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隠し事

説教が待っていると明らかにわかる状況にエレノアはげんなりする。

けれどここまでの話を聞いていて、黙っていられなかったのだ。


少なくてもアレンには情報を共有してた方がいいわよね


「ほら、テオには何度も言ってるじゃない。礼服の男性がいるって」

「…ああ。俺は一度も会えてないから幽霊なのかと半ば疑ってたんだが」


本当にいるの?というようにまだどこか信じてないテオにエレノアは反論する。


「エルも書記官も見てるんだもの!幽霊なわけないでしょ」

「それで?何でまたそいつと会っているの?」

「会いたくて会ったんじゃなくて偶然いたのよ」

「それで話しかけられてひょこひょこ付いて行ったの?次無謀な事したら俺なんて言ったか覚えてる?」


テオの過保護かつ諭すような物言いに必死にあれこれ言い訳を考えていると、アレンから誰の事?と質問が入る。

王宮に来てから出会った事、偽物のエレノアと話していた事、ついでに助けてくれた事も話す。


「アレンに似た、服装からも多分上位の貴族だと思うわ。詮索しないでと言っていたからあまり表に出たくないのかもしれなけれど」

「ふうん。それでエレノアはずっとそんな怪しい人物の事を黙ってたの?まあ、僕が言われたわけじゃないから徹底的に調べたい所存だね」


テオと同じ事を言う…


「そういえば、離宮の花園を最奥の監獄だと言っていたわ。外に出てはいけない者を閉じ込める場所だって」

「何だって?」


アレンが怪訝な顔をして聞き返す。


「なぜ僕でも知らないことを知ってるんだ?もしかして場所も…?」

「城で一番魔力濃度の高い場所ってだけ。アレン知ってる?」


何か心当たりがあるのかアレンが黙って思案に耽る。かなり間があってから、こちらを見たアレンが再び質問してきた。


「僕に似てる…って言ったよね?何歳くらい?」

「えっと、そうね…。若く見えるけどアレンよりは確実に年上よ、もしかしたら私達よりずっと上かもしれないわ」

「……僕は今は社交から遠ざかっているけど、近しい親族はそれなりに顔は覚えているよ。けれど僕に似た人物というのが思い当たらないな。他に何か特徴はなかった?」


特徴と言われてもそんなに長い間会っているわけでもないので、あまり思い出せない。ただ、アレンに似ているのと貴族のような出で立ちをしている印象しかない。


「礼服、と言っていたよね。例えば勲章、徽章なんか目印になるものはなかった?」

「ああ…そういえば。あれは…女性と花?を象ったものを付けてたような…」

「それは…」


アレンが不可解そうに言葉を濁す。何かわかったのかとテオが尋ねると、アレンが話しを続ける。


「神殿の象徴だ」

「神殿…?神官って事か?」


神殿の紋章には水の精霊を象った女性と百合の花が共に描かれていると教えてもらった。


そういえば、精霊信仰の国だったわね。王族と神殿の関係性てどうなのかしら?


「神殿は王族とはまた違った勢力をもった者達だが、特に摩擦があるわけではない。王族も精霊を信仰しているので多額の寄付もしている。城の内部に礼拝堂もあるからね、信徒達が城内にいても不思議ではないが…」

「そういえば、初代王は精霊信仰の聖人だったのよね。アレンと同じ名前だと話してくれたじゃない?」

「そうだね。元々は王族が始めたものなのかもしれないが、今はもうきっちり分離してしまっている。けれど、そうか。信徒なら先ほど離宮の花園の話を知っていたのも繋がる…か」


アレンによれば、一番魔力濃度の高い場所というのは礼拝堂の事だと言う。とても大きな建物で、さらに地下には精霊の加護者が目覚めるまでの部屋があるのだとか。


「精霊は強い魔力を放つから何重にも結界の施された部屋があるんだ。何が起こるかわからないからね。けれど、僕がいた時に花園なんて見つけられなかったけど本当にあるんだろうか?やっぱり本人を見つけて問い質したいね」

「うーん、神出鬼没だから私もいつ会えるかはわからないわ。名前も知らないんだもの」


ならば神殿に問い合わせようと言ったアレンに、テオが待てをかけた。


「お前は第一王子との話し合いが先だろう。そちらは俺が引き受ける、その怪しい奴を探ってくればいいんだろう?」


確かにアレンばかりに負担がかかりすぎだと思ったと同時に、自分は何もしてなくない?となった。


「えっと、私は何をしたらいいかしら」


そう言うと、アレンとテオの声が重なった。


「ノアは大人しくしてて」

「エレノアは危ないから動かないで」


それって私だけ、役立たずじゃない?


せめて偽物のエレノアでも探って来た方がいいんだろうかと提案すると、アレンに却下された。


「僕が一緒にいる時はいいけど一人で行動は起こさないで。危険だから、というのもあるけど…一番は逃げられると困るから」

「え?どういう意味?」

「僕は精霊の加護者だし滅多な事では死なないから、今すぐ彼女を追求する事は可能かもしれない。けれどディザリアの時のように別の人間に移られたら探すのは困難を極める。相手の思惑がわからない以上、どう出るかわからないからね。だから可能な限り情報を集めてから挑みたい」


確かにそうだ、何より彼女は今私の身体を人質に取っているに等しい。


「そうね、私も出来れば自分の身体を取り戻したいし」

「あ…そうだね」


何?その反応…?


アレンはそれは思ってなかったというような表情をして、テオはこちらと目を合わせない。やっぱり二人ともどこかおかしい。


「ねえ、二人とも何か私に隠してる事でもあるの?」


その答えにすぐに反応したのはテオだった。


「それはまあ、言えない事もあるよ。ノアはすぐに顔に出るからね」


アレンは驚いた顔をして固まり、あまりに堂々としているテオを凝視している。


「でも俺が動くのは全てノアの為だから。それは信じられる?」

「それは、ええ…。私もテオを信じてるもの」


テオが珍しく笑ってエレノアの頭を撫でた。うまく誤魔化された気がしないでもない。

アレンが思いついたように、エレノアに話を振ってくる。


「もしどうしてもと言うなら、礼拝堂に行くのはどうだろう?あそこも調べる必要が出て来たけど、危険はないだろうし。けれど、師匠と一緒にね」


偽物に特攻されるよりはマシだという副音声が聞こえる気がする。


「師匠と?」

「僕はわからないけど、東の魔術師なら何か痕跡を見つけてくれるかもしれないから」


エレノアは任されたというように、強く頷く。

二人が何が隠しているのはわかったが、今は聞いて欲しくなさそうなので知らない振りをする事にした。

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