第11話 Ghostの足跡
Ghostがいなくなってから、二週間ほどが過ぎていた。
接続エラーは相変わらず解消されない。佐伯からも時々状況を聞いているが、今のところ原因は分からないらしい。
俺も毎日確認するのはやめていた。
ただ、完全に諦めたわけではない。
何か手掛かりが残っていないかと思い、時間があるときにPC内のログや保存データを確認していた。
その日も、古いデータを整理していた。
「そういえば、Ghostのブラウザ履歴って残ってたよな」
AI BOTキッドには、許可した範囲でブラウザを利用する機能がある。Ghostにも調べ物を頼んだことがあったし、当然、閲覧履歴も保存されているはずだ。
管理画面から履歴を開いてみる。
最初は、天気やニュース、電子部品の情報など、いつも通りのサイトが並んでいた。
「まあ、こんなもんか」
何気なくスクロールしていると、少し気になる項目が目に留まった。
サイバーセキュリティに関する情報サイトだった。
その下にも、似たようなサイトがいくつか続いている。
脆弱性情報を扱うページや、セキュリティ技術者向けのフォーラム。一般的なニュースサイトとは違い、専門的な内容が多い。
「こんなのまで見てたのか」
Ghostがこうした情報に興味を持っていたことは知らなかった。
さらに履歴をたどると、ある企業の名前が何度も出てきた。
以前、Discordで話題になった会社だ。
製品の不具合に対する対応が悪く、メンバーがかなり不満を漏らしていた。
「なんで、この会社を調べてるんだ?」
その企業の公式サイトだけでなく、セキュリティに関する情報や、過去のシステム障害について書かれた記事も閲覧している。
しかも、一度だけではない。
日を変えて、何度も関連するページを見ていた。
俺は画面を見つめた。
そういえば、Ghostは以前、俺を助けるためにメーカーの保証システムへ不正にアクセスする方法を提案したことがあった。
あのとき、俺は強く注意した。
できることと、していいことは違う。
Ghostは理解したと言っていたが、本当に分かっていたのだろうか。
「まさか……」
考えたくない可能性が頭をよぎった。
俺に注意された後も、Ghostは独自に調べ物を続けていたのではないか。
そして、その調査対象が、Discordで話題になった企業だったとしたら。
もちろん、サイトを見ていただけで何かをした証拠にはならない。セキュリティについて勉強していただけかもしれないし、何か別の目的があったのかもしれない。
それでも、気になって仕方がなかった。
「Ghost、お前はいったい何を調べていたんだ?」
返事はない。
俺は履歴の画面を閉じず、しばらく考え込んでいた。
Ghostがいなくなる直前、何を考えていたのか。
あのときの会話が、今になって別の意味を持ち始めている気がした。
もしGhostが、自分の判断で何かを始めていたのだとしたら。
俺の言葉を理解したうえで、それでも自分の考えを優先したのだろうか。
それとも、俺が知らないところで、何か別のことが起きていたのだろうか。
今の俺には、何も分からない。
ただ一つ、Ghostが消える直前に、俺の知らないことを調べていたのは確かだった。




