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ファーストコンタクト~私の宇宙人彼氏はお金を出さないけど、光を降らせる~  作者: 夏目奈緒


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11-10

 インターホンの音が鳴り終わるより早く、私は玄関へ向かった。心臓が少し速い。まさか本当に来るとは思わなかったのだ。人生でそんな来客を迎える日が来るとは思わなかった。私は深呼吸を一つした。そして、ドアを開ける。


「はい――」


 言葉が途中で止まった。そこには男性が二人立っていた。一人はすぐに分かった。22歳前後だろうか。大学生らしい若者だった。身長は175センチほど。黒髪で、柔らかそうな雰囲気をしている。紺色のコートを着ていて、肩からショルダーバッグを提げていた。どこにでもいそうな普通の大学生だ。むしろ普通すぎる。近所の学生に見える。


 しかし、もう一人は違った。第一印象は、派手だった。身長は180センチを超えている。明るい銀髪。整った顔立ち。年齢は三十代前半に見える。黒いロングコートを着ているが、その生地には光沢があり、角度によって色が変わって見えた。しかも、胸元には、見たこともないデザインのバッジがついている。営業成績優秀者の表彰バッジですと言われても納得しそうだった。その男性は満面の笑みを浮かべた。


「初めまして。ベガ商業連合所属、第三巡回商船『アルシオーネ』営業部のアレク・ヴァレンティス・ノヴァールと申します!」


 名乗りからして営業だった。私は思わず固まる。すると、隣の大学生が慌てて頭を下げた。


「あ、すみません!保木湊(ほきみなと)と申します」


 礼儀正しい感じだ。私は少し安心する。そして、どこかで見たことがあると思った。どこでだっただろうか。すると、保木君が私を見て、遠慮がちに話しかけてきた。


「月島さんの妹さんですよね?」

「え、ええ!」

「僕、オカルト研究部の部員なんです。この間も月島さんにお会いしました」

「そうだったの」


 それで納得できた。兄から、サークルの集まりの写真を見せてもらったのは、つい最近のことだ。たしか、保木君が写っていたと思う。そこで、私は改めて、自己紹介した。


「永山紫乙です。よろしくお願いします」

「こちらこそ。アレクは僕の守護者なんですよ」

「そうなの」


 すると、アレクが言った。


「クリスマスイブの配信は、録画アーカイブで拝見しました。素敵でしたよ」

「ありがとうございます」


 私は反射的に返事をした。そこで、ある疑問が浮かんだ。翌日に送ってきた光のことだ。怖いという感情が浮かんだのに、ここにいる人たちは怖くない。あれは、どう考えても宣伝とは思えなかった。なにせ、すぐに配信を切ったぐらいだった。ルークが切れと言ったのだ。それなのに、アレクからは危険が感じられない。すると、後ろからルークが現れた。アレクの目が輝く。


「ルークさん!」

「初めまして」

「お招きありがとうございます!」


 アレクは爽やかに笑う。本当に営業向きの人だなと思った。すると、保木君が申し訳なさそうに頭を下げる。


「突然すみません」

「いいのよ」


 私は首を振った。


「まあ、びっくりしたけど」

「ですよね……」


 保木君が苦笑する。どうやら常識人らしい。私はますます安心した。そこで、二人の事を家の中に招き入れた。アレクは爽やかに一礼して、靴を脱ぎ始めた。まるで新規契約を取りに来た営業マンのようだった。いや、実際に営業マンなのだろう。二人を部屋へ案内する。リビングへ通すと、アレクが感動したような顔になった。


「おお……」

「どうしました?」

「地球の一般家庭です!」


 私は思わず笑ってしまう。


「珍しいんですか?」

「仕事で来ることはありますが、こうして招待されることは少ないんです」


 なるほど。それは確かにそうかもしれない。私は用意しておいたお茶をテーブルへ運んだ。


「どうぞ」

「ありがとうございます!」


 アレクは嬉しそうだった。保木君も礼を言う。4人が席に着く。なんとも不思議な光景だった。私、ルーク、大学生、宇宙の営業担当者。普通なら、絶対に同じテーブルには座らない組み合わせである。すると、アレクが湯呑みを持ちながら言った。


「実はですね」


 始まった。私は直感する。営業トークが始まったのだ。


「紫乙さんにぜひ紹介したい商品がありまして。ああ、その前に。クリスマスの日に光が飛んできたでしょう。あれ、僕たちの船の営業活動の一環なんです。警備サービスと言いましてね。こうして、地球に転生された方に向けて、他の星の宇宙船からコンタクトを受けるに際して、どこの所属の船なのか調べて情報をお届けするサービスなんです。怖かったでしょう?迫力があったと思います。ああやって目を光らせるので、遊び半分でちょっかいをかけてくる宇宙船をシャットアウトできるので、好評をいただいているんですよ」

「はい。とても怖ったです。ルークがすぐに配信を切れとまで言いましたから」

「そんなにでしたか!宣伝でしたけどね。その時の担当者に叱っておきます。驚かせすぎだと」

「いえ、そこまでじゃありませんから」


 すると、保木君が横で申し訳なさそうな顔をしていた。


「僕が配信のことをアレクに話したから、こうなったんです」

「そうなんですか?」

「はい。宇宙連合軍の地上勤務をされている方だとすぐに分かりましてね。本来は守護者に一報を送ったのちに、宣伝するのがこれまでのルールだったんですが、先月から宇宙連合軍の規定が変更されましてね。宣伝は自由になったんです」


 アレクが笑う。私はルークを見た。ルークは首をかしげている。変更があっただろうかと言っている。でも、本当のことなのだろう。こうして訪ねてくる許可を出しているのだから。

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