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ファーストコンタクト~私の宇宙人彼氏はお金を出さないけど、光を降らせる~  作者: 夏目奈緒


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8-9

 その時だった。恵介君が、突然驚いた声を上げた。全員の視線が、一斉にそちらへ向く。


「どうした!?」


 小牧君が反射的に叫ぶ。恵介君は、帽子のつばを押さえたまま、遊歩道の奥を見つめていた。


「今……」

「なに見えたの?」


 ねえさんが少し真面目な声で聞く。恵介君は、一瞬だけ言葉を探すみたいに黙った。


「丸い光です」


 静かな声だった。


「白くて……、ふわっと浮いてました」


 空気が変わる。コメント欄が、一気に流れ始めた。


『え!?』

『どこ!?』

『オーブ?』

『映った!?』


 私は反射的に遊歩道の奥を見る。暗い。でも、確かに、空気が少し揺れているような感じがあった。


「どの辺?」


 玲司さんが落ち着いた声で聞く。


「あの木の近くです」


 恵介君が指差したのは、遊歩道の途中に立っている大きな木だった。街灯の光が半分だけ当たっていて、残りは暗闇へ沈んでいる。


「動いてた?」

「はい。浮いてました。こんな感じで……」


 恵介君が、小さく手を動かす。ふわり。ふわり。漂うみたいな動きだった。


「怖……」


 小牧君が思わず後退る。その時だった。


『今、白いの映った』

『左上!』

『え、待って、鳥肌』


 コメント欄が急にざわついた。


「え?」


 ねえさんが慌てて配信画面を確認する。


「ちょっと待って、ほんとに何か映ってる」

「うそ!?」


 私はスマホを覗き込む。そこには、暗い遊歩道が映っていた。でも、一瞬だけ、確かに、小さな白い丸がふわりと横切っている。


「うわ……」


 小牧君が本気で引いていた。


「やばくない!?」

「虫じゃない?」

「この時期に!?」


 ねえさんが即座に否定する。たしかに、冬だ。虫が飛ぶ季節ではない。コメント欄も完全に騒然としていた。


『オーブじゃん』

『いや、反射では』

『でも、動き変じゃなかった?』

『小さいおじさんの仲間?』


「仲間って何よ……」


 私は思わず呟く。すると、ルークが、身体の奥で静かに笑った。


(違うよ)

(違うの?)

(あれはもっと単純)

(単純?)


 私は眉を寄せる。その時だった。


「……また!」


 恵介君が、今度ははっきり声を上げた。全員が振り返る。そして。いた。遊歩道の途中。木の横。白い丸い光。ピンポン玉くらいの大きさだった。ふわり、と浮いている。


「えっ……」


 ねえさんが息を呑む。小牧君なんて完全に固まっていた。


「なにあれ……」


 光は、静かだった。強く発光しているわけじゃない。でも、暗闇の中では妙にはっきり見える。白くて。

少し青っぽくて。まるで、小さな月みたいだった。


『見えた!!!』

『うわああ』

『ガチだ』

『配信に映ってる』


 コメント欄が爆速で流れる。その時、光が、ふわっ、と揺れた。そして、こっちへ近づいてきた。


「ひっ」


 私は思わず声を漏らす。小牧君なんて、玲司さんの後ろへ完全に隠れていた。


「社長!!」

「落ち着け」


 玲司さんが静かに言う。でも、その目は鋭く前を見ていた。恵介君は、逆に目を輝かせていた。


「綺麗……」


 ぽつり、と呟く。その声が妙に静かで、私は少し驚いた。怖がるというより、見入っている。光は、ゆっくりこちらへ近づいてきた。音はしない。ただ浮かんでいる。すると、ルークが、小さく笑った。


(ああ、気に入られた)

(誰が!?)

(恵介君)


「え?」


 思わず声が漏れた。その瞬間、白い光が、ふわりと、恵介君の近くまで移動した。


「うわっ」


 恵介君は驚いたけれど、逃げなかった。光は、彼の帽子の周りをゆっくり回る。まるで観察しているみたいだった。


『懐かれてる!?』

『かわいい』

『ペットみたい』


「いやいやいや!」


 小牧君が半泣きで言う。


「かわいい判定なの!?これ!?」


 でも、怖いというより、不思議だった。嫌な感じがしない。むしろ、静かで、綺麗だった。その時、恵介君が、小さく笑った。


「……なんか、温かいです」

「え?」


 私は驚く。


「近くに来ると、少しだけ」


 恵介君は、光を見つめながら言った。すると、ルークが、静かに呟く。


(歓迎されてるんだよ)

(何に?)

(この場所にいるもの達に)


 私は思わず黙る。その時だった。白い光が、ふわりと、上へ浮かび上がる。そして、木々の間へ溶けるみたいに消えていった。沈黙。数秒後。


「……消えた」


 ねえさんが、小さく呟く。コメント欄は、まだ騒ぎ続けていた。


『録画した!!』

『神回』

『今日すごすぎ』


 小牧君が、ようやく玲司さんの後ろから出てくる。


「もう帰ろう!?」

「早いのよ!」


 ねえさんが吹き出した。その時だった。遊歩道のさらに奥。暗闇の中で。また、小さな光が、ひとつ、ふわりと揺れた。


「……増えてない?」


 私は思わず呟く。すると、ルークが楽しそうに笑った。何も怖いことはないと言って。

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