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1章-14:聖殿の賢者と縁者の見立て(前編)

 案内の人を先頭に、マズルさんと並んで廊下を歩いてく。

 「マズル詠唱師、今回の見立てにお出で下さるのは、どういうことかソクエルト総教師です。」

 「ソクエルト総教師だと?」

 マズルさんが歩みを止めて、驚きの声を上げた。

 「はい。朝の儀式が終わってすぐに業務管轄課にお見えになられて、本日の面会届が出ているか確認に来られました。おそらく面会依頼に貴方のお名前があったからでしょう、この件を優先するとおっしゃって、午後の予定を調整することになりました。」

 案内の人はこっちに振り返って、僕らの面会依頼の対応について話してくれた。歩みが止まっているので、行く先に腕をむけて僕らに進むように促す。

 隣を歩くマズルさんの様子をうかがってみると、心なしか緊張しているみたいだ。

 僕らは続く廊下の奥へ奥へと進む。僕らの家よりも大きい部屋をいくつも通り過ぎて、視界が開けた。目の前に池が広がっていて奥の方には林が見える。

 その池をぐるっと回るように廊下が続いている。池の周りは形が整った木々や、知らない生き物をかたどった像が置かれていて、聖殿の建物の中にこれほどの自然があることに驚かされる。というよりも整えられた自然を、建物や壁が囲っていると言ったほうが正しいんじゃないかな。


 こうした自然に囲まれた廊下を進んでいくうちに1つの建物に着いた。さっきまで見てきた建物の中では、決して大きくないけれども様々な装飾が施されている柱や扉に目が引かれる。それを見ただけで、父さん以上の大工職人が手がけたものだと分かった。

 中に通される。扉が開けられた途端、ここでもお香の匂いがした。そして目の前には見たこともない光景が広がっていた。まず目を奪われたのは、天井の窓から降り注ぐ光を浴びて独特の雰囲気を浮かべる像。水の護り手の様な形をしているけども、それでも放つ雰囲気は全くの別物だ。その像を中心に、装飾品の数々が整然と備えられていて、儀式をする場所なんだと言われなくても分かった。ここは僕らが過ごす普段の場所と比べて、あまりにも現実離れしていて、全くの世界が違うと思う。


 そんな中、マズルさんが立ち尽くしている僕の肩を叩いて現実に戻してくれた。

 「圧倒されたかい?まあ無理もないだろう。ここは限られた人しか入らないし、ましてや君の歳程の子が来る場所じゃないんだ。」

 マズルさんはそう言って、この場所が特別なところであると教えてくれた。…そんな気はしてたけどね。

 マズルさんと僕は案内の人が勧めるままに座具に座る。そして案内の人は奥の方に行ってしまった。

 僕は目に写るあれやこれらについて、マズルさんに聞きたいことが沢山あったけれど、この場所の雰囲気とマズルさんがただひたすら前を見ているのを見て、声をかけることができなかった。

 

 しばらくして案内の人が奥から戻ってきた。手には煙が上がる道具を持っている。あれもお香の煙の様だ。その後ろに2人が続いている。

 「カイム、お母さんから渡された包みを持って立ちなさい。」

 マズルさんに言われて僕は、お礼の品を手に持ちその場に立った。

 僕らの目の前に3人がやって来た。案内の人はお香の煙が上がる道具を設えてある台におき、僕のところまで来た。その間、後ろに続いていた2人は祈りの言葉のを唱え始めた。…これも古い他国の言葉なのかな。僕には違いが分からないけど聞き取れる中には、結ばれた関係によって、可能性に試される誰かさんを見守ってください、と言っているみたい。

 誰かさんって誰かなと思っていたら、案内の人が僕に前に出るよう促す。包みを持って前に進み、僕は祈りを捧げていた2人に向き合う。1人は女の人、もう1人は男の人だった。

 案内の人が僕の包みを渡すように言って、そのまま預ける。僕は元の位置に戻るように言われる。女の人は包みを預かり、中の布と薬草をお香の煙に潜らせて、隣の男の人に手渡す。男の人は受け取ったものを、この部屋の中央に佇む像の前に持って行き、丁寧な動きで設えられた台に供える。


 「では、これより申出にあった者の結縁見定めを執り行います。先達は私ソクエルトが務めます。2人ともご苦労様でした。」女の人がそう言うと、案内の人、男の人が奥に行ってしまった。

 「先ずはお久しぶりですね、マズル。そして、初めまして、カイムでしたね。」

 ソクエルトと名乗った女の人が、親しみを感じさせる声で挨拶をする。僕とは孫くらいの歳の差がある女の人だ。

 「お久しぶりです、ソクエルト総教師…この度の件、総教師ご自身が先達をされると言うことを伺いまして、大変驚いた次第です。…この子はカイム、メディの息子です。カイム、ご挨拶を。」

 マズルさんとソクエルトさんは知り合いみたい。言われるまま、僕も挨拶をする。

 「初めまして、カイムです。よろしくお願いします。」

 ソクエルトさんは挨拶をする僕を見つめ微笑みかけてくる。そのままぼくのそばに漂っているバーリムに目を向けた。

 聖殿の賢者で、家族以外で僕の縁者バーリムとの関係を感じ取ることができる人。この様子では感じとれるだけじゃ無くて、バーリムのことも見えている様に思う。


 今までは、母さん達にバーリムとの関係は深めてはいけないと言われていた。

 今日、この人の見立てで僕とバーリムの関係は変わっていくんだ。

 ほんの数日だったけれども、僕はこの機会をずっと待っていた。

 ソクエルトさんの眼差しに、僕は弾む心と、抑えられない想いを顔に浮かべて返した。

ご拝読ありがとうございます。

前回から少し空きましたね。

1つの話を3パート分割して形を整えるのに苦労しておりました。

という事で続けて3パートでお届けです。

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