29話:異世界ラブホテル
立ちんぼの女の子たちが"客を呼べる部屋"を作れないだろうか?
言うなれば"異世界ラブホテル"である!
異世界ラブホ構想を聞いた女性陣の反応は様々だった。
「他の置屋と違うの?」
「使うのいくら?綺麗な部屋だと嬉しいな」
「受付とか必要だけど大丈夫?」
「いつできるの?」
肯定的な声と疑問の声が混じる。
「将来的にあったら良いかもなってだけだ」
期待した女の子たちが不満を言い出す。
俺は湯屋を無料で提供してきた。
それで文句を言われるのは少しイラっとする。
けれど、彼女たちの機嫌を損ねるわけにもいかない。
俺は仕方なく笑ってごますのだった。
ーー
家に帰ると愛しのエリーゼが出迎えてくれる。
「由太さん!お帰りなさい!」
「エリーゼ、聞いてくれよー」
下働き時代と変わらず、俺はエリーゼに慰めてもらうのだった。
彼女が人間の姿になってから、胸に顔を埋めることはしなくなった。
なんとなくフェアじゃない気がしたからだ。
代わりと言ってはなんだが、頭をよしよししてもらった。
なぜだろうか?ムスコが大きくなっていた。
- おい、クソチ〇コ!帰る前にヌいてやったばかりだろ!
「お客さんが喜んでくれているなら良かったじゃないですか」
エリーゼの一言で現実に引き戻される。
変わり者の女性読者がいれば覚えておいてほしい。
男は本当に四六時中、タイミングを問わずにエロいことを考える生き物だ。
俺以外の男がそうかは分からないが、少なくとも俺はそうなのだ。
「施設を作るとしたらいくらかかるんだろ?」
「村に聞きに言ったらどうですか?」
「そうだな。まずは見積もりを貰うところからか」
市場に行って聞き込みをしてみるか。
「エリーゼはローション改良は順調か?」
「んー、思ったより上手くいかず」
「そうなのか?」
「どうしても質が変わってしまい」
なるほど。エリーゼも頑張ってくれてるのだ。
俺も泣き言を言わずに頑張らねば。
ーー
翌日、俺は村の中心地にやってきた。
市場で聞き込みをするためだ。
「すみません」
「いらっしゃい!なんにします?」
「あの、実は、家を建てる職人さんを探していて」
「あ?買い物もしないで話を聞きたいってのか?」
「あ、いえ、なんでもないです…」
やってしまった。
商売の基本はWin-Winである。
一方的な頼みは嫌われるのが当然だ。
- 酒場に行ってみるか
俺は初めての村の酒場にやってきた。
- これは経費で切れるだろうか?
経費どころか税法すらない世界なのだが。
いや?本当にないのか?
その辺りも含めて聞き込みが足りないな。
俺は小奇麗な酒場を見つけ、そこに入ってみることした。
「いらっしゃい」
村の飲食エリアの一角。
昼過ぎの暇な時間なのだろう。席数に対して客が少ない。
「おひとりですか?」
「はい」
「こちらどうぞ」
俺はカウンターに通される。
亜人の店主が目の前に立ち、オーダーを取る。
「何にします?」
「何か飲み物をください」
「酒でいいですか?」
「できれば酒じゃない方がいいかな」
「あ、そうですか」
しまった。
金を使わない客だと思われれば話がしにくい。
「すまん、酒は苦手なんだ。代わりに料理をもらえるか?」
「そしたら、料理に合わせて飲み物を用意しますよ」
「おすすめは?金は気にしないでいい。おすすめを頼む」
「それなら...あ、良いのが入ってますよ」
「なんだ?」
「良い羊の肉があるんです」
マトンか...悪くない。
「じゃあ、それを頼む」
「量は?」
「任せる」
「承知しました」
なんとか乗り切ったな。
それにしてもマトンか。
ベトナムで食べて以来だ。
亜人の店主は手際よく羊肉を捌く。
既に肉は焼かれた後だ。
これを直火で炙って温め直すらしい。
「その捌いている包丁は何製なんだ?」
「オオトカゲの鱗を研いだものだのですよ」
この世界で金属器はあまり見かけない。
存在はするが、希少なのようだ。
「良いものを使ってるな」
「お客さん分かる口かい」
「いや。でも、この店全体に拘りがあるの伝わる」
これは嘘ではない。
豪華な店ではないが丁寧に掃除されている。
客に良いものを提供する意思がそこにある。
店主は少し機嫌が良さそうに見える。
薄紫の肌で毒々しい見た目だが、いい人そうだ。
「この店はいつからあるんだ?」
「もうかなり前ですよ。子供が生まる前なので」
「子供がいるのか?」
「二人。最近は森を駆け回って遊んでいますわ」
亜人の店主はケラケラと笑う。
堀の深い顔に濃いシワが浮かんだ。
「あんた、名前は?」
「ジョヴァールです。お客さんは」
「由太だ。堀辺由太」
「珍しい名前ですね」
「あんたもな」
すぐにジョヴァールの飯が出てきた。
簡素な味付けだが、肉本来の旨味が口いっぱいに広がった。
添えてあった潰した芋も塩味があって最高だった。
「ジョヴァール。ここの店を建てる時は誰に依頼した」
「知り合いのドワーフですよ」
「そのドワーフを紹介してもらえないか?」
「いいですけど」
「紹介料とかが必要か?」
「いやいや。実は今そこで食べてるヒトなので」
「え?」
振返るとドワーフの男が飯を食っていた。
早々に出会えるとはありがたい。
ジョヴァールがドワーフに声をかけてくれる。
「ちょっと!ガンダルーガさん」
「ん?なんだ?」
ガンダルーガと呼ばれた男は顔を上げる。
少し離れた席からこちらを見た。
「この人が話聞きたいって」
「依頼か?」
「いや!なんか分からないけど!良い人そうです!」
ジョヴァールよ。紹介の仕方が雑過ぎやしないか?
俺は席を立ちあがり、ガンダルーガの元へ行く。
長い髪と髭を蓄えた小柄な男の前に立つ。
「堀辺と言います。実は家みたいなものを作りたく」
「金はあるのか?」
「その辺りも分からなくて…」
「デカさによるが。何を作りたい?」
「置屋を」
「あ?なんだって?」
こんな公衆の面前で聞き返さないでくれ!
「だから!置屋です!」
「うるせえな。聞こえてる」
じゃあ、聞き返すなよ。
「そうじゃないくて。置屋を作る許可は取ったのか?」
「許可?許可がいるんですか?」
「ったく。話にならねーな」
「すみません…」
「いいか!?ここら辺の置屋は親方に許可の元で運営されているんだ」
「全部ですか?」
「全部だ!ロタの風俗店は親方が握ってる!嫌なら個人売りしかねえ!」
タリアンだけじゃない。全て親方が握ってるのか。
いや、ローションが置屋に卸せない時点で気付くべきだった。
「分かったなら止めておけ」
「待ってくれ。許可がないとどうなる」
「ふざけるな!建てるのを手伝った俺たちまでとばっちりだ」
「…そうだったのか。すまない」
「いや、俺もでかい声出して悪かった。でも、それは諦めな」
俺は返事をしなかった。
ガンダルーガは話を続ける気はなさそうだった。
「堀辺さん。ダメだったみたいだな」
「いいんだ。紹介してもらったのに悪かった」
「いや。俺は先に話を聞くべきだったよ」
それは一理ある。
「ありがとう。ジョヴァール。ご馳走様」
「いえいえ。そしたらお会計をお願いします」
「いくだ?」
「50万ポニカです」
「…」
- ランチの癖にいい値段しやがるじゃねーか
収穫はあったが、それ以前の問題だ。
村について知らないことが多すぎる。
村の中で行ったことのないエリアを探索してみることにした。
始めての土地での醍醐味と言ったらこれだろう。
「探査クエストだ!」




