三人組の口座残高、各自金貨800枚を超えている。

 他のメンバーも、出撃数に応じた残高がある。



   ☆



 なお、オークションで魔法鞄マジックバッグを確保するのは、組合の汗かきおじさんいわく望み薄。


 どのクランもまずは自分たち用に確保するわけで。

 しかも、こんなんなんぼあってもいいわけで。


「むしろ皆さんに出品が期待されているといいますか、やんごとなき筋から仲介や紹介を御下め……申し込まれることもあるのでございます」

「マジかぁ……」


 各クランには後ろ盾の貴族がいる。クラン『アスタリスク』にもだ。

 なので、組合経由で圧をかけようとする連中もいるらしい。


 だがしかし、ジュスティーヌに関連し、王弟殿下が王家の影を使ったがために発生したアレコレ以降、探索者組合の上層部ではジュスティーヌおよび転生三人組に対する過干渉を控えている。

 アクヤの街の代官様や衛視隊と親交深く、コンステラリス伯爵家にも連なるクラン『アスタリスク』に下手を打てば、最悪、私戦フェーデ案件にも発展しかねない。


 そんなことになれば、組合も、組合幹部連中も無事では済まなくなるかもしれない。

 火種は灰の中に、寝た子は起こさないに限る。


「組合も、苦労してるんだな」

「ええ、まあ、それが業務ですので」


 おじさん、新しいハンドタオルをプレゼントされて喜んでおられた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ