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第16話:綺麗な世界

俺は、ゴブリン娘3人娘と一緒に川に向かっていた。


挿絵(By みてみん)


デヴィが客の相手を終えたので、体を洗いに行くのだ。

立ちんぼの多くは野外で性行為をしており、終わったら水場に行く必要がある。


これは、この世界に避妊具がないからだろう。

というか、ナマでやりまくるのか…。


現代日本で生きている身としては、なかなかに恐ろしい。

いや、もう死んでいるのだった。


「デヴィとチェルシーは置屋は使わないのか?」

「私はお客さんが言えば使うよ!」

「私は…あまり」

「そうなのか?なんでだ?」

「まあ、高いからね!」

「たかが50万ポニカだろ?」

「「「え?」」」」

「え?」


俺は何か変なことを言っただろうか?

1万ポニカで100円。50万ポニカなら5000円くらいだ。


「由太さん…ここのお金の価値、分かってます?」

「いやー、そのー」

「村で働いたら、稼げても1日50万ポニカだよ」


なるほど、日給50万ポニカだと20日勤務で月1000万ポニカだ。

この村の平均月収は10万円くらいか。

つまり、物価が安いのだ。


「串焼きが1本で1万ポニカって聞いたんだが」

「そりゃ串焼きは1万ポニカするよ!」

「串焼きって高いのか?」

「当たり前じゃん!」

「普段の食事はパンだけとかですからね」

「串焼き…みんな大好き」


置屋の雰囲気もそうだが、感覚は東南アジアだな。


「そしたら、小さな竹筒1個で10万ポニカって高いな」

「そうですよ?だから安くしてください」

「んー、ちょっと考える」

「ほんとですか?!」


ラトリアは嬉しそうだ。


「でも、そんなに高いのに買ってくれるんだな」

「そりゃ、体は商品ですから」

「ラトリアは売れっ子だから一日に4人は相手にするんだよ!」

「4人は多いのか?」

「一日に1人いればいいよね?2人取れたら大漁かな!」


チェルシーが、紫色の丸い瞳をくりくりさせる。

普通にエグい話をしているのに「飯って何食べてるの?」くらいのテンションだ。


「そんなに客は取れないのか?」

「私たちは旅人向けですから」

「旅人向け?」

「一応、村の中にもお店があるんです」

「そこは…ロタの住人向けだから安い…」


つまり、彼女たちはインバウンド狙いなのだ。

色々と見えてきたぞ。


「ラトリアは、そんなに稼いでどうするんだ」

「どうって?家族を養わないといけませんし」

「家族?」

「私は、12人兄弟なので」

「え?な?12?」

「あたしは6人だよ!」

「うちは5人…」


どうやらゴブリンは子作り体質らしい。


「他の姉妹もここで働いているのか」

「いや!あたしのところはメスは1人だけ!」

「うちも…」

「私は一番下の子がメスですけど、まだ小さいですから」

「ゴブリンのメスは少ないのか?」

「そうだね!あんまり生まれないよ!」


なんと、メスのゴブリンは貴重なのか。

俺は3人をマジマジと舐め回すように眺めた。


しかし、ラトリアは少し浮かない顔だ。


「ラトリア。どうかしたのか?」

「いえ、私もあと数年で村の中に行くんだろうなって…」

「どういうことだ?」

「ゴブリンは歳を取ると鼻や耳、それと口が大きくなるんです」


鼻や耳や口がデカいメスゴブリン?

俺の脳内にはナディアの顔が浮かんだ。


「そうなると外の人を相手にするのは難しくなります」

「だから、若いうちしか稼げない…」


これは、ただの顧客ヒアリングのはずだった。

だが、気が付けば鬱々とした気持ちになっている自分がいた。


東南アジアの風俗街を思い出すからだ。

家族を食わせるために、街で体を売る少女たち。


そんな少女たちを買うのは"汚いことだ"という奴もいる。

だが、それは綺麗ごとだ。現実はそうじゃない。

同情では飯は食えない。彼女たちには彼女たちの現実がある。


それは、この世界でも同じだった。

いや、ゴブリンの売春構造は更に悪い。


子供をたくさん産むことで、少ないメスのゴブリンを引き当てる。

そして、その子が稼げなくなるまでに、なるべく多く稼がせる。


異世界でも、世界の厳しさは変わらない。

俺は、これ以上は何も聞けなくなってしまった。


そんな重い空気を払ったのは、チェルシーの一言だった。


「あ、川が見えてきたよ!」


そこは、綺麗な川だった。

森の中に流れる川は、日本の自然に似ていた。


デヴィはスカートをたくし上げ、水に入る。

股を洗う姿は、お手洗いの後のようだ。


川から上がると、ぶるぶると足を振る。

イヌみたいなデヴィに、ラトリアがタオルを渡す。


「ありがと」

「拭き布くらい持ち歩きなさいよ」

「ラトリアが持ってるじゃん…」

「デヴィはラトリアに頼り過ぎ!」

「んん…」

「ふふっ」


その姿は、本当の姉妹みたいだ。


挿絵(By みてみん)


この世界はクソだ。俺の生きた世界と同じくらい。

でも、同じくらいには、ちゃんと綺麗でもあるらしい。


ふと横に目をやると、少し離れたところに人影が見える。

あれは何だろうか?


どうにも人間ではなさそうだが…

おや?あれは…?


そうか、ゴブリン娘の他にもいたのか…

この村で、売春婦をやっている種族が!

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― 新着の感想 ―
最初の死に方とか面白くてギャグ寄りに見えたのですが、読み進めていくと細かい事情などリアルでシリアスな内容が違和感なく入っていて、あっという間に16話まで来てしまいました。続きが楽しみです。それと、仕事…
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