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1章-8:都入りと聖殿の朝

 もう夕暮れも深まっていた。朝に集落を出てそれから昼に食事をとる以外は、ずっと舟の上だった。ずっと座っているのはやっぱりキツい。お尻にずっと物が押し付けられている様な痛みが続く。

 それでもずっと耐えられたのは、大人の人たちが気を遣って、自分の座具を貸してくれたり、興味が沸く話をしてくれたからだ。

 今はみんな話疲れてしまって、口数も少ない。景色も随分前から背の高い林に遮られている。

 月が上がって来た。もうそろそろ、火をつけないとお互いの顔も見えなくなるなと思った時、川の流れが真っ直ぐになり、視界を覆っていた林の壁が切れた。

 たくさんの小屋や家屋が連なっていて、更に奥の方には一際高さのある建物が並んでいる。夜闇の中でも月明かりに浮かんで、見たこともない景色が目の前に広がっていた。

 ここが僕らの集落が属する都、へーラナ。ここに都が構えられて、結構経つらしいけれども、古いなどという感じはしない。僕はひたすら、規模の大きさに驚いていた。


 僕が周りにめを配っているうちに、舟場につけられた。

 「今夜はこのすぐそばの宿場で泊まる。朝は身支度を整え、各自の予定を進める。マズル、カイムは朝1番に聖殿に行って、来訪の目的と面会を申し伝えなさい。その後、朝食を取りながら全員の1日の予定を確認する。朝は早いので、早く休む様に。」

 僕たちの長がそう言って宿場に連れていってくれる。寝所に入ると、もう数人がいて寝床に入っていた。僕らも1日で慣れない舟旅で思っていたよりも消耗していたみたいで、寝支度をすませ、寝床に入るとすぐに眠りについた。


 翌朝、目が覚めるのはいつもの時間。水汲みをと思ったけれども、ここは僕の家じゃない、いつもの様に水汲みはする必要がない。…普段より早く寝たけども、まだ眠い。舟旅のせいだろうか?

 身支度をしようとしたら、目を覚ましたマズルさんが声をかけて来た。

 「おはようカイム。今日、我々がする身支度は集落のものと少し違う。着替えを持ってついて来なさい。」

 そう言ってマズルさんは僕を連れて、宿場の外に出た。

 外に出ると、昨晩と違って多くの人が行き来していた。

 「人が多いのではぐれない様に気をつけるんだ。」

 「はい。」

 こんな土地勘のない場所で、僕よりも大きい人たちに囲まれたら、あっという間にマズルさんを見失ってしまう。僕は不安になりつつも、しっかりついて行く。


 しばらくして一つの建物に連れてこられた。多くの人が出入りしている。中には僕と同じ年頃の子供が、桶だるを持って出て来る。

 「マズルさん、あの子供たちは水汲みをしてるんですか?」

 「そうだ。ここでも朝の水汲みは子供たちの仕事だ。そしてここは、集落の言うところの水汲み場に、沐浴場という身体を清める設備もかねている。聖殿に上がる際に、ここで身を清める必要がある。」

 マズルさんと僕は中に入った。中は集落の水汲み場よりも規模が大きいものがあった。

 水汲み場にいる子供の人数だけでも、僕の集落全員を集めても足りない位の人だかりが出来ていた。ここでも水捧げがされているみたいで、祈りの言葉が聞こえる。


 マズルさんと僕は水汲み場を迂回するように進む。大きい小屋が目の前にあって、中からかすかにモヤが立ち込めていて独特の匂いがした。

 マズルさんが中に入るのについて行くと、裸の男の人たちの姿が目に入った。

 「ここで服を脱いで、この籠に入れておきなさい。」

 マズルさんは僕に着ている服を入れる籠を渡して、自身の服を脱ぎ始めた。マズルさんのやることを見ながら僕も裸になる。

 「この先は温泉と言われる湯が沸く場所だ。聖殿に行く前は必ず身を清めるんだ。」

 中に進みながらでマズルさんが、身体の清め方を教えてくれる。中に進むと部屋中に湯気がこもっていて、小屋の前で感じた匂いも強い。湯が掛け流しになっている。

 「こんなに沢山のお湯が掛け流しになってるなんて、贅沢ですね。…わぁ、お湯がにゅるにゅるしてます。」

 「はは、感触が違うかもしれないが気にする必要はない。しっかり体に馴染ませて、拭い布で垢を落としなさい。贅沢と思うのは集落では火を焚いて湯を沸かすからだね。ここは湯そのものが湧き出していて、水汲み場の水と足して適温にしているのだよ。」

 そんな話を聞いて、身を清め終わったら身支度を整え聖殿に向かう事になった。


 聖殿は昨夜、舟から見えた都の中で高さも大きさもある建物の1つだった。入口には大きな像が2つ立っていて、独特な雰囲気があった。その入り口でマズルさんと一緒に、門番の人に挨拶をして中に入って行く。

 「うわぁ…」

 思わず、声が出た。自分には想像もできない光景が広がっていた。

 中にはいくつも集落があるみたいに大きな建物があった。そして建物のまでどれでも石畳みが敷き詰められていて、建物それぞれから様々な声が聞こえる。

 圧倒されている僕を連れながら、マズルさんは聖殿内を進んでいく。そこには水汲み場があった。

 「いつもの様に手と口を清め、水捧げをするんだ。」

 「集落でするのと同じでいいんですか?」

 「桶は備え付けのをそのまま使えば良い。急ごう。」

 マズルさんは水の護り手に石像のところに向かう。僕は桶だるをいつもの様に水を張って捧げようとした。するとバーリムがいつもと違う雰囲気をみせた。


 「大地と活きづく命、これに潤いもたらす恵みと守護する御使に、今、懺悔と感謝のこころを捧げる。清浄な流れ無くば、我ら一様にして渇き、穢れを除くこと叶わず。恩恵を受けるよろこびを以て、自らを保ち、また御身に報いらん」


 この時、僕はマズルさんの祈りと寸分違わない、言葉を口にした。

ご拝読いただきましてありがとうございます。

都入りと聖殿の朝をお届け致しました。

ここまでで、2000文字の1パートになるとは思っていませんでした。

書く内容を決めていても、会話も入れないといけませんし、表現で文字数が嵩むのはどうしようもないですね。

そんな中さらっと、今まで存在感がなかった、前世の人バーリムが登場。

聖殿での祈りで何やら今までにない、反応を起こします。

この後の展開、スピリチュアル、宗教要素が濃くなる予定です。

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