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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
11章.欲望ドライブ編

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11-08.爆発した不満



 冬季の会議では、大断崖ショートカット2連による第八層の本格的な攻略が議題にのぼった。


 なんと地上から3時間くらいで第八層に到着という、一般通過探索者たちからすればふざけるな案件。


 嗜みとして隠蔽には注意を払っているが、それでも抜け漏れは生じるもの。

 実際に探索者組合は、無属性魔術【見えざる手インビンジブル・ハンド】がカギだとはつかんでいた。


 クランハウス関連工事で土嚢袋をお手玉するマリエルなど、がっつりヒント晒したようなものだしね。


 ただし組合上層部は、王弟殿下の娘などの火種が見えているクラン『アスタリスク』に余計な手を出して、大火事を起こしたくはない。

 特に、ちゃんと組合(自分)へ利益をもたらしているうちは。


「えー、ユイとオルレアが産休に入り、ジャルマリスが復帰します」

「今季は出産予定がないので、夏季同様にということでガッツリ行こうと思う」

「いよいよだな!」


 アドルフが身を乗り出してやる気アピールをしている。


 なんといっても第八層は『お宝エリア』。


「おカネはいいんだ。俺も個人で魔法鞄マジックバッグ欲しいんだ」

「わかる」


 現在、クラン『アスタリスク』の持つ魔法鞄は、見た目の容量5倍の魔法鞄1つだけ。

 あるいは1つ手に入ってしまったから、2つ目、3つ目への欲が膨らんでいくものだろうか。


「こればっかは運だからなあ」


 武具限定の収納の腕輪という魔道具アクセサリは3つ手に入っている。

 こちらも当面はクランの管理にして、前衛組の持ち替え用に貸与扱い。


「アクセサリ系はさほど場所とらないし、取り置き権利増やしてもいいかも」


 そういうことになった。


 蛇足だが、特に身につけることのできる魔道具を装身具アクセサリと呼んでいる。

 指輪、腕輪、ネックレスなどの形状が多い。


 特に高レベルの探索者がぶっ飛んだファッションをさらけ出してチャラチャラしていたら、それは実用上身につけている魔道具アクセサリの可能性が半分くらいある。

 ぶっ飛んだセンスをお持ちの可能性も半分くらいは捨てられないのが、目立ってナンボ意識のある探索者業界だ。


「ま、いつものようにレベル停滞までは通うつもりで」

「その間に、出てくれー出てくれーだな」


 なお、欲しいものほどドロップしない、物欲センサーというものがあるという。



   ☆



 4週行って2週休みを2セットの欲張り構成でお送りした冬季のダイブは、トラブルありで進行。


 セミファイナルことストーンゴーレムのアーマーパージ、遮蔽はとっていたが跳弾で骨折したこと。

 アイアンゴーレムのリボルバーカノンを半端に受けた衝撃で、腕が肘からちぎれかけたこと。


 いずれもアドルフが被害にあい、偽ヒーラーのセバスの迅速な対応で肉体的には事なきを得たが、心理的なダメージが残った。


「俺、レベルだけの張りぼてで、技量が追いついてないんだ」

「うちのクラン、みんなそうだけどね」


 愚痴を聞いたフィアフがいうには、ちょっと根深いかもだそうだ。


 【安息プチ・ケア】に代表される闇魔術で一時的なメンタルケアならできるのだが、原因はソノママなので根本的な解決にはならない。


 転生三人組にしても、そもそもメンタルケアができていたのなら前世ヨッシーはエクストリーム紐なしバンジージャンプなんてしていない。


 しっかり休養を取ってよく寝るとか、誰かと話すことで自分の状況を整理するとか、苦手意識があるなら避けるか立ち向かうか決めるとか。

 そういう、一般論以外にどう対処すればいいものか、手をこまねいている状況である。


 ただし、数字としての結果は良好で、クリス、アドルフ、フィアフはレベル64に。

 転生三人組とジャルマリスが61、ウィスタリアが60に到達した。


 ヨッシーの【個人倉庫】は、レベル59で1辺が500mとヤケクソな容積になった。


 同じくレベル61で『倉庫番』という追加コマンド。

 これは指定の倉庫空間内に入って作業ができる人員を指定するもので、ヨッシーが『収容』しなくても、自分の意思で入ることができる。ただし出口は固定。


 人数制限があるため、ラッドとセバスに付与した。


「指定の倉庫空間ってのがミソだな」

「とりあえず移動時の待機空間を指定しておくが、これ、二人の収納庫として使えるってことだよな」

「出口固定って、悪用のしがいがありそうですねえ」


 だからなんで君たちは、目的外使用に目を輝かすのか。


 これも義務教育の敗北ってヤツなのか、はたまたTRPG界隈におけるジャパニーズ・マンチキン教育の賜物なのか。

 闇は深まるばかりである。



   ☆



 冬が去れば春が来る。


「この年度で私たちも20歳、いやー、20歳ですよ20歳。とにかく元気にやっていこー」

「「おー」」


 春季定例のお誕生日おめでとうの会、冒頭あいさつで気勢を上げる。

 抱っこ紐で赤子を抱えたジュスティーヌは、とにかく元気だった。


 そしてこの春にはユイ、オルレア、そしてアドルフの嫁のリーリアの出産が予定されている。


 休みの都合のせいか、出産時期の被りが目立つ。

 といって、初産のころのようなドタバタはもうないので、まとまるならそれはそれでという空気もある。


 ダン活では、出産対応もあり、頑張った冬季の引き換えに休みを大きく確保。


 ただし、ダブル・ショートカットのおかげで第八層まで気軽に行けてしまうので、完全休養ともしない。


 推定出産予定日周辺と被らないように2週ダイブを3回の予定を組んだのだが、リーリアで予想を外した。


 これにはアドルフの強制休暇で対応。

 稼働8人体制だったので、1人抜けてもなんとかなる。


「私たちは、いつ動けるか動けないかの把握が重要でしたからねえ」

「おかげで狙った子づくりもできるんだけど」


 ジュスティーヌとマリエルはじめ、転生三人組およびそのパーティ運営に慣れているメンバーたちは、それこそ学院パーティのころから生理周期を記録して把握している。


 しかし、学院に行っておらずパーティのメンバーでもないリーリア嬢には、そのような記録がない。

 むしろ記録を取って生理周期を把握し、家族でもない人間にまで明かすことに強い抵抗感を持っている。


 社会風俗的にエロスには比較的オープン、むしろ下世話傾向すらあるが、それでも秘め事、恥じらい事に分類される生理。リーリア嬢の感覚は、ごくごく普通のことではある。


 春季でクリスがレベル66、アドルフとフィアフが65、ジャルマリスとウィスタリアが63、転生三人組が62となった。



   ☆



 第八層でのレアもんは、数量的にはだいたい期待値通りで推移したため、冬季からはオークションへの出品も再開。


 武具でいえば品質の目安でもあるグレードはレアリティとも連動するが、グレードやレアリティの高さがイコールで価値というわけではない。

 ユイ愛用の重量軽減メイスのように、低グレードでも替えが効かないモノもある。


 スキルオーブも同様で、比較的レアリティの低い【剣術】だの【槍術】だのは強い人気があるが、高レアな身体強化系【バルクアップ】の人気は、ちょっと……。


 【バルクアップ】って、魅せ筋なのよ。ビルダー的な。

 実用重視の探索者や軍人系には評価されないのもむべなるかな。


 むろん、高レアリティかつ人気もありそうな【六代目剣聖流大剣術】や【聖騎士流剣術】みたいなものもある。

 扱いに困るので、とりあえず忘れることにしている。


「『意地で眠気を飛ばす』スキルに価値があるのはわかるが、自分では使いたくねぇ」

「そんなスキルを使ってまで働きたくねぇ」

「ブラックのにおいがする」


 一点特化メタの価値は、それが効果を発揮する場面の価値ではある。


 いえ、ブラックなお仕事用ではなくてですね、睡眠系の状態異常を仕掛けてくる魔物、いましたよね?

 ああいう相手に耐性のあるなしって、界隈の人権問題ですよね?


 ええ、クラン『アスタリスク』は、風で吹き飛ばしてからバッサリとか、遠間からブスブスとか、耐性必要ない対処法をお持ちですけどね。


 そういうわけで、スキルオーブについても、自分たちが使わず、かつ、影響の低そうなものをジュスティーヌ通信等で告知後におそるおそる出品。


 会うたびに出品催促してきた汗かきおじさん、目玉品になるとたいそう喜んでいた。


 冬季と春季で、武具類に魔道具やアクセサリ、そしてスキルオーブ、総数で65点を出品。

 落札総額から手数料等を引いて金貨788枚。


 備品管理台帳より第五層品については、権利者である長期休止中のマリエルや引退済みのプリムローズにも該当分を分配した。



   ☆



 春季での探索者活動はおおむね順調だったが、私生活では大きなトラブルがあった。


 いや、トラブルと言うのは違うかもしれない。

 この春に二人目を出産したリーリアの、ずっとくすぶっていたであろう不満が爆発したのだ。


「何週間も留守にして、待ってるのが辛い。大ケガもしたのに、なんで探索者を続けるの!」

「ケガをするのも仕事のうちだし、深層ほど1回あたりの日数が伸びるのはしょうがないじゃないか」


「貯えは十分なんでしょ? もう探索者なんてやめて!」

「おカネのためにやってるんじゃないんだよ」


 うん、まあ。

 正しい正しくないではないのだ。


 アドルフ・リーリア夫妻の家庭内の問題におさまらない騒ぎとなり、赤ん坊や子どもが泣き叫ぶ修羅場を経て、ひとまず二人を物理的に隔離するに至った。




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