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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
9章.フォローアップ&モラトリアム編

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9-09.デュアルファーム育成



 意に添わぬ婚姻を避けるために貞操を差し出されたジュスティーヌ。

 転生三人組もあえて深くは突っ込まず、覚悟はわかったとしつつも明言は避けた。


「わ、わ、私の貞操では不満ですかー!」

「いや、そういうわけでは……」


 ラッドとヨッシーが素早く一歩下がったために矢面に立たされたセバス、ヘルプとアイコンタクトをとるも、ヴィオラお姉ちゃんゴメンネのポーズ。

 そういうところ、主従でよく似ている。


 よそ様のご家庭問題でしょと傍観の転生三人組を、一躍当事者の片割れに引っ張り出す、ヴィオラ渾身の一手だったのかもしれない。


 とりあえず、とりあえずと宥めて、改めて善後策を相談することを約束して虎口を脱した。


 そういうわけで、この話はまた改めて。



   ☆



 ジュスティーヌの家庭問題のように、全体会議で話し合うにはそぐわない話題はある。


 そこで、不在のクリスとウィスタリア以外のメンバーと個別面談を行い、今後の方針の参考とした。


 まずは全体の方針と、その結果。


 ウィスタリアは寿引退だし、ジュスティーヌとヴィオラを除く女子組は、いわゆる二軍枠に入る。

 ジュスティーヌとヴィオラは、対騎士長戦正面突破のためにレベル上げとけ路線を継続。


「ただし、二軍枠でも当面は最前線にもつきあってもらうぞ」

「しょうがないなあ」


 寿引退への道筋と配慮がはっきりしたこともあり、ユイも不満はなさそうだ。


「プリムローズ込みの二軍組と、アドルフとフィアフ組、これを同時進行でフォローアップする」


 第四層のプリムローズ組と、第五層のアドルフ・フィアフ組の、2つのパーティを同時に動かす新体制だ。


 暫定組み分けは第四層にプリムローズ、オルレア、ジャルマリス、そしてマリエルにジュスティーヌとヴィオラの6人。

 第五層がアドルフ、フィアフ、転生三人組とユイ。


 ダンジョンの行き帰り、そして秘密基地拠点での宿泊は一緒に行う。

 この際の両パーティの運搬はセバス担当。


 残念ながら、マリエルの【念動手サイキック・ハンド】では、現状最軽量のエコノミックボード(命名:ヨッシー)でも運航できない。

 緊急避難として、一人ずつ抱えて飛ぶならできる。


「別口で、旧メンバーでの第六層の拠点整備も行う」


 これは第六層以降をすこしでもラクにするための、足場作り。

 現状、休憩のために毎度第四層まで戻ることを考えれば、今後へのメリットは大きいと考える。


 いずれも3回から5回の出撃を予定している。



   ☆



 マックスたちも、第四層のフォローアップ組と、第五層の前線組とで同時行動するそうだ。


 在来メンバーのうち最低2人が、フォローアップと第三層拠点での荷物番をローテーションでこなす。


「2パーティ分の荷物でも、見張り番は1人ですむしな」

「やってみて、うまくいくかどうか。問題があれば、修正・調整で済むかどうか」

「新しいことってのはそういうもんだ」


 定例情報交換、今回はマックスとベンジャミン兄さんの出席。


「しかし、学院時代からこっち、君たちとの差が開くばかり。自信を失うよ」

「自分たちはいろいろ恵まれているからな。……その分、対価も払わないといかんのだが」


 転生三人組は、レベル100達成できなかったらペナルティ確約ですからね。


 きっつい条件を、ゲームとして無理矢理楽しんでいる。

 浮世のしがらみめいたものは、意識の上ではおまけ扱いになるのもむべなるかな。


「そうか……まあ、そういうもんだよな」

「条件はそれぞれか。私は、見える結果ばかりに気を取られすぎか」



   ☆



 秋分祭週では、帰ってきたクリスとウィスタリアが、神殿の結婚式で祝福を受けて幸せそうだった。


 式やお披露目は実家でもやったが、祝福を授けられる聖職者が不在のため泣く泣く送り帰されたそうだ。


 なお、結納品として差し出した微妙すぎる魔法の武具、『素早く振ると残像が発生する剣』は大ウケだったとか。

 刃物は縁起がどうとかの風習はないと聞いて、チョイスに協力した転生三人組もにっこり。


 まさかそれが伝家の宝刀として後世まで大切にされようとは、この時誰も思わなかったのである。


 理由も振るっている。


 実用品だと、使われて、いずれ壊れていただろう。

 飾っておくのにちょうどいい品だったから、後世まで残ったのだ。


 ま、そんな与太話はさておき、ラッドは父親と兄貴とマルク親方との話し合いの末、両親を引き取った。

 なんならプリムローズの両親もこっちを見ているような気がしないでもない。


 ラッドの父親は下男枠に採用とし、通いの下女枠であった母親ともども、ラッド持ちの一軒屋に住んでもらう。


 かねて待望の男手の増員に、セバスの父がもろ手を挙げて歓迎、早速飲みに連れ出していた。


 ヨッシーはオルレアとジャルマリスを連れての食べ歩き。


 対象を屋台に限定しなくなり、探索者街のお食事処マッピングを始めた。

 いずれ『ヨルグ・ティル・グッドマン、グルメガイド』を刊行してくれるかもしれない。


 セバスは姪っ子にイヤーッされた。



   ☆



 秋季はハネムーン期間ということで、クリスは原則全休で同意。


 第四層と第五層とで2つのパーティを同時に動かす新体制は、初動でのトラブルはあったものの、おおむね順調だった。


 トラブルといっても、プリムローズが大断崖ショートカットで気絶しかけ、秘密基地でやさぐれくつろぎというニューモードを見せてくれた程度。


「私たち、苦労して第四層でギリギリの狩りをして卒院したのに!」

「私たちもそうですよ?」


 ジュスティーヌ先生、帰りの片道だけとはいえショートカットを使うようになったのが3年次の冬季です。

 大断崖に作られた秘密基地の運用開始は春季。


 行き帰りの両面でショートカットこそは卒院後の話ですが、在学中からご利用なされていましたよ。


「さて、現在開示可能な情報を伝える」


 改まったラッドに、一様に身構えるメンバー。

 何のことかと首をかしげたプリムローズも、数分後には頭を抱えて蹲ってしまった。


「やばいやばいやばい」

「この感じ、なんだか懐かしいねー」

「ねー」


 オルレアとジャルマリスは、まるまるプリムのまわりをぐるぐるまわる。


「そろそろまいりましょうか、ユイ奥様」

「そうですね、マリエル奥様」


 女子は現実主義者なのだ。

 主にラッドの【通信販売】で得られる恩恵をレクチャー(レク)されたプリムも、実際にブツを手にすることで気持ちを切り替え、あっさりと開き直った。


「お兄ちゃんが凄いのはいまさらだもんね。女神さまの祝福だって、名誉なことだし」

「厄介な連中に目を付けられたくないからな。メンバーだけの秘密だぞ」


 秘密が漏れた場合にどういうことになるかは、ジュスティーヌとヴィオラがやけに解像度の高いレクを施してくれた。


 ただし、レベル100を目指すことにはご不満もある。


「もっと一緒に家で過ごしてほしいのに」

「ああ、深層に行けば行くほど、ダンジョン暮らしも長くなりますもんね」


 そのへんはどうしてもね。



   ☆



 メンバーにベネフィットを提供し、仲間の絆を固く保つ【通信販売】だが、1年以上ランクアップしていない。


 クランハウスの一部電化や、家族寮建設の際のお茶うけに落成記念品、縁ある人たちとの折々の各種贈答品などなど。

 加えてチェーンソーや防護ゴーグル、燃料代などでそこそこのポイントを使っている。


「パターンだと、次は5000万ポイントだからな。もうちょっとかかる」

「品揃えに不満はないし、ポイントもこの先どうなるか」


 第四層、第五層ドロップの偽銀ことプラチナからの変換が現在のポイントの主力だから、第六層以降はファンガス農園のキノコ頼り生活に逆戻りの可能性もある。


 おいちゃんとはいつも笑顔の取引をしているが、あっちも出せる本数は限られる。

 そうなると、現在の支出を賄えない。


 ある程度のポイント預金を残しておく必要もあるのだ。


 第六層ゲートそばに整備している拠点では、伐採した丸太を組んで遮蔽にしたり、日除けのターフを張ったり。


 組合への営業詣での際に、担当の汗かきおじさんからも尋ねられた。


「その、第六層を切り開いているという話がありますが?」

「切り開かなきゃ進めないですよね?」


「……そうですね?」

「そうだろ?」


 現地を知らないおじさん、質問が悪かった。


 改めて調査員を走らせた組合上層部の御意向は、旧14号パーティにこのまま頑張ってほしいというものである。



   ☆



 秋季を通してみれば、総じて順調と言えるだろう。


 レベルでいうとプリムローズが14、アドルフ・フィアフが24に。

 転生三人組は32、そしてジュスティーヌとヴィオラ、ユイとマリエルが34になった。


 プリムローズはさっそく青銅級に昇格。


 ウィスタリアも無事懐妊。


 ヨッシーの【個人倉庫】、レベル31では追加コマンド『庫内換気設備』。

 以前の『同期標識』で指定した実空間と、今回のコマンドで指定する倉庫区画の空気を循環させるものらしい。


「生物入れても大丈夫ってことかな?」


 使い道はともかく、動物実験での結果は大丈夫そうだった。




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