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霊能物語  作者: 野沙朝臣
透石偉黎
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霊能物語1周年記念 祝話「短編版霊能物語――其の六」 後日談

 一般人の救出に霊能を使えるというのはかなり楽で、というのも、霊能の存在自体が、ほとんどの国家で国家機密に指定されているから、一般人に霊能を知られたら、その記憶を消すか、最悪、いなかったことにしなくちゃいけない。でも、この2人は霊能の存在を知っている元一般人だから、そういう事は気にしなくていい。

 「じゃ、飛ぶよ」

 私は、陽さんと陸奥守駿を両肩に担ぎ上げる。

 「いや、ちょっと待ってよ。まだ心の準備が⋯⋯」

 「え、飛ぶってどいういう」

 男子高校生2人が、情けない声を上げる。特等席だというのに、何をそんなに喚いているのだろうか。石谷空音ですら、悲鳴なんて出さなかった。

 「ま、あなた達が思ってるほど絶叫系じゃないから」

 ――気にしないで。

 2人が肩でジタバタと暴れるので、私は力を入れて押さえつける。

 「ダメダメダメ」

 「お客様、口を開けると舌を噛み切りますよー」

 「噛み切るの!?」

 駿さんはかなり怖がりなようだ。私は、そんなに心もとなく見えるだろうか。まあ、私のほうが彼らより10センチほど背が低いので、仕方がないとも思うが。私は肩で騒いでいる駿さんを尻目に、両足に力をいれる。ちょうど、山頂が崖のようになっているので、飛びやすい。できる限り高く飛べるように、深く踏み込んで精一杯ジャンプする。

 「うあああああああ!」

 駿さんがジェットコースターで落てる時のような叫び声を上げる。まだ垂直に飛んだだけだというに、もう気分は落ちているらしい。私は落ちる前に、霊力で足場を創る。

 「うああああぁぁぁあ?」

 「落ちてない⋯⋯」

 駿さんと陽さんが、不思議そうに下を見た。地面を創ったわけじゃないから、約1000m下に地面が見える。それに、霊力は透明だから、ガラス張りの吊り橋以上にスリリングな見た目だ。今、空撮したら、空に浮かぶ人の写真が見えるだろう。

 「どういうこと⋯⋯?」

 陽さんと駿さんは、答えを求めるように視線を私に向けた。

 「陽さんも駿さんも、化け物、見えたでしょ」

 「化け物?ああ、あれか」

 駿さんは頷き、陽さんは相槌を打った。どうやら、性格のタイプは違うらしい。

 「あれの正体、何か説明できる?」

 「正体?妖怪とか、そういう系?」

 陽さんがわかりやすい相槌を打ってくれるから、私は喋りやすかった。気分も前のめりになる。

 「そ。あれ、鬼ね」

 「オニネ?」

 「鬼。ほら、昔話とかに出てくる⋯⋯」

 私がそう言うと、駿さんが「桃太郎に退治されたやつ?」と、聞いてくれた。

 「そう、それ。まあ、実際のところはちょっと違うんだけどね」

 実際は――ちょっと違う。でも、今、彼らにあまり多く語るというのはあまりに酷だろう。おいおい、誰かが話せばいい。私でも、パパでも、ママでも――誰かが。そんなことを考えながら、私は1段1段、霊力で足場を創って下りていく。

 30分ほどかかっただろうか。私は、鳥居を飛び越えて関係者達が集まる広場まで下りたった。ママが、渡そを見つけて「瑠衣!」と駆け寄ってきた。

 「ママ、どうしたの?」

 ママは私に抱きつくと、「心配したのよ⋯⋯」と震える声で言った。

 「心配なんていらないよ。私なら勝てるんだし」

 親の心子知らず、という言葉は、子供の間には理解できない。私はママが泣いている理由を頭では理解していたが、共感はできない。

 「あの〜。泣いてる所申し訳ないんだけどさ⋯⋯そろそろ」

 駿さんが、ぐったりとした様子で私に言ってきた。私は、駿さんと陽さんを下ろしていないことに気づいて、ゆっくりと地面に下ろす。2人とも疲れていたようで、その場にへたり込んでしまった。特に、陽さんは誘拐されていたのもあったのか、力なく座り込んで、そのまま眠ってしまった。傷はないけれど、風呂には入っていなかったようで、臭いも酷い。恐らく、健康にも何らかの影響が出ているだろう。

 駿さんと陽さんに救護隊が駆け寄るのを見て、ママは仕事を思い出したようで、私を離し、スマホを取り出して何かを確認した。

 「じゃあ、ママは後処理があるから。瑠衣は家に帰ってて」

 「うん。わかった」

 私とママは互いに手を振りあって、ママは支部の職員達が集まる場所に戻っていった。私もそっちに行ったほうがいいのだが、まだ挨拶にも行っていない派遣職員が自分たちの仕事を片付けたというのも心象が悪いだろう。私はその考えに甘んじて、今日は帰らせてもらうことにした。


 広場ですら、鬼が出していた影響を確認することができた。鬼が消えたことを知ったのか、人里から山の方へと向かう弱い怪異達を何体も見た。鬼が目覚めたことで、この村の以上な量の怪異が出てきていたんだろう。私は自分の疑問にそう勝手な答えを付けて、帰路につこうとした。

 「なあに、勝手に帰ろうとしちゃってるのかな?」

 後ろから、勢いよく鞄を私に押し付けてきたのは、石谷空音だった。そう言えば、私はこの場所に空音を置いていた。

 「どうしたの?」

 「どうしたの、じゃ、ないよ。私をここまで連れてきたくせに、勝手に帰ろうとしてんじゃないよ」

 「陽さんと駿さん、救護室にいるよ?」

 「うーん、そっちも気になるけど⋯⋯」

 「行ったら?」

 私がそう言うと、空音は思いが吹っ切れたように私の隣に並んで歩いた。

 「いいや。どうせ、再来年まで毎日一緒だし。どっちかっていうと、瑠衣ちゃんの話を聞きたいかも」

 「そう?」

 そう言われると、話したくなってしまうじゃないか。私が照れていると、空音が私の顔を覗き込んできた。

 「私を放り出して、どんな刺激てきな冒険をしてきたのか、をね?」

 「え?」

 「話してくれるよね?」

 「も、もちろん」

 「じゃあ、とことん聞こうじゃないか」

 空音は、しれっと私の手を握ってきた。少し力が入っていることからも、逃さないという意思を感じる。

 「さ、話してみなさいな」

 「う、うん⋯⋯。それじゃあ、空音を置いて中に入ったあたりから⋯⋯」

霊能物語1周年記念祝話「短編版霊能物語其の六」でした。お楽しみいただけたでしょうか?お楽しみいただけた方は、評価とブックマークをお願いします!コメントまでしていただけると嬉しいです。誤字報告等は、小説家になろうのログインに関係なく、常時受け付けておりますので、作品の質の向上のため、報告していただけると助かります!それでは、次のお話でお会いしましょう!

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