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1章-10:都の朝食と集落会議の懸念

 聖殿で見立てをしてもらうのは昼以降になったので、時間ができた。

 「宿場に戻って長たちと1日の行動を打ち合わせする必要があるな。」

 マズルさんがそう言い、僕も賛成した。聖殿からの帰りは、行きよりも多い人が通りを歩いていた。その中には、肌の色、瞳の色、髪の色が違う人がいた。

 僕とマズルさんは、比較的、ここで多くみられる人たちと同じで、肌は小麦色、瞳は茶色、髪は黒や赤みがかった茶色だ。

 でもここには肌が白っぽいのや黒に近い色、瞳は青っぽいのと灰がかった色、髪はどの色と特定するよりも様々な色で一杯だった。


 「色んな人がいますね。」

 宿場に戻る中で、僕は周りの人を見ながら思ったことを、マズルさんに話す。

 「ああ、他の都や、この大陸ではないところから来た人がいるからね。」

 「…この都以外に都があったり、僕らの住む大陸とは違う大陸があるとは聞いていました。けれど見た目が違うのは知りませんでした。あの女の人なんて、すごい綺麗な瞳の色をしてます。」

 「そうだね。あの女性は違う大陸から来た人だね。僕らの大陸の人よりも身体が大きい人が多いね。」

 戻る中での話は、目の前のこのとばかりだった。そんな僕をマズルさんは、母さんから聞いた通り、年相応の好奇心のかたまりだと言いつつ、いろいろ答えてくれた。


 宿場に戻ると他の4人は戻ってきていなかった。僕ら2人が聖殿にいた時間は結構長かったと思うけども、宿場の主人の話でも、長たちは見ていないらしい。早く朝食を摂りたいけども、お金を管理している長がいないとどうしようもない。

 しばらくして4人が戻ってきた。ちょっと困った顔をしていたけど、長たちも待っているはずの僕らと合流して、早く朝食を摂りたかったみたい。そのまま6人で食事処になだれ込んだ。…昨晩、食べに出たというのは要らない疑いだったようだ。何となく心の中で謝っておいた。

 

 「待たせて悪かったね。まさかこちらの方が時間を割く事になるとは思わなくてね。」

 僕らの長が、座具に腰を下ろしてそう言った。あちらの長が続ける。

 「とりあえず、腹に何か入れましょう。そうしないと落ち着いて話もできないでしょ。お給仕さん、今日の朝食を人数分をとりあえずお願い。足りなさそうなら適当に買いものしながら、落ち着いたところに移りましょう。」

 食事処で出された朝食は結構な量があった。6人ともひとまず、そこに関心が1番あってそれぞれが安心した。目は食事に釘付けだけれども…。

 「お客さんたち、ちょっと波を外して店に来てくれたから、朝食遅くならざるをえなかったんでしょ。品を足しておいたよ。」

 お給仕さんが入ってきた僕らの様子を見て、気を利かせてくれたらしい。決めてはあっちの長が言った、買いものして移動しようというのが決め手になったみたい。

 「我々としては商売上手で敵わないけれど、嬉しいね。せっかくの気遣いです、頂きましょう。」

 あっちの管理人さんが、お給仕さんの気遣いに喜んで言う。

 「では、頂きます。」


 朝食は芋粥、青野菜のおひたし、海魚の煮付け、海藻と豆腐の味噌汁、漬け物と量があった。僕はまず味噌汁から手をつける。

 味噌というのは、ここ最近、都に出て帰ってくる人が土産に持つ食品だ。最初は都の偉い人たちが食べるだけだったけれど、集落から材料となる豆の収穫量が増えて、都の人たちも食べる様になったらしい。色んな料理に濃厚な味を付けられるのと、保存が効くことで喜ばれる。

 それをいくつかの海藻を茹でたものに溶いてあるみたいだ。海藻から柔らかい香りと旨味の出汁が味噌の濃厚さと合わさって、普段は口にできない味が広がる。もうこれだけで芋粥が進むよ。

 芋粥は芋のほのかな香り、しっかりとした甘みと、柔らかすぎない歯ざわりが粥の口当たりに変化をつける。噛めばさらに汁気と甘味が口のなかを満たす。

 海魚の煮付けは、僕らの集落では食べられないものだ。これだけでも都に来た甲斐はあった。身をほぐしていくと腹の子が付いていた。これにも煮付け出汁がしっかり入っていている。まずは、ほぐした身を口に運ぶ。海の魚は初めてたけれども、川魚に比べて脂が乗っていて、甘辛い煮付け出汁と絡んで甘味と汁気がとても濃い。腹の子は煮付けになったことで濃厚さと、プチプチの食感が歯に心地いい。これは堪らない。

 香の物は、瓜の様なものがシャキシャキした食感を残して、独特の香りと酸味が舌を刺激する。


 「ごちそうさま。」

 あっという間に平らげた。空腹だったのもあるけれども、とても美味しくかった。

 僕らが食べ終わると、食事処のお客は僕らだけだった。気を利かせてくれたお給仕さんにお礼を言って、みんなで物静かのところに移動した。そこは大きな泉がある開けたところだった。

 泉に近づくと、バーリムが少し反応する。よく見ると泉には大きな葉っぱを浮かべて、そこから茎が生え、先には膨らみを持つ植物があった。これに反応してるんだろうか?そう思って植物を見ていたら、長たちが話を始めた。

 「さっきの集落会議前の届け出、どう思った?」

 あちらの長が切り出した。僕らの長と舟で話していた柵の新調と収穫の人手についてだろう。

 「今、新しく開拓している集落が、あの辺りで最優先だっていうからな。」

 僕らの長がそう返す。

 「何を柱として集落を運営するのか、まだ分かっていないですからね。あの辺りでは農作畜産、林業、薬園などをしっかり定着させています。あの地域で手掛ける分野はそう無いはずなのですがね。」

 あちらの管理人さんが、集落がある一帯の地域について、新しく始める分野について考え始める。

 「我々が戻ったときには、生活に必要なものが整う様ですから、移住も始まりますよね。」

 こっちの管理人さんが、僕たちの様に、いくつかの家族が新しい集落へ移ることを言う。

 僕らの集落での収穫と、あちらの集落の防護柵の新調、そして新しい集落への移住が重なることが、長たちの心配事の様だった。

 そして集落の長が集まる前に、役所に事前に集落の問題を届け出する段階で、人手は新しい集落の方に集中させると言うことらしい。

 4人が困った表情で戻ってきたのは、これが原因だったみたい。

 今から2つの集落で、さらに話し合いをすることになった。

ご拝読いただきましてありがとうございます。

また食事の描写です。

実は作品を執筆していると、口元が寂しいことが多々ありまして。

それを晴らすための妄想が、作品にぶつけられているんですね。

そして集落と都の社会構造にまつわるエピソードも織り交ぜました。

現実的なものとスピリチュアルなものを交互に展開予定です。

またどうぞお付き合いください。


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