1章-17:前世の自分と託される望み
休憩中だけれども、ソクエルトさんとマズルさんの話し合いは続いていた。
僕はこれからバーリムと話をすることになるので、最初に対面した時の様に消耗するに違いない。なので、今はできる限り安静に過ごしている。
以前、バーリムは僕に望みを託したと言っていた。そしてそれは機会が来れば分かるとも。今回、ソクエルトさんに見立ててもらうのがそうであって欲しい。
「では、再開いたしましょう。」
ソクエルトさんがそう言うと、マズルさんが僕のそばにやって来た。
「カイム、ここからは私は立ち会わない。ことが終わるまで外に出ている。ソクエルト総教師がおられるから問題ないと思うが、つらければ申し出る様に。」
そう言って建物の外へ出ていった。
「カイム、今からあなたとバーリム、そして私の3人で話をいたします。」
ソクエルトさんは今からすることについて教えてくれた。
「まず、バーリムと貴方を会話できる状態にいたします。そこに私が加わりたいと思います。その為に、この場で儀式を行います。」
ソクエルトさんは僕に、中心に佇む像の前へ来るように言う。僕は言われるまま像の前に行き、ソクエルトさんと向かい合う。
「ではカイム、私が祈りますので、像の前でバーリムと先ほどの様につながってごらんなさい。」
「はい。」
ソクエルトさんが祈りの言葉を唱える最中、僕はバーリムに手を伸ばして、これまでの様にバーリムから発せられる波や風の感覚に集中する。
「請い奉るは、この上無く清浄にして万物の法を司る御身なり。此処は香薫に満ち、荘厳を具して法土になりける。今、法を開き、迷う者の闇を除く光明を注ぎ、道を示し賜らんことを。」
ソクエルトさんが朗々と唱える祈りの言葉が建物に響きわたり、すうっと耳に入って来る。聞き心地の良さから、力が抜けていく感覚に身をゆだねてしまう。
そんな中でも、視界にはバーリムと像を捉えている。今朝の水捧げのように大きく膨らんで、ソクエルトさんの祈りの言葉に反応しているみたい。ぼ~っとしている僕とは比べようもない。
一方、目の前の像も静かに佇んでいたけど、より存在感が大きくなっていく。天井の窓から注がれる光をその中にため込んでいるみたいだ。でもそれも収まり切れないようで、像から光があふれてきて、遂には光が僕らを飲み込んだ。目の前が白一色になり、たまらず僕は目を閉じた。
…気が付けば聖殿の建物とは違う場所に、僕はいた。目の前にはバーリムがいる。見渡す限りには川の様な流れがひろがっている。以前にも来たあの場所だった。
僕はさっそく、バーリムに語りかける。
「バーリム。僕の言葉は届いているの?」
「届いている。以前の様にそちらと意思疎通が可能だ。」
言葉を交わせる、今までと違って僕らを遮るものが無いんだと、それだけで嬉しくなる。
やり取りを続けようとしたら、大きな流れが飛沫をあげて、大きな光の玉がこっちにやって来た。光が治まると、そこにはソクエルトさんがいた。
「早速ですけども、バーリム、そしてカイム。ここでの行為はあちらでもあったことになります。それを理解し、それにもとづいて行動をするように。」
僕は以前、バーリムに名前をあたえた。その後、僕のいるところでも名前を呼べば反応があった。今回もそういうことなのだろう。
「この先、バーリムは縁者として、カイムの成長と伴って統合していく事になります。そして今、幼いカイムがバーリムとのつながりを感じられることには、それ相応の理由がございます。まず、バーリムがカイムに伝えるべきことから取り掛かりましょう。」
ソクエルトさんの言う、バーリムが僕に伝えるべきことというのは、きっとバーリムが僕に以前言った、僕に託した望みのことだろう。僕も知りたいと思いバーリムに目を向けた。
その思いが通じたのか、バーリムは僕に託した望みを語ってくれた。
「まず、我が望むのは幾度にもわたって繰返す、この在り方から解放されることだ。これを逃れる術をそなたに見つけて欲しい。我がそなたに身を注いだ様なことは、此度で5度に及んでいる。」
それを聞いたソクエルトさんが僕に分かりやすく説明してくれた。
まず聖殿でも教えてくれた様に、僕がバーリムと呼ぶ存在は、僕が認識しきれていない領域の僕であるということ。さらに分かりやすく言うと、僕という人の存在をもっと大きな存在が覆っているらしい。覆っていることをつながりとか結縁といい、僕らが縁者と呼ぶ存在の捉え方なんだそうだ。
次に、縁者の行く末について。縁者はつながっている人が成長していくうちに、自然と取込まれて、その人の支えになったりしてくれる。その人が命を終えると、それとつながる縁者も役目を終えて戻る場所があって、また縁者として新たな存在とつながることを繰返すのが殆どらしい。中にはつながっている人を操ったり、取込んでしまう縁者もいるそうだ。こうした縁者はその人が生きる場所を乱して、良くないことが起きる。そうならない様、ある程度の年齢になった子供は縁者について知識を与えられたり、僕の様な幼子には早く対処する必要あるそうだ。つまり聖殿には、縁者とその人の共存、調和、統合の手助けをすることが1つの役割があるみたい。ちなみに、僕とバーリムとがどうなるかは、これから次第と言われた。
そしてバーリムの望みについて。バーリムは少なくとも5回、縁者として、または僕たち人と同じような形で生死を繰返しているのだとソクエルトさんは言う。次のつながりが決まる前に、繰返す結縁から逃れたいそうだ。命が終われば、僕もバーリムと一緒に結縁を繰返すことにもなるみたいで、僕らで望みを果たす必要があるらしい。
ソクエルトさんの説明で、僕はバーリムについてと、託された望みについて理解できた。
「バーリムの望みを聞く限りでは、カイムに望みを果たすことを強要するわけではなさそうですね。ではカイム、貴方の選択次第でバーリムの望みは果たされるか、否かが決まります。貴方はまだ幼いですが、選択が必要です。選択によって私がどう対処するのかも決まるのです。」
そう言ってソクエルトさんは、僕に意志を問いかけるのだった。
ご拝読頂きましてありがとうございます。
ようやくここまで話が進めることができました。
もうすぐこの章が終わりまして、次の展開に移っていきます。
読者を選ぶこの作品ですが、これからもお付き合い頂ければ嬉しいです。




