↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊能物語  作者: 野沙朝臣
鬼たち
78/80

最弱チーム 語り手:美倉紅玉

 命の価値は測れない。この考え方は本当に道徳的だと思う。理論でしか物事を考えられない俺は、こういう理論化された道徳にすごく助けられてきた。

 「ネクロマンサーっていうのかな?」

 槿花の魂を術の下に入れたのは間違いだった。欲しい情報だけじゃなくて、知りたくなかった情報も入ってきた。槿花は出しっぱなししないといけないから、槿花一人で俺の1日に使える霊力量の半分以上を使っている。正直、槿花を出さなければ野田優愛にだって、俺一人でそれなりに迫れたかもしれないのに。

 「なに?」

 俺達の移動は藤樹瑠衣が本部から車をよこした。黒のセダンである。本部も金使いが荒い。セダンなんかよりもワゴンか軽トラが便利でいいだろうに。

 それはともかく。

 俺達は今回組まれたチーム分けの中で最弱である。霊力量さえなんとかなれば、蛇崎家の当主か空音くらいには並べるのだろうが、そうでないのが現実だ。野田優愛だって、まだ鍛錬が足りていない――足りることはないのだが――。

 「だから、紅玉くんの霊能。似てるよね、漫画とかに出てくる死霊操術士(ネクロマンサー)に」

 移動中のセダンの中、俺と野田優愛の間の空気は冷え込んでいた。冷え込むと言うよりも、もはや一触即発である。

 「似ていると言われても――。俺自身、俺の霊能は把握していないんだけど」

 嘘だ。把握していないどころか、把握せざるを得ない状況だった。

 「嘘でしょ、実際、今も霊能使ってるし」

 「!!」

 俺は俺の瞳孔が閉じていくのがわかった。野田優愛の丸顔に大きく陣取っている無垢な瞳に、危機を感じた。

 なぜだ。なぜわかっている。俺は何もヘマはしていないはず。石谷空音は霊能が霊能だからわかっただけで、それ以外の霊能で相手の霊能を知ることなんて……。

 「あ、ごめん。知られたくなかったよね」

 ごめん。と、両手を顔の前で合わせる野田優愛が心底不気味だった。

 「別に。あいつ以外にそういう奴が、34支部側に居たってことに驚いただけだ。バラさなければそれでいい」

 最悪、蛇崎家の当主にさえバレなければ、それでいい。

 「それで、紅玉くんの霊能って、操っている相手の霊能も使えるの?」

 「……」

 まだ続けるのか。確かに、34支部から群馬県は距離があるし、これから飛行機だから暇ではあるが。

 「教えてよ〜。仲良くなりたいんだって」

 黙らせたいが、あの手を使っていいものか……。

 「使えないこともない。ただ、自分の霊能を使う倍以上の霊力が必要だから、俺の霊力量だと無理だな」

 ここは素直に答えておこう。それに、ここで恩を着せとけば、こいつの霊能も聞き出せるかもしれない。

 俺と槿花の魂の間で、最近、議題になっていることは、野田優愛の霊能についてだ。空を飛べる。念動力を使える。魔法のように炎を出したり雷を出したり、テーザーガンのようなマネもできる。そのうえ、今は騙りのような事もできている。

 ここまで来たら、ただの霊能じゃない。というか、霊能の体系にすら組み込まれていない――もっとずるいなにかだ。

 「そっか……。それは残念。槿花ちゃんの霊能も見てみたかったんだけどなー」

 野田優愛は、俺との間に座る槿花の顔を覗き込んだ。

 「ね!槿花ちゃん!」

 「……」

 「……ね?」

 槿花は答えなかった。というより、固まったまま動かなかった。その顔色は蒼白で、ぶるぶると震えているように見えた。

 「……まずいな」

 俺はぼそりと呟く。せっかく、あの時俺が気を遣ったのに、その効果が薄れてきたのかもしれない。

 「え?なにが?」

 「あまり槿花に話しかけるな、その方がお互いに有益だ」

 「なんで?」

 野田優愛は、未だに無自覚なようだ。蛇崎家の当主と空音は一体何をしていたのだろうか。まさか、当事者の口から言わせるつもりなのだろうか。

 「今は聞かないほうがいい」

 俺はそう言ってシートを倒した。セダンの重厚なエンジン音が耳に障る。

 「そっか――」

 シートが邪魔で見えなかったが、野田優愛の表情は曇っているような気がした。


 「それでは、私はこれで」

 運転をしてくれた本部の職員は、そう言ってお辞儀した。俺達も礼を言ってお辞儀する。職員が帰っていくのを見とどけ、空音から配られた航空券を確認する。

 「群馬行きの5時からか……」

 とりあえず俺は2人に航空券を渡す。

 「チェックインしてから自由行動にしませんか?」

 「わかった。私は空港初心者だし、スケジューリングは紅玉くんに任せるよ」

 「任されました」

 俺は2人の前に立って先導する。世にも名高い羽田空港は、東京駅よりもダンジョンだ。槿花の経験がなければ、俺も迷っただろう。

 「無事、乗れてよかったね〜」

 時は過ぎて飛行機の座席。窓側3席を一列に取られていた。俺達は揃って息を吐いた。

 「なんで3メートルの距離で迷うのですか……?」

 ド級の方向音痴を発動した野田優愛を、俺は睨みつける。野田優愛が窓側に、俺はそのすぐ隣に座っているから、すごく至近距離だ。

 「なんでだろうねぇ……。方向音痴ではないはずなんだけど」

 「嘘つけ。……そう言えば、あなたの悪魔も家の中でも研究所でも迷子になってたな」

 「そうなの?」

 悪魔は本人の潜在特性まで利用することがあるから、その流れで引き受けたのだろう。全く、旅に向いていないメンバーだ。鬼を倒せるのかすら怪しいうえに、空音には出発前に「結界を見張ってるだけでもいいから」とまで言われてしまったが、そんな軟弱なマネはしない。倒す算段をつけるために一番最初に出発した。

 「大丈夫かよ」

 「たぶん?」

 何はともあれ、俺達最弱チームの旅は始まった。

 霊能物語本編第七章「鬼たち」第六節「最弱チーム」でした。お楽しみいただけたでしょうか?お楽しみいただけた方は、評価とブックマークをお願いします!コメントまでしていただけると嬉しいです。誤字報告等は、小説家になろうのログインに関係なく、常時受け付けておりますので、作品の質の向上のため、報告していただけると助かります!それでは、次のお話でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。