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ファーストコンタクト~私の宇宙人彼氏はお金を出さないけど、光を降らせる~  作者: 夏目奈緒


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7-5

 私はスマホを取り出した。ねえさんに連絡が必要だからだ。


「じゃあ、ねえさんに連絡するわ」


 人数が増えること自体は、配信界隈では珍しくない。“誰かの友達が来た”くらいは日常だ。しかも、ねえさんは、そういうノリを嫌がるタイプではない。むしろ、「賑やかな方がいいじゃん」と笑う人だ。だから問題ないだろうと思った、その時だった。スマホが震える。


「あ」


 画面を見る。ちょうど、ねえさんからだった。


「噂をすればね」


 私は通話ボタンを押した。


「もしもし?」

『紫乙ちゃん!?』


 ねえさんの声が、妙に大きい。


「どうしたんですか?」

『ちょっと待って、聞いて!』


 背景が騒がしい。たぶん外にいる。


『山、通行止めになった』

「……え?」


 私は思わず聞き返した。


『落石』


 キッチンが静まり返る。


『さっき配信者仲間から連絡きたんだけど、山道で落石あったみたいで。トンネルまでの道、今入れないって』

「うわ……」


 私は思わず顔をしかめた。タイミングが悪すぎる。


「怪我人は?」

『今のところ聞いてない。でも、警察来てるっぽい』


 私は思わずルークを見る。ルークは、コーヒーカップを持ったまま静かに笑っていた。


「……あなた、これ分かってた?」

「少しだけ」


 やっぱりである。


「怖」

「なんですか?」


 恵介君が不安そうに聞く。


「ルークが昨日、“雨っぽい”とか言ってたのよ」

「それだけじゃないよ」


 ルークが平然と言った。


「山の空気、少し嫌だった」


 私はもう突っ込むのをやめた。今さらである。


『え、なに?そっち今、誰がいるの?』


 ねえさんの声が聞こえる。


「五十里社長の家にいるんです。恵介君もいるの。明日、二人も一緒にトンネルに行きたいって話をしてて」

『えっ!?』


 電話越しに、明らかに空気が変わった。


『社長さんの家?五十里恵介君?』

「はい」

『やば。あのイケメン社長ね!テレビに出ていたのを見たのよねー。恵介君も可愛いし。来るのね!もちろん、オッケーよ!』


 その反応に、私は思わず笑いそうになる。すると、ねえさんがすぐ気持ちを切り替えた。


『で、どうする?別の場所にする?』

「……横浜の公園のトンネルなら行けるかも」


 私が言うと、恵介君が顔を上げた。


「あ」

「さっき話していた場所か?」


 社長が聞く。


「そうです」


 私は頷いた。


「公園の中にある通路っぽいトンネル。最近噂になってるらしいです」

『あー、あそこ!?』


 ねえさんが反応する。


『配信でちょいちょい名前出てるやつ!』

「行けそうですか?」

『全然あり!むしろそっちの方が近い!』


 話が早い。私は思わず苦笑した。


「じゃあ、変更しますか?」

『するする!』


 即答だった。


『小牧君にも連絡しとく!昨日会ったとき、明日も一緒に行きたいって言っていたの』

「あの人、来る気満々でしたね」

『“電気復活したから無敵”とか言ってたし』

「意味が分からないですよね」


 リビングが小さく笑いに包まれる。ねえさんは、そのまま勢いよく続けた。


『じゃあ明日、ホテルの下で待っているわ』

「了解です。迎えに行きます」

『あと、社長さんも来るの、ちょっと面白いね』

「私も今、そう思っています」


 電話越しに笑い声が響く。通話を切ると、キッチンへ静けさが戻った。


「横浜の方へ変更になったわ」


 私が言うと、恵介君がどこか安心したような顔をした。


「公園なら、少し安心ですね」

「山よりはね」


 私は頷く。すると、社長が静かに立ち上がった。


「なら、車を出そう」

「え?」


 私が目を丸くすると、社長は落ち着いた顔で続ける。


「人数が増えるなら、その方がいいだろう」


 恵介君が、本当に驚いた顔をした。


「玲司さん、運転するの?」

「たまにはな」


 その返事に、私は思わず笑ってしまう。なんだか、不思議だった。心霊スポット配信の予定だったはずなのに。気づけば、“保護者付き夜のドライブ”みたいな空気になっている。でも、それを嫌だとは、誰も思っていなかった。

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