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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
9章.フォローアップ&モラトリアム編

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9-08.ニューカマー撹拌



 夏季、第十一週の始まり、まだクランじゃないクランハウスに明るい声が響き合う。


「卒院おめでとー」

「ありがとうございます! これからもよろしくお願いします!」


 後輩第二陣プリムローズは、加護ギフトで土属性の魔術士を得たが、魔術科ではなく探索科に入った。


 マルク工房コミュニティから学院を経て、ラッドのお嫁さんになると乗り込んできた刺客である。


 ジョゼフとカールの腹黒双子ともども、騎士科3年卒のエリートを生み出して無事に卒院した。


「まあ、先輩方のおかげで、やることはわかっていましたしね」

「本当に、ラクではなかったけど、できることはわかっていたしね」


 レベル12卒院までの騎士科ロードマップ、ジュスティーヌ補遺により注意点や対策が以前よりも具体化されている。

 また、魔石拾いセットに、比較的安価な紙マスクの普及と、補助器具面でもばっちりサポート。


 一代とはいえ従士爵が認められるだけの功績は挙げてきた転生三人組なのだ。


 しかし、それらの底上げあってなお、今年度の騎士科3年卒エリート様はおひとりであらせられた。


 なおもて、エリートの名に相応しい難易度よ。


「騎士科以外は卒院レベル10か8ですから、苦労して12までやる意味、メリットがない」

「だから騎士科だけ、リーダーだけが空回りってね。他所のパーティ事情、傍目には笑えるけど、とばっちりがむごかったね」


 腹黒双子が愚痴る気持ちは転生三人組もよくわかる。


 出る杭はぶっ叩く。

 嫉妬ジェラシーは、溢れてしまうものなのだ。


 そんな難事業を、黒幕として成し遂げたジョゼフとカールは、事前の予定通りマックスのところに行った。

 同じパーティだった探索科の2人も一緒だ。


 名目上パーティのリーダーだった地方出の野心家さんは、3年卒のエリートとして近衛騎士を目指し王都へ。


 いい感じに操られる才能ありの逸材だったとは、操ったジョゼフの評である。



   ☆



 朝一で、ウィスタリアの実家に結婚報告に向かうクリスとウィスタリアを見送り、残るメンバーで今後の、特に来季の方針を話し合う。


 トピックはウィスタリアが寿引退で、プリムローズが加入。


 ウィスタリアは探索者に復帰するかもしれないし、しないかもしれない。彼女はそのどちらを選んでもいい。


 プリムローズは16歳で寿引退予定。

 探索者稼業は3年間の腰掛というとアレだけど、そこまでがむしゃらにやる気はない。


 だってプリムの目的はラッド(お兄ちゃん)のお嫁さんになるで一貫している。


「ならわたしもー」

「おカネはもう十分だしねー」


 オルレアとジャルマリスも同様で、プリムローズが加わるのを機に、いわゆる二軍になりたいと言ってきた。


「今季だけでも金貨50枚超えたもんな……」

「オークション分で40枚あったしね」


 アドルフとフィアフは遥か彼方を見る目をしている。


 だって、魔法の武具って本当に品薄なのよ。

 旧14号パーティが久方ぶりの第五層採掘者で、武具は使っていれば壊れるもの。


 筋金入りの微妙品といえど、マックスたちも言っていたように、「まず、あるかないか」。


 それが金貨10枚ぽっちのおカネだけで解決できるなら、喜んで払うよね。

 オークションへの参加権というハードルはあれど、その先はハードルどころじゃないツテ・コネ頼りの青天井、無限の地平線プレミアムな世界なんだし。


 遠い世界に精神を旅立たせているアドルフとフィアフはさておき、ウィスタリアが先例となった寿引退は避けて通れない。


 ユイもマリエルも、早ければ来年には寿引退する気満々である。


 ユイはともかくマリエルにはお家の事情がある。

 むしろ、子種の本体を逃がしてたまるかの打算込みであっても、すぶすぶなぁなぁでダン活に付き合ってくれている印象さえある。


 ジュスティーヌとヴィオラはどうだろう。


 血縁上の父に絶縁状を叩きつけたとはいえ、一応のタイムリミットは半年後にある。

 その時点をやり過ごしたとしても、やはり数年先には寿してほしいなとは、転生三人組もパーティメンバーの幸せを願う。


「確かに、子どもも欲しいですねえ」


「ティナ、押しつけじゃない相手を見付けられるの?」

「あーうー」


 やれやれとヴィオラは目を伏せる。


「相談したいことあるの。後で時間をちょうだい」

「ん、わかった。今日はこの後マックスたちとの例会だから、夜でいいか?」


 全体会議にはそぐわないこともある。


 今回は、パーティ編成と人材計画の大幅な見直しが必要だという認識で一致し、結論は出さずに保留。


「そいじゃ、今日はここまで」

「みんなの前で言いにくいことがあれば、こっそりどうぞ」

「腹に抱え込んでドッカーンなんてのが一番ヤだからな、そこんとこ頼むぜ」


 お誕生日席に陣取る転生三人組がまとめて、本日の会議を終了した。



 ☆



 マックスたちとの定例の情報交換会、あるいは茶をしばいて駄弁りあう会も予定通り開催。


 交流の場にはマックス、オルガ、ベンジャミン兄さん、そして加わったばかりのジョゼフが出席した。

 マックスの率いるアライアンス内の、各グループ代表みたいなものだろう。


「だからよぉ、俺らにとっては停滞なのよ」

「しかし、私たちを放置して自分たちだけ進んでも、先々厳しくなるでしょう」

「俺はその前に抜けるがな」


 オルガの口火にジョゼフの反論、一歩どころか言ってることは全身引いてるベン兄さん。


「……私たちのところはこんな感じなのさ」

「お疲れ」


 前髪が気持ちしょぼくれて見えるマックスに、転生三人組も真顔で応じた。


 アドルフたちのフォローアップを1年続けてわかったのは、先行組と同じ事をしていては、同じだけの差がついたままになるということ。


 効率という意味では多少の時間短縮になっているが、それだけだ。


「そう。別々にやっていると、追いつくこともできない。私はそれを懸念しているのですよ」

「で、さっきの俺になるわけだ。てめーらを育てる間、俺たちは足踏みだってな」


 ジョゼフとオルガの言い分は、どちらも正しい。

 当人たちもそれはわかっている。


 ベン兄さんは、そもそもの音楽性が違う。


「オルガたちが先に進んでも、第五層までならベン兄さんが後進の面倒を見ることもできるんでしょうね」

「そうなれば、俺は引退までファーム担当か」

「その第五層に、行けるようになるまでが当面の問題ですよ」


 現在のジョゼフ・パーティ4人では、第四層も無理だ。


「こっちとそっちの二軍同士で協力……ないな」

「ないのか?」


 プリムローズはまだ知らないが、他のメンバー、いまさら大断崖ショートカットと秘密基地生活を諦められると思う?


 まあ、それは言えないので。


「自分たち、目標や方針が違うから別パーティ、別アライアンスなわけだろ」

「ああ、確かに」


 これが数十人規模の巨大クランで、はっきりと構成員の階層化、組み分けがあるのなら。


 だが旧14号パーティにしてもマックスたちにしても、現状は2ないし3パーティでのアライアンス規模でしかない。


 はっきり組み分けしてしまうと、ジョゼフの懸念のように二軍はいつまでたっても二軍となりかねない。


「ほかにも、お前たちのとこは結婚でメンバーの引退、こっちは俺はじめメンバーの結婚相手を見付けないとなんだよ」

「そして、アライアンスとして結婚相手をどう扱うか」

「悩みの種は尽きないかあ」


 人の集団である以上、さまざまな摩擦が生じるし、人の数だけ悩みの種類も増える。


 駄弁り会はそれぞれの抱える問題の解決には至らなかったが、何が問題かを認識する機会にはなったかもしれない。



   ☆



「で、こそこそ内緒話ってなんだ?」

「そこまでは言ってないんだけど、あれよ、半年後の件」


 ジュスティーヌが、血縁上の父から16歳をタイムリミットに婚約、婚姻を迫られているという件。


「先日の密偵騒動で私からは絶縁したんですが、はいそうですかと素直に認める人ではないだろうなあと」

「押し付けとはいえ『約定』に従い、騎士長と決闘しろってね」


 絶縁も撤回させるつもりでしょうとヴィオラ補足。


「そうか、大変だなとしか言えんぞ?」

「一応、レベル30台にはのったんだし、俺たちでできることはしたと思うぞ」


 パーティメンバーに対する配慮はするけれど、家庭のご事情は筋違いお門違いが転生三人組のスタンス。


「まあそうなんだけど、そこを一歩踏み込んで、ティナを助けてほしいのよ」

「というか、ヴィオラはそれでいいの?」


 監視役でもあるんだよねと問えば、一切指示がないのと。

 指示がない以上は、現場の自由な裁量で判断するしかない。


「あたしの育ったところ、あくまで王家に仕えるのであって王弟殿下の配下ではないし」


 おそらく密偵であろう不法侵入者を闇に葬った件のように報告していないこともある。

 あるいはすでに組織から切り捨てられている可能性もあるが、ヴィオラはそこまで説明しない。


 長らく一緒にいれば情も移る。

 ヴィオラお姉ちゃんはティナの味方なのだ。


「対価として、この子の貞操あげるから、本当にお願い」

「え!?」


 今まさに売り飛ばされたジュスティーヌであった。




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