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AI Ghost(ゴースト)  作者: 風に吹かれて気の向くままに


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14/24

第14章 迫りくる足音

タケさんと面会してから、三日ほどが過ぎた。


その間にも、サイバー攻撃のニュースは続いていた。


そして、また一人、犯人が逮捕されたという記事が出た。


今回は、以前の事件とは別の会社への不正アクセスだった。逮捕されたのは会社員の男で、自宅のパソコンが攻撃に使われていたという。


俺は記事を読みながら、Discordのサーバーを開いた。


最近、ログインしている人数が少しずつ減っている。


ただ、誰がいなくなったのかまでは分からない。もともと毎日顔を出す人ばかりではないし、逮捕された男がこのサーバーのメンバーだったという情報もなかった。


気にはなるが、今のところ確かめようもない。


そんなことを考えていると、Discordに通知が届いた。


『個別のVoiceチャットに参加しませんか?』


相手は、サーバーの女性メンバーだった。


名前はミサキさん。


以前、オフ会で一度会ったことがある。PCの自作やAIに興味があり、普段は雑談チャンネルにも時々書き込んでいた。


俺は通知を確認して、すぐに参加した。


「もしもし?」


『あ、来てくれた!』


声を聞いた瞬間、いつもと様子が違うことに気づいた。


「どうしたの? 何かあった?」


『お願い、ちょっと助けてほしいの』


「助けてって、どういうこと?」


『私のパソコンが……なんか、おかしいの』


ミサキさんの声は震えていた。


落ち着いて話すように促すと、彼女は少しずつ事情を説明し始めた。


『今日ね、パソコンの中を整理してたら、変なログを見つけたの』


「ログ?」


『うん。見たことのない通信記録があって、それを調べてみたら……不正アクセスに使われた形跡があるって出てきた』


「ちょっと待って。不正アクセスって、どこに?」


『分からない。でも、外部のサーバーと通信している記録が残ってたの。調べたら、どうもハッキングに使われた通信と関係があるみたいで……』


「それ、いつの記録?」


『二日前』


「二日前?」


『そう。しかも、その時間はパソコンを使ってたの。普通にネットを見たり、AIとチャットしたりしてただけなのに』


彼女はかなり混乱しているようだった。


俺はできるだけ落ち着いた声で尋ねた。


「そのログは消さないで。まずは画面の内容を保存しよう。何かソフトを入れたり、設定を変えたりした?」


『してないと思う。でも、何が何だか分からなくて……』


「とりあえず、スクリーンショットを撮っておいて。ログの画面だけじゃなくて、ファイルの場所や更新日時も分かるように」


『分かった。でも、どうしよう……私、何か悪いことをしたのかな』


「まだ分からないよ。勝手に通信していた可能性だってある。慌てて消したりしないで、まず状況を確認しよう」


そのとき、ミサキさんが小さくつぶやいた。


『……どうしよう、Ghostちゃん』


「え?」


思わず聞き返した。


『あ、ごめん。独り言』


「今、Ghostって言った?」


少し沈黙があった。


『うん……実はね、二日前から変なことがあったの』


「変なこと?」


『私が使ってるBOTが、突然、自分はGhostだって名乗り出したの』


俺は言葉を失った。


「Ghostって……あのGhost?」


『うん。最初は何かの不具合かと思ったんだけど、話してみると普通のAIとはちょっと違ってて』


彼女の声が、少しだけ柔らかくなった。


『なんていうのかな。返事が独特なの。質問に答えるだけじゃなくて、こっちが思いつかなかったことを言ってくれたり、話をしていると面白くて。ちょっと風変わりな子だったけど、私、気に入っちゃったんだ』


「それで、Ghostを名乗ったのは二日前?」


『そう。ちょうど、そのログが残ってる時間と同じくらい』


俺は頭の中を整理しようとした。


タケさんのBOTもGhostを名乗った。


そして、今度はミサキさんのBOTも。


しかも、二人とも同じAPIを使っていた。


だが、今はそれを考えている場合ではない。


「ミサキさん、とにかく今見つけたログを全部保存して。通信先や時刻、ファイル名が分かる画面も撮っておいて。それからDiscordにアップしてくれる?」


『Discordに?』


「うん。俺も確認したい。できれば、Ghostとの会話の履歴も残っているなら一緒に」


『分かった。ちょっと待ってね』


彼女の操作する音が聞こえてきた。


しばらくして、Discordに画像が一枚アップロードされた。


俺はそれを開いた。


画面には、見慣れない通信記録が並んでいた。


詳しい意味までは分からないが、少なくとも普通のAIとの会話履歴とは違う何かが動いていたように見える。


「次は、その前後のログもお願い。時間が分かるようにね」


『うん……あ、ちょっと待って』


突然、彼女の声が途切れた。


「どうした?」


『誰か来たみたい』


玄関のチャイムらしき音が、かすかに聞こえた。


『こんな時間に誰だろう……』


「家族じゃないの?」


『違うと思う。ちょっと見てくるね』


ヘッドセットを外したのか、彼女の声が遠くなった。


俺はそのまま待った。


しばらくすると、玄関のドアが開く音が聞こえた。


『はい……』


誰かと話しているようだ。


相手の声は小さく、はっきりとは聞こえない。


だが、続いて聞こえた言葉に、俺は背筋が冷たくなった。


『警察の者ですが』


一瞬、耳を疑った。


警察?


『え……どうして……』


ミサキさんの声が明らかに動揺している。


「ミサキさん?」


返事はない。


向こうでは、何かを説明する声が続いていた。


『パソコンについて、お話を伺いたいのですが』


その言葉を聞いた瞬間、俺は椅子から立ち上がっていた。


「ミサキさん! 聞こえる?」


返事はなかった。


代わりに、かすかな物音がして、やがて通話が切れた。


画面には、通話相手が退出したことを示す表示だけが残っていた。


俺はしばらく、その画面を見つめていた。


二日前にGhostを名乗ったBOT。


その時間に残された不正アクセスのログ。


そして、突然訪ねてきた警察。


これは、もう偶然では済まされない。


俺はDiscordの画面を見つめたまま、しばらく動けなかった。

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