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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
9章.フォローアップ&モラトリアム編

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9-10.アリーサポート刷新



 夏季の終わりに相談を受けた、ジュスティーヌの抱える問題について、経緯をたどるために時間を戻そう。


 転生三人組にとっては押し付けられた爆弾というか、もとより抱え込んでいた地雷というか。

 しょうがないので打ち手を探ることにした。


「寝込みを襲われて、できちゃった(てへぺろ)なんてされちゃ、こっちに標的タゲ移る」

「てへぺろ」


 セバスチョップ。

 ジュスティーヌはおでこを抱えた。


 まず、状況を整理。


 王弟殿下、ジュスティーヌの血縁上の父がごり押しをできるのは力があるからだ。

 逆に、ジュスティーヌに力があれば、たとえ殿下のご家来騎士長に敗れたとしても、知ったことかをごり押しできるだろう。


 この場合のパワーとは我を通す背景。プリミティブな暴力から、財力、権力なんでもありだ。


 まず、プリミティブな暴力。

 これに関しては、できることはやっていると転生三人組は胸を張る。


「そうね。まさか2年でレベル30に届くなんてね」

「あーうー」


 そして、パーティとしてメンバーに対する配慮が不足していたとも思わない。


 関わる肩書が大きいだけで、家庭の問題だ。

 よそ様のご家庭事情にクチバシ突っ込んだら抜けなくなるじゃないですか。


「それは……そうねえ」

「あーうー」


 仮定の話ではあるが、絶縁宣言されてなお、約定の勝負をごり押ししてくるようであれば、たとえ決闘に勝ったところで素直に諦めるとも思えない。


 プリミティブな暴力を敷衍して、ジュスティーヌが王都に殴り込みをかけるというのなら影ながら応援するのはやぶさかではない。

 しかし、連座で責任ひっかぶせられるのは御免だ。


 庶民上位層の財力も、本物のお貴族様・王族様相手では鼻くそ以下。

 権力にはとんとご縁がない。


「そうねえ……」

「あーうー」


 だが、ツテというものも力になる。


 争うお相手に王弟殿下を想定する以上、政治的な意味で味方を増やすことは必須だろう。


「というわけで、お手紙攻勢をかけてもらう」


 差出人はたかが一代騎士爵な小娘である。

 なるほど両親の血統的にはそこそこの駒ではあるのだろうが、序列でいえば慮外、半ば以上、放置される程度の立ち位置だ。


 返事はもとより、まともに受け取ってもらえるとも期待してはいない。


 でも、周囲の皆様がご存じのことを、まさか知らないではすまされないのが社交の場というものではありませんか?

 他家のゴシップなんて、特に話題になりやすいでしょう?


 ジュスティーヌと王弟殿下との関係、特に相手の不義理により絶縁済みの別家であることを周知すれば十分とする、いわゆる宣伝戦の端緒だ。


「なるほど」

「へえ、広く知らせること自体が手なのね?」


 また、絶縁状を送るときに添え状や早馬を出してくださったアクヤの街の代官様は、お味方であると推測できる。


 すでに夏季も終わりだが、お礼の品を揃えるのに手間取ったとかの言い訳で、可及的すみやかにお礼を名目に、面識と、できれば助力を請うておくべし。


「なるほど」

「……助けを求めたのはあたしたちなんだけど、あんたたち本当に庶民の出なの?」


 転生三人組は、前世の人生経験と、数多くの物語や実話、歴史を嗜んでいるからね。

 後方軍師面ならお手の物よ。



   ☆



 お礼言上とお手紙攻勢は、秋季のうちに一定の効果は得られた。


 国王陛下任命のアクヤの街の代官様は気さくなお方、あるいは気さくを装うことができるしたたかな政治家であらせられた。


 ジュスティーヌとの面談を受け入れ、お礼の言葉と物品をにこやかに受け取る。


 代官様は、学院からの叙爵要請を認め、上奏した当人だ。

 ジュスティーヌや転生三人組との寄り親・寄り子的な関係はないけれど、自分の治める街の高額納税者、しかも頑張っている若者への庇護意識がある。


 政治家としての嗜みで決定的な言質こそ与えなかったものの、ぽつりと漏らした「王弟殿下にも困ったものですなあ」の一言が、彼の立ち位置のすべてなのだろう。


 あと確実に味方といえるのは、母方のおじい様だそうな。


「保険に庶子の娘を差し出した、前伯爵様ですか?」

「忌憚なく言えばそうです。おじい様、思うところはあるようです」


 現王弟ということは、現王様の即位前は王位継承権持ちの王子様なわけで。

 万が一はないにせよ百が三くらいはありうるとして、側仕えに人を出すのは当然の貴族仕種だろう。


 だが前伯爵様、お手付き・愛人扱いはともかく、その後の娘、そして孫娘の扱いに不満あり。


 離れ住まいとかの待遇の格差は、正妻様の手前もあると理解はできる。

 しかし、病を得て死ぬまで、宿下がりを許さなかったのは致命的。毒殺だって疑えてしまう。


 ジュスティーヌにとっても、コレが父親を見限った最大の転機だそうだ。


 そして、面白いところからの返事もあった。


「え、ほんとに?」

「国王陛下、ですよねえ?」

「本物だと思うけど、封蝋印の種類がわかんないわぁ」


 国璽とか王家印とか個人印とか、いろいろあるからね。

 どの立場での発出文書なのかの判別にもなるのだけど、知らないものはしょうがない。


 定型文をカットし要約すると、『ボーヴァルディ騎士家の成立を寿ぐ。王と王家、王国によく仕えるように』。


「認識しているという意思表示ですし、敵対でないだけ十分では?」

「なるほど」


 王様は、弟殿下が勝手に王家の影を動かし損害も出した件、報告を受け事情も把握している。



   ☆



 残るは闘争と逃走の準備。


「後者は、ダンジョンで死んだことにでもして匿っていただけません?」

「自分たちもマークされるだろうから、長期的には無理だぞ」


 これ、あたしも一緒に死なないとダメよねえ、などとヴィオラは考えている。


 前者についてはこれまで通りダンジョンアタックであり、秋季は総じて順調に推移した。



   ☆



 冬季も引き続き、2パーティ同時進行と、別口の第六層活動を行う。


 クリスは第六層のみ参加で、マリエルと入れ替えになる。


 第五層からのゲートのある廃屋周辺を伐採し、数十メートルの見通しを確保。

 せっせと穴を掘り、堀と土塁で胸高の遮蔽を構築。


 第四層のゲート部屋に続き第六層でも拠点整備を進める旧14号パーティ、おおむね好意的に受け取られている。


 より奥へ向かう諸先輩方もにっこりで、組合で手に入る地図よりも詳しく、第七層ゲートへの道のりも教えてくれた。


「道なりに伐採進めてもらうだけでもかなり助かるしな」


 話を聞く限り、道なりで30km以上、へたすると40km以上あるようだ。

 足場と視界の悪い密林の獣道に時間をとられ、水を補給できる泉を経由するため最短距離でもない。


「第六層を抜けるのに、俺たちはまるまる3日をかけている」

「第七層側に拠点作ってあるから、そこまでたどりついて一息って感じだな」


 魔物の徘徊する密林内で野営できるぐらいでないと、この先は目指せないということだろう。


 第七層到達者は金級。

 現在のアクヤ・ダンジョンでは20パーティ未満、100人くらいではないかと推測している。



   ☆



 毎回、反省会であーでもないこうでもない言っていれば、作業方法も洗練されていく。


 まず、ドローン空撮により行動範囲プラスアルファを俯瞰で把握。


 次に、セバスの【魔力感知センス・マジック改】により、扇形、深度およそ200メートル圏の魔物を把握。

 プリントアウトしてきた空撮図にプロットする。


 魔物の中には、おそらく【魔力感知】系の能力で索敵を行っているものがいる。

 ゲーム風に言えば、セバスの放った魔力波に反応して、一気にアクティブ化するのだ。


 特に蜂は敏感で、蜘蛛は慎重に、大蛇はのんびりと向かってくる。

 逆に、植物系と蛹は動けないし、芋虫と毒蛾は本来の索敵圏に入らないとアクティブ化しない。


 もとは単に探すだけのつもりが、オート釣りだしができることに気づけば、当然それを利用する。


「待ってりゃ攻めてくるんだから、ラクなもんだ」

「簡易とはいえ防御陣も設置できるしな」


 簡易陣地はヨッシーの【個人倉庫】から即展開。終わったらしまっとけばいい。


 魔物の波が落ち着いた後に、もう一度【魔力感知センス・マジック改】で先のプロットとの違いを確認。


 コチラに関係なく移動しているようなら芋虫か毒蛾、動いていないなら射的にGO。


 かくして周辺を掃除し安全圏を確保した後で、チェーンソーが唸り、獣道にそって伐採を進める。


 切り倒した木や灌木などは、【個人倉庫】容量だだあまりのヨッシーが収納。


「こんなん、ナンボあってもいいからね」


 拠点に積んで乾かし、薪にするもよし。

 休日に空地で処理するもよし。

 マルク親方にこっそりひきとってもらうのもよし。


 冬季の終わりには、プリムローズがレベル15に到達。

 アドルフとフィアフが25、クリスと転生三人組は34、ユイが35、そしてジュスティーヌとヴィオラが36となった。


 ウィスタリアのお腹もすっかり大きくなって、後方母親集団の微笑ましい目線と支援を受けている。




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