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第23話:ウィークポイント

俺とエリーゼは村の中心地に向かっていた。


挿絵(By みてみん)


ゴブリン娘のラトリアと別れたのは、ロタの村の西側の大通り。

そこから真っすぐ東に進むと、その先に村の中心地があるのだ。


中心地には市場や酒場など、村の人々の生活拠点がある。

そこで飯を買って帰ることが、最近のルーティンになっていた。


「市場に着いたら食べ歩きでもしようか?」

「食べ歩き!いいですね!」


エリーゼの目がキラキラと輝いてる。

俺が市場で飯を買ってくるようになって、グルメになってきたな。


「エリーゼは市場に行くのは初めてか?」

「はい!まわりに身を隠すところもなかったので」

「じゃあ、初めてのお使い、やってみるか?」

「ん?」


このネタは、この世界で暗黙知ではないらしい。

俺たちは、内容のない会話をしながら大通り歩く。


10分ほど歩くれば、忌々しい建物が見えてくる。

二度と見たくもない、恥辱の地である。

何より、こんな大通りの目立つところに構えているのが腹立たしい。


「あそこな、俺の働いていた店」

「わー、なんていうか…」

「ボロいだろ?」

「ですね」


売春ロードと市場の間が、この置屋エリアだ。

正確には、大通りから南北に伸びる小道を行くと複数の店舗が見えてくる。

ちなみに、タリアンはここを南に下った先だ。


「このエリアに置屋が多い理由が分かるか?」

「そうですね…」


またエリーゼは顎に手を当てて考えている。

そのポーズが気に入ったのか?


問いを投げてみたが、これはビジネスに熟達していないと答えはでないだろうな。


「市場や酒場で食事をした帰りに、この道を通るからですか?」

「…」

「あれ?違いました?」

「違わないです」


こいつちょっと勘が良すぎないか?

敏腕マーケターにでも育つ気なのか?


「そしたら、立ちんぼが客引きする場所はどうだ?」

「客引きの場所ですか?」

「ああ。なぜ昼は一番西の端にいて、夜は置屋エリアに移動するのか?」

「んー」

「…」

「なんででしょうか?」


ー よし!俺の勝ちだ!

そう一瞬思ったが、急に恥ずかしくなった。


「西からやってくる旅人をひっかけるためだ」

「どういうことですか?」

「まず、村に着いた旅人へ最初に話しかける。その時には、"やっと着いたし、ちょっと遊んでいくか"となる可能性が高い。特に、物価がまだ分かっていない客には価格交渉がしやすい」


エリーゼは、くねくねしながら頭を揺らしている。

考える時の癖なのだろうか?


「でも、その時に遊んでもらえなかったら?物価が分かれば、割高だと思われませんか?」

「なるほど、鋭いな。しかし、旅人狙いの立ちんぼの器量は村一番だ」

「安い置屋の子たちを見ても、ラトリアさん達と比べてしまう?」

「そういうことだ」


これは、高いスーツを売るときの手法と同じだ

最初に高い服を着せて、その後に安いものを着せる。

すると質の違いを顧客は一発で理解するのだ。


ーー


そんな話をしいているうち、市場に到着した。


「何が食べたい?」

「串焼きがいいです!」


出たな、串焼き。

まあ、金の余裕はあるし、いいか。


「すみません!串焼きください!

「はいよ!何本だい?」

「エリーゼ、いくつ食べる?」

「んー、じゃあ10本で!」


こいつ、意外に食うな…


「そんな食えるか?」

「大丈夫です!」

「そしたら20本ください!」

「お二人さん、気前がいいね!」


店主は、炭火で焼かれた串を大きな葉で包んでくれた。

たしかに、この店主、ちゃんと見ると全く人間ではないな。

俺がどれだけ男に興味がないか、よく分かるぜ。


俺たちは、岩に座って串焼きを食べることにした。

エリーゼは、美味しそうにパクパクと平らげる。

歯もすっかり人間と遜色がないな。


挿絵(By みてみん)


串焼きは、インドネシアのサテみたいなイメージだ。

甘じょっぱい味だが、どんな調味料を使っているのだろうか?


ーー


串焼きを食べた後も、エリーゼはまだ食べ足りなかった。

その後も食べ歩きをしながら、市場を散策して物価や調達できる商品を調査をした。


こうして、日も暮れた頃。


「まだ時間はあるから、置屋街を視察するか」

「そうですね」


俺たちは、また大通りを歩いて西に戻った。

この時間になると道も暗くなり、アングラな雰囲気になる。


普段は、一人だとキャッチに話しかけれれるが、今日はエリーゼもいるので話しかけられない。


しかし、そんな俺たちに話しかけてくる奴がいた。


「あら、由太ちゃん」

「げ…」


挿絵(By みてみん)


それはメスゴブリンのナディアだった。


「おや、女の子連れてるなんて珍しいね。しかも人間かい?」

「はじめまして、エリーゼです!」

「あら、礼儀正しい!何?由太ちゃんの彼女?」

「いや、この子は…」


こいつら、直ぐに彼女にしたがる。

- 彼女じゃなくて嫁なんだよな(妄言)


「私は由太さんと一緒にローションを作ってます!」

「この子がスライム娘の管理をしてるのかい?」

「そうです!そうです!」


いったい俺は何回ごまかせばいいんだ…


「あ、そのヌルヌル、3本貰えないかい?」


俺はタリアンで配る試供用ローションを竹籠に入れていた。


「え、いいのか?」

「やっぱり親方のは質が悪くてね」

「そうなのか?」

「んー、なんか使った後に痒い気がするんだよね」


そう言えば、ラトリアもローションを2つ買っていったな。

これは、もしかして…


「ナディア、親方のローションってないか?」

「持ち歩いてないからね」

「そうか」

「今度持っていこうか?」

「いいのか!?」

「もちろん!由太ちゃんには世話になってるし」


よし!これはチャンスかもしれない

俺は、エリーゼのあの発言を思い出していた。


『急いで粘液を出すと、毒が混ざってしまうことがあるので』


これが相手の顧客離れの原因なら、徹底的にたたいてやる!

そのためにも、やはり聞き込みだ!

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